今日は男子学生らしく、リビングで一晩中無礼講でワイ談大会するよ~!!」
それはまさに鶴の一声だった。
この洋館の持ち主で最上級学年である高校3年生の金虎寮の寮長童磨の一声で、全員が食後にリビングへと集められた。
まあ家主の言う事なので全員集まりはしたのだが、反応は様々である。
まず2年生組。
「あ~、もしかして童磨先輩、昨日のはこれやりたいがための複線です?」
とニコリと余裕を見せる金竜寮寮長&
「ふふっ。セ・ク・ハ・ラ。黙ってる代わりに何してくれます?」
と、こちらも余裕の金竜寮姫君。
「うちの無一郎には絡まないでやって下さいねっ。俺はつきあいますけど…」
と、真面目に自寮の姫君を守ろうとする銀竜寮寮長村田に
「…ったく、先輩達、聞くだけは聞いてあげるけど…少しだけだよ?」
と、呆れ顔の姫君無一郎。
1年生組は…
「まあ…怪談よりは断然良いです」
と、ホッとする金狼寮姫君の善逸に、
「いや…姫君達の前で猥談はまずいだろォ…。」
と、何故か自寮ではなく銀狼寮の姫君の方をチラ見しながら言う不死川。
銀狼寮組は
「とりあえず…何をすればいいんだ?」
「まあ…怪談よりは断然良いです」
と、ホッとする金狼寮姫君の善逸に、
「いや…姫君達の前で猥談はまずいだろォ…。」
と、何故か自寮ではなく銀狼寮の姫君の方をチラ見しながら言う不死川。
銀狼寮組は
「とりあえず…何をすればいいんだ?」
と隣に座る自寮の寮長である錆兎を見あげる姫君、義勇の耳を
「ん~なるべく耳にいれない、聞いてないという姿勢を取り続けるのが姫君としての正しい図だな」
とさりげなく塞ぎながら、主催の3年生2人にニッコリと
「うちの姫さんに妙な知識いれないように頼む…と、今頼んだからな?」
と、低いドスの利いた声で言った。
「いやいや、お前がそれ言う?」
とそれについつい突っ込みをいれる銀竜寮の村田だったが
「なるほど。昨日こっちに来たのは村田だったんだな」
と、そこでにこやかに返されて、真っ青になる。
「村田?」
と不思議そうな視線を向ける3年生組。
それにブルンブルンと思い切り首を横に振る村田。
そんな後輩に首をかしげながらも童磨は
「とりあえず~男でも勃つか、勃つならどのあたりならやれそうかを寮長諸君行ってみようか~」
と、にこやかに始めた。
「ま、言いだしっぺで俺からね~。
小等部組だからね~、ま、男でもイケると思うけど、姫君レベルじゃないと、さすがにムサイ男は無理かなぁ。
うちの姫君は~まあイケる。
梅、可愛いでしょ。
でも銀虎は無理だね。あそこの姫君は素直に下になっててくれなさそうだし。
それに最中でも声がうるさそう」
「あ~、声がでかいのは否定はしないが、主に食ってる時だけな。
いつもじゃない。まあ金虎はテクはありそうだよな」
「中学生にそれを求めないように…っていいたいとこだけど、梅は俺にもそう見える。
銀虎は見た目もねぇ…俺はガチムキ系はNGだから。
銀側の姫君でも銀寮1,2年生組ならお相手願いたい気がしないでもないね」
…と、口にした瞬間、銀竜寮の村田は両手で無一郎を抱え込み、銀狼寮の錆兎は片腕で自寮の姫君を抱え込んだ上でテーブルの上のフォークを童磨目がけて投げつける。
それは恐ろしい事にプスっと避けた童磨が座っていたソファの背もたれに突き刺さった。
「…え?フォークってそんなに簡単にソファに突き刺さるモノかっ?」
と、他人ごととはいえ青くなる不死川の言葉にさらに青くなる一同。
「じょ、冗談だってっ!
将軍の銀狼に全面戦争かける愚行はさすがに俺だっておかさないよ」
と、もちろん張本人が一番慌てて言うと、錆兎は
「次は手が滑って避けた先にちゃんと届くように時間差で2本行くかもしれないんで」
と冷ややかな笑みを浮かべて、童磨に冷や汗を思い切りかかせた。
そしてシン…と静まり返る室内。
その沈黙を破ったのは、とりあえず他人ごとならオッケーを貫く宇髄だ。
「んじゃ、錆兎自身はどんな感じだよ?
あ、先に言っておくと、俺は男はイケルかもだけど、うちの姫君はちょっとばかり無理な感じ?」
飄々とそう言う宇髄に、そりゃそうだと苦笑する一同。
「ん~なるべく耳にいれない、聞いてないという姿勢を取り続けるのが姫君としての正しい図だな」
とさりげなく塞ぎながら、主催の3年生2人にニッコリと
「うちの姫さんに妙な知識いれないように頼む…と、今頼んだからな?」
と、低いドスの利いた声で言った。
「いやいや、お前がそれ言う?」
とそれについつい突っ込みをいれる銀竜寮の村田だったが
「なるほど。昨日こっちに来たのは村田だったんだな」
と、そこでにこやかに返されて、真っ青になる。
「村田?」
と不思議そうな視線を向ける3年生組。
それにブルンブルンと思い切り首を横に振る村田。
そんな後輩に首をかしげながらも童磨は
「とりあえず~男でも勃つか、勃つならどのあたりならやれそうかを寮長諸君行ってみようか~」
と、にこやかに始めた。
「ま、言いだしっぺで俺からね~。
小等部組だからね~、ま、男でもイケると思うけど、姫君レベルじゃないと、さすがにムサイ男は無理かなぁ。
うちの姫君は~まあイケる。
梅、可愛いでしょ。
でも銀虎は無理だね。あそこの姫君は素直に下になっててくれなさそうだし。
それに最中でも声がうるさそう」
「あ~、声がでかいのは否定はしないが、主に食ってる時だけな。
いつもじゃない。まあ金虎はテクはありそうだよな」
「中学生にそれを求めないように…っていいたいとこだけど、梅は俺にもそう見える。
銀虎は見た目もねぇ…俺はガチムキ系はNGだから。
銀側の姫君でも銀寮1,2年生組ならお相手願いたい気がしないでもないね」
…と、口にした瞬間、銀竜寮の村田は両手で無一郎を抱え込み、銀狼寮の錆兎は片腕で自寮の姫君を抱え込んだ上でテーブルの上のフォークを童磨目がけて投げつける。
それは恐ろしい事にプスっと避けた童磨が座っていたソファの背もたれに突き刺さった。
「…え?フォークってそんなに簡単にソファに突き刺さるモノかっ?」
と、他人ごととはいえ青くなる不死川の言葉にさらに青くなる一同。
「じょ、冗談だってっ!
将軍の銀狼に全面戦争かける愚行はさすがに俺だっておかさないよ」
と、もちろん張本人が一番慌てて言うと、錆兎は
「次は手が滑って避けた先にちゃんと届くように時間差で2本行くかもしれないんで」
と冷ややかな笑みを浮かべて、童磨に冷や汗を思い切りかかせた。
そしてシン…と静まり返る室内。
その沈黙を破ったのは、とりあえず他人ごとならオッケーを貫く宇髄だ。
「んじゃ、錆兎自身はどんな感じだよ?
あ、先に言っておくと、俺は男はイケルかもだけど、うちの姫君はちょっとばかり無理な感じ?」
飄々とそう言う宇髄に、そりゃそうだと苦笑する一同。
「俺も将軍の好みは知りたいねぇ。
義務とかそういうのは置いておいて…性癖的なあたりを。
好みって性格的には内気なタイプだよね?
みため小柄で…」
と、そこで童磨がさらに錆兎に話題を振る。
「そう…だな、確かに。
俺は元々家が要人に仕える武士から端を発してる家系だし、惹かれるのは守ってやりたいタイプかもな」
と、それには普通に答える錆兎。
「お宅のお姫ちゃんみたいな?」
「ああ、ま、そういうこと」
と、そこは平和的なやりとり。
「性的にもイケる?」
というやや突っ込んだ質問も
「イケるといえばイケると思うが、姫君は寮生全員の宝で御旗だからな」
と、かわす。
義務とかそういうのは置いておいて…性癖的なあたりを。
好みって性格的には内気なタイプだよね?
みため小柄で…」
と、そこで童磨がさらに錆兎に話題を振る。
「そう…だな、確かに。
俺は元々家が要人に仕える武士から端を発してる家系だし、惹かれるのは守ってやりたいタイプかもな」
と、それには普通に答える錆兎。
「お宅のお姫ちゃんみたいな?」
「ああ、ま、そういうこと」
と、そこは平和的なやりとり。
「性的にもイケる?」
というやや突っ込んだ質問も
「イケるといえばイケると思うが、姫君は寮生全員の宝で御旗だからな」
と、かわす。
それに対してじ~っと視線を向けてくる村田。
その視線を興味深げに追う面々。
「あ~…村田の気にしてる事なら…」
錆兎ははぁ~っとため息。
念のためと義勇の耳を塞いだ状態のまま、
「昨日だな、部屋帰ってから姫さんが怖がるし、おばけってエロい事嫌いっていうからワイ談をと思って…したら、姫さんには色々刺激強すぎたらしくて。
で、抜くだけ抜いてやっただけ。手は出してない」
と説明をすると、宇髄が
「へ?そうなのか?!錆兎すげえな。意志が鉄すぎんだろっ!」
と、心底驚いたように目を丸くした。
それに対しても錆兎は淡々と
「寮長と言えど寮生の1人だからな。
その視線を興味深げに追う面々。
「あ~…村田の気にしてる事なら…」
錆兎ははぁ~っとため息。
念のためと義勇の耳を塞いだ状態のまま、
「昨日だな、部屋帰ってから姫さんが怖がるし、おばけってエロい事嫌いっていうからワイ談をと思って…したら、姫さんには色々刺激強すぎたらしくて。
で、抜くだけ抜いてやっただけ。手は出してない」
と説明をすると、宇髄が
「へ?そうなのか?!錆兎すげえな。意志が鉄すぎんだろっ!」
と、心底驚いたように目を丸くした。
それに対しても錆兎は淡々と
「寮長と言えど寮生の1人だからな。
姫君のために道を切り開く剣であり、姫君を守る盾であるのが正しい。
ということで、この話題は終わり。
うちの姫さんに気恥かしい思いさせて泣かせる奴がいたら、この城の新入りの幽霊になりたいとみなすことにするから」
と、最後にこれ以上この話はするなと釘を刺す。
「はいはい、ほら青少年。いつまでもそういう顔してると将軍に身体と魂分離させられるから、いい加減そっち凝視するの止めようね?」
と、それに応じて童磨が真っ赤な顔のまま銀狼寮組の方を凝視したまま硬直している不死川の顔を両手でつかんで、グキっと音をさせつつも皆の方に向けさせた。
ということで、この話題は終わり。
うちの姫さんに気恥かしい思いさせて泣かせる奴がいたら、この城の新入りの幽霊になりたいとみなすことにするから」
と、最後にこれ以上この話はするなと釘を刺す。
「はいはい、ほら青少年。いつまでもそういう顔してると将軍に身体と魂分離させられるから、いい加減そっち凝視するの止めようね?」
と、それに応じて童磨が真っ赤な顔のまま銀狼寮組の方を凝視したまま硬直している不死川の顔を両手でつかんで、グキっと音をさせつつも皆の方に向けさせた。
「…錆兎…どうしたんだ?」
と、耳を塞ぐように抱きしめていた錆兎の腕をソッと外して、そんな金狼組に不思議そうな視線を向ける義勇に、錆兎は答えに詰まるが、他も迂闊な事を言って藪から蛇を突きだしたくないとそれぞれ視線をそらせる。
「…錆兎?」
コテンと小首をかしげつつ今度は錆兎を見あげてくる大きな丸いブルーアイ。
「えっと……」
さきほどの強気から一転、タラリと額から汗を流す錆兎だったが、助け船は意外な方向から飛んできた。
「あ~、あのね、昨夜の事。
先輩達に脅かされて結構皆怖い思いして過ごしたじゃない?
で、錆兎さんがね、銀狼寮組はお化けはエッチなモノ苦手だって聞いたからワイ談してたって言うから…。
普段真面目な錆兎さんがどんなふうにワイ談とかするのか、俺はちょっと興味あるな。
すごく意外な感じ」
と、自分にとって怖いことがなければ卒のない善逸がにっこりと笑みを浮かべながらそうフォローをいれるのに一同ほ~っと安堵の息をつく。
「もう勘弁してくれ。よその姫さんに言われると殴るわけにはいかないし…」
と、片手で顔を覆って言う錆兎に、ぷすっと吹きだす一同。
「それはそうだな。1年生のお姫ちゃん達は殴れねえわ、みんな。
ちっちゃすぎて乱暴に扱ったら本気で死んじまいそう」
と、宇髄がさらに言うのに、皆苦笑しつつ頷いた。
こうしてしばらくは和やかに歓談。
姫君はまずいと、好みのタイプ談義はそれぞれ同級生の中なら…と言う方向になって行く。
「あ~…俺は基本的には異性愛者だしな
同級でイケそうなのはいないな」
と、上から順に降りてきて、最終的に1年の金、銀となった時に錆兎は困ったように頭を掻いた。
(…そう…なのか…。まあそうだよな……)
と、その言葉に義勇は内心少し気落ちする。
何故がっかりするのか…と、そんな自分をバカバカしく思いもするのだが…
だって錆兎は同性の義勇から見てもカッコいい。
本当にカッコいい。
可愛らしい女性にだってモテるだろう。
たまたま錆兎の同期の銀狼寮のメンバーが自分を副寮長に選んだからこうやっていつもいつも優しくしてもらえるが、それは飽くまで寮長としての仕事だ。
と、耳を塞ぐように抱きしめていた錆兎の腕をソッと外して、そんな金狼組に不思議そうな視線を向ける義勇に、錆兎は答えに詰まるが、他も迂闊な事を言って藪から蛇を突きだしたくないとそれぞれ視線をそらせる。
「…錆兎?」
コテンと小首をかしげつつ今度は錆兎を見あげてくる大きな丸いブルーアイ。
「えっと……」
さきほどの強気から一転、タラリと額から汗を流す錆兎だったが、助け船は意外な方向から飛んできた。
「あ~、あのね、昨夜の事。
先輩達に脅かされて結構皆怖い思いして過ごしたじゃない?
で、錆兎さんがね、銀狼寮組はお化けはエッチなモノ苦手だって聞いたからワイ談してたって言うから…。
普段真面目な錆兎さんがどんなふうにワイ談とかするのか、俺はちょっと興味あるな。
すごく意外な感じ」
と、自分にとって怖いことがなければ卒のない善逸がにっこりと笑みを浮かべながらそうフォローをいれるのに一同ほ~っと安堵の息をつく。
「もう勘弁してくれ。よその姫さんに言われると殴るわけにはいかないし…」
と、片手で顔を覆って言う錆兎に、ぷすっと吹きだす一同。
「それはそうだな。1年生のお姫ちゃん達は殴れねえわ、みんな。
ちっちゃすぎて乱暴に扱ったら本気で死んじまいそう」
と、宇髄がさらに言うのに、皆苦笑しつつ頷いた。
こうしてしばらくは和やかに歓談。
姫君はまずいと、好みのタイプ談義はそれぞれ同級生の中なら…と言う方向になって行く。
「あ~…俺は基本的には異性愛者だしな
同級でイケそうなのはいないな」
と、上から順に降りてきて、最終的に1年の金、銀となった時に錆兎は困ったように頭を掻いた。
(…そう…なのか…。まあそうだよな……)
と、その言葉に義勇は内心少し気落ちする。
何故がっかりするのか…と、そんな自分をバカバカしく思いもするのだが…
だって錆兎は同性の義勇から見てもカッコいい。
本当にカッコいい。
可愛らしい女性にだってモテるだろう。
たまたま錆兎の同期の銀狼寮のメンバーが自分を副寮長に選んだからこうやっていつもいつも優しくしてもらえるが、それは飽くまで寮長としての仕事だ。
(…義務で優しくしてくれているのを愛情なんて勘違いしたりはしないけど……)
と思いながら、はぁ……とため息をついた瞬間だった。
――義務ではない…きっかけはなんであれ私はお前が愛おしい…
「え?」
いきなり聞こえた声に義勇は目をぱちくりさせてあたりを見回した。
「どうした?姫さん」
と、見下ろして来る錆兎。
本当に耳元で聞こえた声。
錆兎ではない…というか、それなりに年齢のいった男性の声だった気がするが……
こんなに密着している状態の錆兎に聞こえていないのはおかしい…。
(空耳…か…)
と、義勇は小さく首を横に振る。
あの声はもしかして願望だったのだろうか…
錆兎の優しさの意味がちゃんとわかっているようでいて、わかっていなかった自分の……
温かく力強い腕…
と思いながら、はぁ……とため息をついた瞬間だった。
――義務ではない…きっかけはなんであれ私はお前が愛おしい…
「え?」
いきなり聞こえた声に義勇は目をぱちくりさせてあたりを見回した。
「どうした?姫さん」
と、見下ろして来る錆兎。
本当に耳元で聞こえた声。
錆兎ではない…というか、それなりに年齢のいった男性の声だった気がするが……
こんなに密着している状態の錆兎に聞こえていないのはおかしい…。
(空耳…か…)
と、義勇は小さく首を横に振る。
あの声はもしかして願望だったのだろうか…
錆兎の優しさの意味がちゃんとわかっているようでいて、わかっていなかった自分の……
温かく力強い腕…
こんな風にそれに守られているのも錆兎が高校に…そして義勇が中学に在籍している3年間だけだ。
それを過ぎたら以前言っていたように身の振り方に困った時には面倒くらいは見てくれるかもしれないが、その頃には錆兎も社会人だろうし、この腕の中には綺麗な女性がいて、今義勇がされているように大切に大切にお守りされているのだろう。
だから慣れ過ぎてはいけない…と思う。
今は副寮長、姫君として遇されていたとしても、義勇は所詮錆兎の伴侶になれたりはしないのだから…。
今こうやってまるでお姫様のように大切に気遣われているせいだろうか…
それを過ぎたら以前言っていたように身の振り方に困った時には面倒くらいは見てくれるかもしれないが、その頃には錆兎も社会人だろうし、この腕の中には綺麗な女性がいて、今義勇がされているように大切に大切にお守りされているのだろう。
だから慣れ過ぎてはいけない…と思う。
今は副寮長、姫君として遇されていたとしても、義勇は所詮錆兎の伴侶になれたりはしないのだから…。
今こうやってまるでお姫様のように大切に気遣われているせいだろうか…
そうやっていつか錆兎の腕の中に本当の伴侶となるべき美しい女性が収まる日がくるのがひどく悲しい気分がするのは…
たぶん…他人にこんなに大切にされたのが初めてだったから、義勇自身も色々錯覚をしているのだろう。
(…子どもだって…産めないしな……)
と、そこでまたため息。
――子が成せなくても構わないのだ…お前さえ側にいるのなら…
「え??」
たぶん…他人にこんなに大切にされたのが初めてだったから、義勇自身も色々錯覚をしているのだろう。
(…子どもだって…産めないしな……)
と、そこでまたため息。
――子が成せなくても構わないのだ…お前さえ側にいるのなら…
「え??」
幻聴にしてはあまりに鮮明な声。
驚きの声をあげて義勇があたりを見回した瞬間……ふぅっといきなり室内の灯りが消えた。
そして…ふわりと身体が浮いた気がした…
その瞬間、確かに自分の身体を包み込むように回されていた筋肉質な腕の感触がなくなって義勇はパニックを起こす。
(錆兎っ!!錆兎っ!!どこっ?!!!)
と、発したはずの声は空気を震わす事もなく、どこかへと消えて行く。
さきほどまでそこにあったはずのモノが一切消えたような感覚…
まるで身体がジェットコースターで滑り落ちた時のような感じを覚えて眩暈がする。
真っ暗な視界……
ぼんやりとその暗闇が薄れると、目の前に浮かびあがったのは見たことのない部屋。
そして…まるでひと昔前のようなクラシカルな服装の見知らぬ男…
年の頃は40くらいだろうか……
顔立ちは端正だが、疲労の色の濃いやつれて蒼褪めた顔。
乱れた髪…
そして…妙にない生気と気配……
――家のためなどではない…子が成せなくても構わない…愛していたのだ……
ああ…さきほどから聞こえていたのはこの声だ…と義勇は気づいた。
伸ばされる手…
動かない自分の身体…出ない声
そして…唯一動く目だけを向けて気付いた…
薄暗い室内を照らす松明の灯りに照らされた絨毯の上…そこに確かにあるはずの男の影がないことに……
驚きの声をあげて義勇があたりを見回した瞬間……ふぅっといきなり室内の灯りが消えた。
そして…ふわりと身体が浮いた気がした…
その瞬間、確かに自分の身体を包み込むように回されていた筋肉質な腕の感触がなくなって義勇はパニックを起こす。
(錆兎っ!!錆兎っ!!どこっ?!!!)
と、発したはずの声は空気を震わす事もなく、どこかへと消えて行く。
さきほどまでそこにあったはずのモノが一切消えたような感覚…
まるで身体がジェットコースターで滑り落ちた時のような感じを覚えて眩暈がする。
真っ暗な視界……
ぼんやりとその暗闇が薄れると、目の前に浮かびあがったのは見たことのない部屋。
そして…まるでひと昔前のようなクラシカルな服装の見知らぬ男…
年の頃は40くらいだろうか……
顔立ちは端正だが、疲労の色の濃いやつれて蒼褪めた顔。
乱れた髪…
そして…妙にない生気と気配……
――家のためなどではない…子が成せなくても構わない…愛していたのだ……
ああ…さきほどから聞こえていたのはこの声だ…と義勇は気づいた。
伸ばされる手…
動かない自分の身体…出ない声
そして…唯一動く目だけを向けて気付いた…
薄暗い室内を照らす松明の灯りに照らされた絨毯の上…そこに確かにあるはずの男の影がないことに……
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