寮生は姫君がお好き25_反撃

何が起きているのだろうか…
全てが現実離れしていて、理解が追いつかない。

そんな中で
「義勇っ、俺から離れるなっ!!」
と、錆兎がいち早く義勇を背に庇い、他の寮長達もそれに倣う。

甲冑達がゆっくりではあるがそれぞれ手にした斧や剣を振り回してこちらへ近づいてくるのを見て、義勇はすくみあがった。

動きが早くないので避けられないわけではないのだが、逃げようにも唯一の入り口である扉の前には2体の甲冑が陣取っているので逃げるに逃げられない。


「武器があれば2体くらいならなんとか出来そうな気がするんだが…」
と視線を室内に走らせている錆兎。

「確かに。相手鉄だしな。蹴っても殴ってもダメージ受けてくれねえ気がするよな」
と、宇髄も眉を寄せて難しい表情だ。

「盾なら最悪殴られても死なないんじゃないか?」
と、そこでいきなり口を開く煉獄。

「殴られるだけ殴られてどうするんだよ?」
と、呆れたように聞き返す宇髄に答えず、煉獄はいきなり盾を持った甲冑にタックルをかますと倒れた甲冑の足を掴んでそれをブンブンと振り回しながらドアに待機している甲冑2体に向かって特攻した。


「「「ええええ?!!!!!」」」

ガッシャ~ン!!!と左右に吹き飛ばされる甲冑2体。

「早くっ!急ごう!!!」
「…すげえ…な、おたくのお姫さん」
寮長達が口を揃えて呆れかえった声をあげる。

「ナイス、煉獄!!!」
と宇髄が叫んだ


「とりあえずここ出るぞっ!!!」
と、その声にハッとしたように他に促すと自分も義勇を抱え込むように甲冑を避けてドアへ走りだす錆兎に、他の生徒達も続いた。

全員が広間を出たところで最後に出た宇髄がバタン!!とドアを閉め、煉獄のベールをねじって紐状にすると、それを両開きの扉のノブに結び付けてドアを開かないように固定した。


「…いったい…なんなんだい…?…」
はぁぁ~っと一息ついて漏れる呟き。

「わっかんね。これやらせ?まさかマジもんじゃねえよな?」
「…やらせだとしたら…わけは?」
「知るかよ……」

姫君達は固まって座りこみ、金銀の竜寮の寮長が護衛する中、他の寮長達はエントランスを調べている。


「…さっきの甲冑ここのだな」
「ああ、来る時は左右にいたもんな」
と甲冑の確認。

その後入口のドアを調べて寮長達はため息をついた。


「…だめだ…出れねえ。
ドアは鉄だしな。そもそも取っ手がないし押してもビクともしねえ」
「そりゃそうだよ。みたところこれ内開きっぽいし」
「2階の廊下とか控室には窓なかったか?」
「…鉄扉だった気がするね、窓」
「あ~、そりゃ駄目だ。無理だな」
「でも開けられないか試してみる価値はないかい?」
「……2階の廊下にも甲冑並んでた気がするんだが…」
「…あーー……それね」
「そっちも襲ってくるかはわからんがな…」
「襲ってきたら廊下は広間より狭いし避けるのキツイなぁ…」
「一か八か行ってみて試してみるか、このまま救助待ってみるか、2択か……」
「うーん……」

円陣を組んで厳しい顔で相談を始める寮長達。

こんな状況なわりには落ち着いた様子の面々に驚いている義勇に、無一郎は少し心細げに…しかし取り乱すことなく微笑んだ。


「たぶん…今回から危機管理というか、脱出系のイベントになったみたいだね。
僕はこの手の面倒くさいものってディスプレイ越しにでもすごく苦手なんだけど、元々寮長になる人達ってほら、それなりに良い家で英才教育されてる跡取り達だから、護身術とかも身に付けてるしね」

「あー…なるほど。そっか……」

そうだ、あまりに色々が急展開でこれが学校のイベントだと言う事が抜け落ちていた。

「うん、そう言う事だと思うよ。
ベストな選択をするかどうかをどこかで関係者が見てるんだと思う。
で、イベント終了になったらたぶん広間の中の死体役の人とかも普通に生きてて血糊も片付いてて、再度ごちそうが並んでたりするんだよ、きっと」

そう言いつつも、早く終わらないかなぁ…と大きくため息をつく無一郎。
その横では善逸が『悪趣味すぎるよっ!』と泣いている。

悪趣味…まあ確かに悪趣味だと言う事には義勇も同意だが、同時にこれが本当に起こっている事じゃなくて良かったとホッとした。


「ま、とりあえず全部見て回って取れる手段は試してみねえとイベント終わらないんじゃないかと思うし、俺ちょっと2階見て来るわ。
一応何かあった時の連絡係に村田も来い。
わかってっと思うけど、今は非常時。
お姫さんはどの寮の姫君でも自寮と一緒の扱いな?」

「はいはい、それはわかってるよ。
ここでつけこんだら多分どこぞで点数つけてる誰かさんにすごいマイナスつけられそうだしねぇ。
死ぬ気で守るから安心して行って来て」

一応言い出しっぺという事もあって宇髄が2年の村田の首根っこをつかんで2階への階段に向かうのに、同じく3年の金虎寮の寮長、童磨が気軽な様子でヒラヒラ手をふりながら応じる。

そうして30分。

「はい、終了。
廊下の窓も各控室の窓も試してみたけど、開けるの無理な。
ついでに各部屋で役に立ちそうなものもないか探してみたけどこれもなし。
2階の甲冑は動かず。
器物破損もどうかと思ったけど、ま、非常時っつ~ことで、手にしてた武器は外してもってきたんだけど、結構重いな、これ。
使える奴はそれ持って広間に特攻。
甲冑なぎ倒して広間調べて全部終わりだな」

2階から斧やら槍やら剣やらをひきずりながら戻ってくる寮長達。


「あー、お疲れ。
ま、サービスって事で1年から選ばしてあげるよ。
どれか選んで」
相変わらず気楽な様子の上級生たちに苦笑しつつ、錆兎は大剣を、不死川は槍を選択。

「俺にも武器をくれっ!!」
と、そこで主張する煉獄に、3年の寮長達は笑って了承した。

「おー、戦え、戦え!下手な奴より強いしな。かまわねえよっ」
「いいんじゃない?ゴリプリだしさぁ。本能のまま戦っちゃってよ」
と3年生組の寮長達に言われてしまえば、いくらなんでも姫君としては…と誰が思ったところで止める事などできやしない。

かくしてドレス姿で大斧をひっさげて煉獄も参戦する事になった。


「さあ諸君。
紳士らしく身なりを整えて…視界が悪くなりそうな仮面はお守り代わりに姫君達に預かって頂いて?
準備はよろしいかな?」

コホンとため息。

そう言って自ら仮面を取って自寮の姫君に預けると、金虎寮の寮長の童磨がにこりと他の寮長達に準備をうながした。


Before <<<  >>> Next (2月14日公開予定)



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