寮生は姫君がお好き35_お化けはエロいことが嫌いなのか?

こうしてまず1年生から順番にということで、最初に部屋につくと、錆兎は義勇をベッドに降ろして部屋の鍵をしっかりとかけた。

そうしておいて、用意された水桶の水に浸して絞ったタオルをまず義勇に渡した。
朝になれば使用人が風呂を用意してくれると言う事なので、とりあえず身体を拭くためである。

こうして義勇が身体を拭いている間に寝間着を出してやる。

ふんわりとした薄く長めの上着に下は短めのパジャマ。

錆兎自身は万が一の緊急事態に対応できるようにスウェットの上下を着て、ナイフその他を仕込んである上着はベッド横の椅子に置いておく。


まあ今回は学校からイベントとして認定はされているものの、用意したのは童磨で、会場も童磨個人の家の持ち物だからそこまでの危険はないとは思うが、念のためだ。

ベッドは広めのツイン。
だが何かあった時のためにと片方で一緒に寝る事にする。

いつものように義勇を抱え込むように2人で並んで横たわるが、古びてどこか薄気味の悪い部屋や窓を叩く風の音、そして3年生組に散々聞かされた幽霊の話のせいで眠れないらしい。

「…義勇、眠れないのか?」
と、腕の中でもぞもぞとしている義勇に声をかければ、半分涙でうるんだ大きな瞳が錆兎の視線を捉えた。

「…幽霊の話…本当なのかな?
…なんかすごく…嫌な感じがする…」
と震える肩をぽんぽんと叩いてなだめてやる。
それに堰を切ったように泣き始める姿はまだ子どもらしくいとけない。


(あーあ、先輩達も脅し過ぎだろう…)
と思うモノの、だからと言って幽霊なんて童磨の脅しだと言ったところで恐ろしいと思ってしまった気持ちは早々紛れないだろう。

(どうするかな…)
くしゃりと自分の前髪を掴んで考え込む錆兎。

「あーそういえば…」
と、やっぱり笑いの方向に持って行くのが一番だろうと思って口を開いた。


「幽霊ってエロい事が苦手だとか言うよな」
そう言って笑いかけると、ぽかんと見あげてくる大きな瞳。

それに
「ワイ談でもしてみるか?」
と冗談交じりに言った瞬間、伸びて来た白い手は錆兎の首に回されて、顔が引き寄せられたかと思うと、ふにゅりと柔らかいモノが唇に触れた。


(…え??)
と、さすがに驚く錆兎に、義勇は至極真剣な顔で言う。

「…こうしてれば…幽霊来ないかな?」
と、それに答える間もなく、再び押し付けられる柔らかい唇。
同性のそれとは思えないくらい小さくて柔らかくて、身体の熱があがった。


錆兎は高校1年生の男にしては非常に理性的な人間だ。
しかしそれでも若い男なわけである。

大切に大切にしている可愛い姫君がいきなり口づけて来たのだ。


そう、いきなり。
心の準備をする暇もなく。



思わずかすかに開いた唇の間から舌を差し込んで思う存分口内を貪る。

いつのまにか覆いかぶさるように…

可愛い…可愛い…可愛い…

脳内を占めるのはそんな感情だけ。

とん、とん、とん、と小さな手が胸元を叩くのに、その手首を掴んでベッドに押しつけて…その瞬間にハッとした。


「わ、悪いっ!!」
と慌てて掴んだ手首を開放して飛び起きると、錆兎の大事な姫君は、はふ…と、息を吐き出して、
「…大丈夫…ちょっと…息が苦しかったんだ」
と、少し焦点のあわなくなりかけた目で、それでも視線を合わせて来た。


エロ可愛い。
というか…全く警戒されていないのはどうなんだろうか…

護衛としては信頼されているということなのだろうが……


はぁ~…と錆兎は自分も落ちつこうと大きく息を吐きだした。

うん、まあいい。

とりあえず姫さん的には落ちついたんだろう、結果オーライ。グッジョブ俺…。
と、現実逃避のように思う。


しかしながらことはそれで終わらなかったらしい。

「さ~、じゃあ寝るかっ!」
と、気を取り直した錆兎はわざと明るくそう宣言をして、再度ベッドに横たわろうとして気づく。


「…あの……さびと……」

うん、気のせいだろう、気のせい、気のせい。

「なんか…身体…変……」

気のせいじゃなかったーーー!!!!


潤んだ目、上気した頬、そしてかすかに開いた小さな唇から洩れる息は少し荒い。

どういう状態かは想像がつくわけなのだが、何故か戸惑ったような表情で見られて、すごく嫌な予感がした。

2月生まれの中学1年生…つまり現在12歳。
性格が人見知りなので小学校時代はあまり親しい相手もいなかったと聞く。

親とは…あまりそういう話はしないだろう。
兄弟は姉が一人…うん、さらにそんな話をするというのはありえないな。

つまり…性教育をうけてないし、精通もまだな可能性があるのか??


もしかして、俺が教えるのか?真面目に?本気で??


錆兎は頭を抱えたくなった。

でもまだ確定ではない。
そう思って聞いてみる。


「姫さん…もしかして精通ってまだだったりするのか?」
「せい…つ??」


うあああーーーー


どうしよう…と思う。
いや…でもここで放置は辛いだろうし……

仕方がない…教えるか。


腹を決めて錆兎は説明することにした。
幸いきちんと教えられるだけの知識はある。


「えっとな、姫さん…第二次性徴期を迎えた女に生理があるように男にも…」
概念から説明しようとした錆兎だが、お姫さんは聞いちゃいない。

「…すごく変…おかしいんだ…」
と泣きそうに訴えてくる。

あー…もう物理的になんとかしてからにしろってか?


正直困った。
でも仕方ないので先に処理の仕方を教えようと、
「とりあえず処理の仕方教えるな?」
と声をかけて下肢に手をかけようとしたら、怯えられた。

え?え?俺は何もしてないだろう?
なんで怖がられるんだ?
と思いつつ、それでもなんとかするしかない。

仕方ない。


「キスからなら平気か?」
と言いつつ、さきほどのように口づけると、今度はおずおずと応えてくる。

そこから普通にまるで女性にするように順を追って愛撫…射精までうながしてやって、そして気づく。


――これ…処理の仕方じゃないんじゃないか??

しかし初めて出して疲れたのか、ぐっすり眠るお姫さんを見て諦めた。
まあいつか自分で出来るようになりゃあ良いだろ。


あまりのエロ可愛さに自分自身もその気になってしまった部分は眠っている姫君の横でこっそり1人で処理をして、もうだいぶ遅い…というか、日付が余裕で変わっていたが、錆兎も明日に備えて眠る事にした。



さあ、ここで問題です。

お化けはエロが苦手か…Yes / No ?
Yes!!…ではないが、困るのは確かだ。

空気を読んでしまったお化けは…ドアの向こうで困っていた。




「さすがに寮長達は動じなかったけど、1年の姫君達は結構びびってたよなっ!」

夕食を終えて全員を私室に送ったあと、双方姫君は寮に置いてきたため同じ部屋に泊まる事になった金銀虎寮の寮長、童磨と宇髄は自室に2年の寮長達も呼び出して4人で盛り上がっていた。

すっかり怯えきったお姫ちゃん達には申し訳ないが、イベントの醍醐味はこれからである。
幽霊を模した仮装をして各部屋を訪ね、脅かして撤退。

そのために色々仕掛けも考えた。

一日目はそうやってお化けの存在を印象付けて、二日目には2年のお姫様達も含めて攫われてもらって、寮長達にはせいぜい慌ててもらおう、そんな計画である。


ということで、3年の2人は2年の寮長達に金竜は金狼を、銀竜は銀狼を脅してくるよう申し付けた。

そう…2年が1年を脅す予定……だったのだ。



「んじゃ、頑張れよ~。ガチな蹴り合い殴り合いで勝ち残った1年寮長組にばれて殺されねえようになっ!」

ひらひらとハンカチを振りながら笑う宇髄に

「それマジで笑えませんっ!!」
ともうすでに冗談とは言えないその言葉に村田は青くなる。


直接的に手を出さなくても、大事な大事なお姫様を怖がらせた事は万死に値するとかで手打ちにされたらどうしよう…そんな事を考えながら、村田は1年の銀狼寮の2人の部屋へと向かう。


まずは不気味な音声を部屋の奥のスピーカーから流してそちらに確認しに向かったところでドアを開けて姿を現し、そして消える。

一日目だからそれだけだ。


下手に出歩かれたらバレる可能性があるため、絶対に部屋から出ないようにと3年生組が言っておいたが念のため、2人がちゃんと部屋に居るか、室内にしかけた盗聴器の音声をオンにしてみた。


…ん…んぅ…あ…あぁっ!!!


へ?
俺なんだか疲れてる?
と、村田はそこから流れてくる甘く高い声に首をかしげる。

そしてさらに耳をすませた。


…やっ…やぁっ…も…出ちゃ…さびとっ…出ちゃうっ!!!


俺の俺が困った事になってます………
そっと音声を切った村田だが、すでに手遅れ。

…ここで抜いたら…さすがにバレるか?

村田は前かがみになりながらソッとその場を離れてトイレに撤退してソッと抜く。


将軍の可愛いお姫さんの“アノ”時の可愛い声なんか聞いて、あまつさえオカズにしたなんて知れたらおそらく殺される…。

今回は撤退できたわけなのだが、もしまだヤっていたら……ていうか、お前らこんなとこで何やっているんだ?

ヤってる最中に本当に幽霊出たらどうすんだよ?

てか、ここに来てる2泊3日の間くらい我慢できないレベルでヤリまくってんの?
…と、先輩として主張したいよ?

と、ソッと心の中で抗議をするが、バレたら人生終わる気がするので触らぬ神に祟りなしだ。

銀狼寮は諦めて、金狼寮の後輩達にお化けの存在を宣伝してもらおう…
そんな挫折感に苛まれた気分で、村田はそっと自室に帰ったのである。


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