と、それを受けて窓枠に足をかけた錆兎は、ふと思い出して動きを止めた。
「錆兎?どうしたの?」
自身は仮眠を取ろうと思ったのかベッドに向かいかけていた無一郎がそれに気づき、サラリと髪を揺らして振り向く。
その声に自室に戻りかけていた村田も足を止めた。
「…いや…ちょっと一つだけお前の意見をきかせてくれ」
「うん。なに?」
「今回のターゲット…我妻だって言ってただろう?」
「かもしれない…ってだけだよ?状況的に。でも絶対とは言えないね」
「あいつは別にお前の一族と関係あるわけじゃないよな?」
「うん。もし本当にターゲットだったんだとしたら、さっき言った通り理事会の10人中7人は外部の色々なサイドの人達だからさ、そのどこかの相手にとって邪魔な人間だったか、もしくは交換条件か何かで暗殺依頼でも受けてたのかもね」
「…そうすると……義勇に近づかせない方がいいのか…」
巻き添えは怖い…そう思って言うが、無一郎は少し考え込んで、それから首を横に振った。
「確実にターゲットだったって確信がもててるわけじゃないし、意識しない方が良いと思う。
むしろ今回の真相に気づいてるって思われたら逆に証拠隠滅のために狙われる可能性もあるから、心の中で警戒はしても表に出しちゃダメだよ?」
「…あー…そうだよなぁ」
「うん。なに?」
「今回のターゲット…我妻だって言ってただろう?」
「かもしれない…ってだけだよ?状況的に。でも絶対とは言えないね」
「あいつは別にお前の一族と関係あるわけじゃないよな?」
「うん。もし本当にターゲットだったんだとしたら、さっき言った通り理事会の10人中7人は外部の色々なサイドの人達だからさ、そのどこかの相手にとって邪魔な人間だったか、もしくは交換条件か何かで暗殺依頼でも受けてたのかもね」
「…そうすると……義勇に近づかせない方がいいのか…」
巻き添えは怖い…そう思って言うが、無一郎は少し考え込んで、それから首を横に振った。
「確実にターゲットだったって確信がもててるわけじゃないし、意識しない方が良いと思う。
むしろ今回の真相に気づいてるって思われたら逆に証拠隠滅のために狙われる可能性もあるから、心の中で警戒はしても表に出しちゃダメだよ?」
「…あー…そうだよなぁ」
自分だけなら挑発して出て来たところを叩くのが一番手っ取り早い気がするが、義勇を守ることを考えるとそういうわけにもいかないだろう。
「…実弥に…一応我妻のことを警告…したらダメか?」
「…う~ん…僕の関係のことに一切触れないなら?」
「ふむ…」
「…実弥に…一応我妻のことを警告…したらダメか?」
「…う~ん…僕の関係のことに一切触れないなら?」
「ふむ…」
「あ、それならさ、とりあえず無一郎が錆兎に助けられた時のこと話せば?
後ろ盾がない姫君だとそうやって危険な目にあうこともあるからって感じで。
あとは…さっきのさ、錆兎が言ってた利き手の話?
で、最後に出てきたのはバトラーじゃなく案内人の男だったのかも…から、あれは本当に毒殺なんじゃないかとか。
絶対とは言えないけど用心はするに越したことはないとか、そんな感じで」
と、そこで村田が手をあげて言う。
「…そうだな。
じゃあ実弥にはそんな感じで警告して…宇髄にもそのあたりの推測を話しつつ共に警戒態勢を取っていくか…」
「うん、そうして。
煉獄さんは良いんだけど、宇髄さんはちょっと怖いから身バレはしたくないし」
と、最終的にそういうことに落ち着いて、錆兎は今度こそそろそろタイムリミットだ…と、慌てて自寮に戻っていった。
こうして自寮に戻ると、銀竜寮と違ってこちらはちゃんと玄関から廊下を通って自室へ。
後ろ盾がない姫君だとそうやって危険な目にあうこともあるからって感じで。
あとは…さっきのさ、錆兎が言ってた利き手の話?
で、最後に出てきたのはバトラーじゃなく案内人の男だったのかも…から、あれは本当に毒殺なんじゃないかとか。
絶対とは言えないけど用心はするに越したことはないとか、そんな感じで」
と、そこで村田が手をあげて言う。
「…そうだな。
じゃあ実弥にはそんな感じで警告して…宇髄にもそのあたりの推測を話しつつ共に警戒態勢を取っていくか…」
「うん、そうして。
煉獄さんは良いんだけど、宇髄さんはちょっと怖いから身バレはしたくないし」
と、最終的にそういうことに落ち着いて、錆兎は今度こそそろそろタイムリミットだ…と、慌てて自寮に戻っていった。
こうして自寮に戻ると、銀竜寮と違ってこちらはちゃんと玄関から廊下を通って自室へ。
――ただいま~
と、ドアを開け、そのままリビングに入ると、ソファには可愛らしい寝巻を着てキツネをぎゅっと抱きしめた義勇と少し困った顔の炭治郎が待っていた。
どう見ても寝ていないのが丸わかりな様子で、ふらふらと
「おかえり~。さびと」
と、駆け寄ってくる。
半分眠っているような雰囲気で、いつもよりなんというか緊張感がない…ふわふわと屈託がない笑顔。
それが幼げですごく可愛い。
「ただいま、義勇。
どうした?眠ってなかったのか?」
いったん抱きついてくる小さな身体を抱きしめ返して、それから錆兎はひょいっと錆兎の姫君を横抱きに抱きあげる。
どう見ても寝ていないのが丸わかりな様子で、ふらふらと
「おかえり~。さびと」
と、駆け寄ってくる。
半分眠っているような雰囲気で、いつもよりなんというか緊張感がない…ふわふわと屈託がない笑顔。
それが幼げですごく可愛い。
「ただいま、義勇。
どうした?眠ってなかったのか?」
いったん抱きついてくる小さな身体を抱きしめ返して、それから錆兎はひょいっと錆兎の姫君を横抱きに抱きあげる。
普段だとわたわた動揺するところだが、今は本当に寝ぼけ眼なのだろう。
義勇は抵抗もせず、まだ細い腕をぎゅうっと錆兎の首に回した。
ああ…もう可愛い、何度も言うが可愛い。
思わず緩む頬。
「すまない。どうしても錆兎を待つと言って寝てくれなかったんだ」
と、本当に申し訳なさそうに頭を下げる炭治郎の言葉に、錆兎は視線を義勇に向けた。
義勇は抵抗もせず、まだ細い腕をぎゅうっと錆兎の首に回した。
ああ…もう可愛い、何度も言うが可愛い。
思わず緩む頬。
「すまない。どうしても錆兎を待つと言って寝てくれなかったんだ」
と、本当に申し訳なさそうに頭を下げる炭治郎の言葉に、錆兎は視線を義勇に向けた。
すると義勇はこてん…と小首をかしげて錆兎を見あげ、いくぶん真剣な顔で主張する。
「…だって…錆兎は俺の寮長だから。
俺は副寮長だし、ちゃんと錆兎の帰りを待っておかえりを言わないとだろ…」
………
可愛すぎて不覚にも倒れそうになった。
俺の寮長…俺の寮長…俺の寮長……
その言葉がくるくると脳内でリピートされる。
「あの…錆兎。
錆兎が帰って来たなら俺は戻って良いだろうか?」
「あ、悪い。ごめんな、炭治郎。ありがとう。もう戻って良いぞ」
自分だけ眠るわけにも行かずに一緒に起きていたのであろう炭治郎の存在もすっかり忘れていた。
「…だって…錆兎は俺の寮長だから。
俺は副寮長だし、ちゃんと錆兎の帰りを待っておかえりを言わないとだろ…」
………
可愛すぎて不覚にも倒れそうになった。
俺の寮長…俺の寮長…俺の寮長……
その言葉がくるくると脳内でリピートされる。
「あの…錆兎。
錆兎が帰って来たなら俺は戻って良いだろうか?」
「あ、悪い。ごめんな、炭治郎。ありがとう。もう戻って良いぞ」
自分だけ眠るわけにも行かずに一緒に起きていたのであろう炭治郎の存在もすっかり忘れていた。
とりあえず礼を言って部屋に戻らせ、錆兎が
「んじゃ、俺達も寝るか」
と、腕の中に視線を落とすと、愛しい姫君は安心しきったようにすやすやとお休み中だ。
(…これは…本当に俺を殺しに来ているんじゃないだろうか…?)
前寮長の本田がよく言っていた。
人間、可愛すぎるものを見るときゅん死にするのだそうだ。
まさにそれ、まさにそれである。
熟睡中のお姫様を一旦ベッドに寝かせて寝間着に着がえ、自分もベッドにもぐりこみ、意識が落ちるまでの数分間…無一郎にはやめてあげてと言われたが、明日…いや、明日とは言わず今日からでも学園の中心で愛を叫び学園中に愛を知らしめなければ…と決意した。
そう、義勇は確かに恥ずかしがるかもしれないが、大方は錆兎自身に対して恥ずかしい奴と思うだけで義勇には同情の視線を送ってくれるだろう。
義勇本人に危険を悟らせて不安を抱かせる事無く、楽しく幸せな学生生活をすごさせてやる…心身ともに健やかな学園生活を…そのためなら自分が残念な男と思われるくらいどうと言う事はないではないか。
使命感に燃えやすい男、現代を生きる武士、渡辺錆兎。
それが守るべきと思う相手と出会ってしまった事で一部から“残念なイケメン”と呼ばれるようにもなるが、本人的には全くもって問題はなく、さらに学生生活が幸せになっていくのであった。
「んじゃ、俺達も寝るか」
と、腕の中に視線を落とすと、愛しい姫君は安心しきったようにすやすやとお休み中だ。
(…これは…本当に俺を殺しに来ているんじゃないだろうか…?)
前寮長の本田がよく言っていた。
人間、可愛すぎるものを見るときゅん死にするのだそうだ。
まさにそれ、まさにそれである。
熟睡中のお姫様を一旦ベッドに寝かせて寝間着に着がえ、自分もベッドにもぐりこみ、意識が落ちるまでの数分間…無一郎にはやめてあげてと言われたが、明日…いや、明日とは言わず今日からでも学園の中心で愛を叫び学園中に愛を知らしめなければ…と決意した。
そう、義勇は確かに恥ずかしがるかもしれないが、大方は錆兎自身に対して恥ずかしい奴と思うだけで義勇には同情の視線を送ってくれるだろう。
義勇本人に危険を悟らせて不安を抱かせる事無く、楽しく幸せな学生生活をすごさせてやる…心身ともに健やかな学園生活を…そのためなら自分が残念な男と思われるくらいどうと言う事はないではないか。
使命感に燃えやすい男、現代を生きる武士、渡辺錆兎。
それが守るべきと思う相手と出会ってしまった事で一部から“残念なイケメン”と呼ばれるようにもなるが、本人的には全くもって問題はなく、さらに学生生活が幸せになっていくのであった。
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