のちに地主の妻の部屋だったとわかったその部屋のベッドに寝かされていた義勇はもちろんなんの外傷もなく、害される事もなく、ただ静かに眠らされていただけで、切りつけられた銀竜寮の寮長村田の怪我も軽傷。
それ以外の被害は出ていない。
が…翌日童磨の家から迎えが来て、侵入者達もしかるべき場所に引き渡されて調べた結果…学校側の理事との関係性までは掴めなかったものの、前回の時に無一郎が言っていたように、今回の一件は善逸を亡き者にしたいと考えた善逸の父親の正妻側の一族の依頼を受けた者の企みで、メインターゲットを隠すために一緒に殺しても良いと指示があった対象の中に一般の家の人間と言う事で義勇が入っていたとのことである。
(…ああ…あんたは守りたかったんだな……)
と、そこでストンと全てがつながった。
おそらく…自分と男、もしくは義勇と妻、どちらかに何か通じるモノをみたのだろう。
今回義勇の身に危険が迫っているとわかって、この城の持ち主であった地主の幽霊が義勇を守ろうとしてくれたらしい。
(ただひたすらに…自分の妻を愛し守りたかった男…か……)
帰る前、錆兎は童磨に頼み、古城の裏手にある地主とその妻の墓に花を供えに訪れる。
血なまぐさい事件を起こしたせいか、資産家にしてはあまりに小さな墓。
と、そこでストンと全てがつながった。
おそらく…自分と男、もしくは義勇と妻、どちらかに何か通じるモノをみたのだろう。
今回義勇の身に危険が迫っているとわかって、この城の持ち主であった地主の幽霊が義勇を守ろうとしてくれたらしい。
(ただひたすらに…自分の妻を愛し守りたかった男…か……)
帰る前、錆兎は童磨に頼み、古城の裏手にある地主とその妻の墓に花を供えに訪れる。
血なまぐさい事件を起こしたせいか、資産家にしてはあまりに小さな墓。
しかしどれほど小さくささやかな墓でも、その隣には愛する妻の墓が並んであるため、男は幸せだったに違いない…そう思う。
錆兎はその双方に城内に飾ってあった花で作った急ごしらえの花束を供え、
(…成仏してカミサンに会えたのか?会えたなら今度こそ幸せにな)
と、手を合わせて、その場をあとにした。
こうしてとりあえず前回から続く危険は去ったはずだが、学校の理事の権力争いと言う意味ではまだまだ安全とは言い難そうである。
とにかく一般の家の出身という事で軽い扱いで危険に巻き込まれそうな義勇を卒業まで…いや、一生守りきらなくてはならない
そのため、錆兎の戦いはまだまだ続くのであった。
錆兎はその双方に城内に飾ってあった花で作った急ごしらえの花束を供え、
(…成仏してカミサンに会えたのか?会えたなら今度こそ幸せにな)
と、手を合わせて、その場をあとにした。
こうしてとりあえず前回から続く危険は去ったはずだが、学校の理事の権力争いと言う意味ではまだまだ安全とは言い難そうである。
とにかく一般の家の出身という事で軽い扱いで危険に巻き込まれそうな義勇を卒業まで…いや、一生守りきらなくてはならない
そのため、錆兎の戦いはまだまだ続くのであった。
少し時を遡る……
義勇が目を開けると…そこになんだか途方にくれたような表情の端正な顔があった。
「…義勇…俺の事、わかるか?」
との問いに、錆兎…と頷けば、泣きそうな顔で笑みを浮かべる。
「害は与えないってのはなんとなくわかってたんだけど…怖い思い、させてごめんな?」
との言葉に、義勇はゆっくり首を振った。
あれは…確かにこの世のものではない、いわゆる幽霊と呼ばれるものだということはわかったのだが、何故だろう…危害を加えられる気はしてこなかったのだ。
義勇に怖い思いをさせないように…そんな気遣いは錆兎のそれと一緒で…義勇が“彼”の姿を認識するとほぼ同時くらいに、彼は困った顔で少し微笑んで、そして義勇は花の香りに包まれて意識を失った。
――起きていても不安にさせてしまうだろうから……
義勇が目を開けると…そこになんだか途方にくれたような表情の端正な顔があった。
「…義勇…俺の事、わかるか?」
との問いに、錆兎…と頷けば、泣きそうな顔で笑みを浮かべる。
「害は与えないってのはなんとなくわかってたんだけど…怖い思い、させてごめんな?」
との言葉に、義勇はゆっくり首を振った。
あれは…確かにこの世のものではない、いわゆる幽霊と呼ばれるものだということはわかったのだが、何故だろう…危害を加えられる気はしてこなかったのだ。
義勇に怖い思いをさせないように…そんな気遣いは錆兎のそれと一緒で…義勇が“彼”の姿を認識するとほぼ同時くらいに、彼は困った顔で少し微笑んで、そして義勇は花の香りに包まれて意識を失った。
――起きていても不安にさせてしまうだろうから……
と薄れゆく意識の中で聞こえた声の優しさは、どこか錆兎が困った時のそれを思い起こさせて、なんだか笑ってしまうくらいだった。
おそらくぎりぎりで笑みを浮かべていたのだろう。
ホッとしたような声で
――おやすみ、愛しい人――
おそらくぎりぎりで笑みを浮かべていたのだろう。
ホッとしたような声で
――おやすみ、愛しい人――
という言葉が落とされたのが、意識を失う前に最後に義勇の耳にした音である。
「…すごく…優しい幽霊だった気がする…」
そう素直な感想を述べると、錆兎は一瞬目を丸くして、それから義勇をぎゅっと抱きしめた。
そして額に降ってくる口づけ。
「…すごく…優しい幽霊だった気がする…」
そう素直な感想を述べると、錆兎は一瞬目を丸くして、それから義勇をぎゅっと抱きしめた。
そして額に降ってくる口づけ。
「奥さんをとても愛してた男の幽霊らしい。
きっかけが半ば義務の政略結婚でも、その奥さんが子を産めなくなっても…男は本当に奥さんを愛してて…その最愛の相手を守れなかった事を後悔し続けてたから、俺がお前を守りたいって気持ちに同調して、どうやら守ろうとしてくれたみたいだ」
そうして、
――守るからな?
と、合わされる視線。
と、合わされる視線。
錆兎の綺麗な藤色の目が義勇の目を覗き込んでくる。
「…学校も寮も関係ない。
俺が大学に進んで義勇は高校生になって名目上は姫君じゃなくなったって、社会人になったって、ずっと…俺が守るべき姫君はお前だけだし、俺はお前を守る一振りの剣だからな」
それは自分に対する愛情を信じる事が出来ない義勇ですら、否定をできないくらい、あまりに真摯に響いた。
その視線を受け止めきれずに目を伏せると、今度は瞼に口づけが降って来て、顔が離れて行く。
そして小さく笑う気配。
――今はまだ…ここまでな。
と言う呟きが聞こえた気がしたのは、気のせいだろうか…
それでも…ドキドキと高鳴る心臓の音を聞きながら、義勇は錆兎に抱きあげられて、見知らぬ古城の部屋をあとにしたのだった。
「…学校も寮も関係ない。
俺が大学に進んで義勇は高校生になって名目上は姫君じゃなくなったって、社会人になったって、ずっと…俺が守るべき姫君はお前だけだし、俺はお前を守る一振りの剣だからな」
それは自分に対する愛情を信じる事が出来ない義勇ですら、否定をできないくらい、あまりに真摯に響いた。
その視線を受け止めきれずに目を伏せると、今度は瞼に口づけが降って来て、顔が離れて行く。
そして小さく笑う気配。
――今はまだ…ここまでな。
と言う呟きが聞こえた気がしたのは、気のせいだろうか…
それでも…ドキドキと高鳴る心臓の音を聞きながら、義勇は錆兎に抱きあげられて、見知らぬ古城の部屋をあとにしたのだった。
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