宇髄達が今消化している休暇が終わって少し経ったら今度はとうとう義勇達の祝言である。
そんな一番幸せであろう時期。
しかし義勇と甘露寺が先日血鬼術の部屋に閉じ込められたあたりから、錆兎の様子が少しおかしい。
何か言いたげで、たまに何か言おうとするかのように口を開くのだが、結局言わずに黙ってしまう。
錆兎と義勇は一緒に育った幼馴染で、同性だというのに彼に対する恋情を秘めていた義勇と違い、錆兎は今まで義勇に隠し事も遠慮もすることは全くなかった。
だからこそ、その錆兎の態度に義勇は不安を覚えてしまう。
そう言えば…血鬼術の部屋に閉じ込められた日に、それまで執拗に義勇に迫っていた炭治郎が別の祝言を挙げたい相手を見つけたと言って錆兎を訪ねてきたという話をされた。
その時は頭を悩ませていた相手が一人いなくなってホッとしたものだが、逆に考えれば、それは祝言を挙げなければ理由が半分減ったということにならないか?
そのことに錆兎が気づいてしまったのでは?
もちろんまだ半分は残っているのだが、それもなくなれば夫婦になる意味がないと思い始めたのだとしたら……そんな可能性を思って義勇は青くなった。
どうしよう…どうすればいい…
ここまで来たら絶対に錆兎と一緒になりたい。
だって錆兎と一緒になれないのなら、生きていく手段である鬼狩りに必要な筋力を落としてまで女にまでなった意味はない。
それよりなにより、子どもの頃からずっと抱えてきた恋心がようやく実るとなったのに、やはりダメだったと言われたらもう立ち直れる気がしない。
だって最愛の姉を失くして以来、唯一欲し続けてきた錆兎を失くしたら、もう義勇には何も残らない。
錆兎が何か義勇に対して不満があるというのなら、なんでも直す所存である。
どんなことでも錆兎が望むようにするから嫌わないで…と、“親友”であった頃なら平気で言えた一言が今は言えない。
──祝言前で忙しいところ、本当にすまんっ!!
宇髄と嫁達が祝言を挙げて休暇も消化し、3日後に自分の祝言を控えた中日に錆兎は宇髄を訪ねていた。
私的なことで相談したいことがある…そう伝えたなら、じゃあ自分の家で…と宇髄に招かれたので、宇髄の大切な嫁達に山ほどの手土産を持って、恐縮しながら音柱屋敷で時間を取ってもらう。
3人の嫁達にも頭を下げるが、気の良いくのいち達は嫌な顔一つせず、いつも主人が世話になっているからともてなしてくれる。
宇髄と嫁達が祝言を挙げて休暇も消化し、3日後に自分の祝言を控えた中日に錆兎は宇髄を訪ねていた。
私的なことで相談したいことがある…そう伝えたなら、じゃあ自分の家で…と宇髄に招かれたので、宇髄の大切な嫁達に山ほどの手土産を持って、恐縮しながら音柱屋敷で時間を取ってもらう。
3人の嫁達にも頭を下げるが、気の良いくのいち達は嫌な顔一つせず、いつも主人が世話になっているからともてなしてくれる。
それに宇髄が
「なんなら女房達も同席させて話を聞くか?」
と聞いてきて、錆兎はまだ何も言っていないのに相談事の内容を悟られているらしいことに驚くが、
「なんなら女房達も同席させて話を聞くか?」
と聞いてきて、錆兎はまだ何も言っていないのに相談事の内容を悟られているらしいことに驚くが、
「そりゃあ、お前、剣術のことなら元水柱なんて立派な師匠がいるだろうし、普通の人間関係ならやっぱり師匠か悲鳴嶼さん、あるいはお館様だろうしな。
そのあたりが乗れない相談で俺んとこにっていうと、もう色恋沙汰しかねえだろう」
と、あっさりと言われて、宇髄のその洞察力に舌をまいた。
もちろんいくら宇髄でも一部の鬼と協調関係にあるという鬼殺隊の機密は漏らせないので、本当に男なのだとは言えないが、口止めをした上で元々は不死川と炭治郎の求婚を避ける目的であったことを添えた上で、義勇は長い期間男として生きてきて心情的には男なのだろうからということで話を進める。
「祝言が近づくにつれてどこか沈んでるというか…元気がなくてな…。
やっぱり男として生きてきて、男の女房になるということに複雑な思いがあるんじゃないかと…。
これは…無理に夫婦という形を取らないでやった方が良いのかと、俺も今更ながら悩み始めているんだが…」
そのあたりが乗れない相談で俺んとこにっていうと、もう色恋沙汰しかねえだろう」
と、あっさりと言われて、宇髄のその洞察力に舌をまいた。
もちろんいくら宇髄でも一部の鬼と協調関係にあるという鬼殺隊の機密は漏らせないので、本当に男なのだとは言えないが、口止めをした上で元々は不死川と炭治郎の求婚を避ける目的であったことを添えた上で、義勇は長い期間男として生きてきて心情的には男なのだろうからということで話を進める。
「祝言が近づくにつれてどこか沈んでるというか…元気がなくてな…。
やっぱり男として生きてきて、男の女房になるということに複雑な思いがあるんじゃないかと…。
これは…無理に夫婦という形を取らないでやった方が良いのかと、俺も今更ながら悩み始めているんだが…」
やっぱり10年来の初恋の相手だと思い出してしまった今はそれを成就させたい気持ちはもちろんある。
だがそれ以上に、
義勇に無理強いはしたくない。
尊重してやりたい。
男は色々大変なのだ。
はぁ…とため息をついてうつむく錆兎に、宇髄は苦笑した。
「あ~…当事者は本当に自分の周りを見えねえってよく言うけどな…」
「……?」
宇髄の言葉に錆兎は顔をあげる。
「他人の気持ちを本人がいねえところで言うってのはあまり良い趣味だとは言えねえけど、ま、今回は色々仕方ねえよな」
「……?」
「冨岡な、」
「…ああ?」
「5人でも10人でもお前の子を産んで大小のお前に囲まれて人生を送れたら最高の勝ち組だって言ってたんだが?」
「はあ???」
いや、本当に義勇が言いそうなことだが…
「ちなみに、この前の例の部屋ん時な?
俺はさすがにないわ~って思ったんだが、それ聞いた甘露寺が、じゃあ自分も5人伊黒を産むから、みんな一緒に最終選別受けて、一緒に柱になれたら素敵ね♪みてえな、恐ろしい話し始めて盛り上がっててな…。
あいつら自分似の子になる可能性とか欠片も考えてねえところが、たいがい互いの男好きすぎだろうって、俺は思ってたんだが……」
宇髄が嘘をつく理由はないし、本当にあの二人ならそんなやり取りをしている図が容易に想像できてしまう。
そうか…そうなのか…嫌じゃないのか……
本人に聞かずに周りに…というのは男らしくないと思いつつも、やっぱり嬉しさが先にたつ。
しかし嬉しいのはおいておいて…
「じゃあ、何故義勇はあんなに沈み込んでるんだ?」
と、疑問がわいてきた。
「そうだよなぁ。
任務で何かってことは聞かねえし、お前も浮いた噂一つねえから他の女に~ってのもねえだろうし?」
と、宇髄も一緒に首をかしげていると、
「あ、もしかして…自信ないとか…。
あたしもたまに思いますもん。
天元様はすごい方だしむちゃくちゃ素敵だし、あたしなんかが嫁でいいのかなぁって」
と、お茶を煎れてきてくれた須磨が困ったように笑いながらそう言った。
それに宇髄は即
「なあに言ってんだっ。
確かに俺が派手にすごくていい男なのは確かだけどな、お前らはそのすげえ俺が選ぶくらいに良い女だから安心しろっ」
と、その頭をくしゃくしゃと撫で、それに須磨がえへへ、と、嬉しそうに笑みを浮かべる。
ああ、なるほどっ!
確かにそれかもしれない。
そう言えば今回の婚姻に関しては、錆兎が驚いているうちに義勇が決めてきて、錆兎自身も義勇と結婚したいのだと言ってやっていなかった気がする。
「あ~、それかっ!」
錆兎はパシッと片手で自分の額を叩いた。
「とりあえず見当がついた気がするっ!
ちょっと義勇つかまえて話してくる。
宇髄、本当に助かった。
須磨殿も本当に感謝する。
良い嫁御だな、宇髄」
と、笑顔で立ち上がってそう言うと、宇髄は須磨の肩をグイっと抱き寄せて
「そうだろ?
俺の自慢の嫁の一人だからなっ!」
と、得意げな笑みを浮かべる。
そうして善は急げと早々に宇髄家を辞した錆兎は、足早に街の方に向かいながら考えた。
義勇は今日は柱女子会で帰りは夕方だと言って居たから、時間はある。
もし自分の考えている通り、自分がきちんと言ってやらなかったのが原因なのだとすれば、ただの求婚ではだめだ。
やらかした分も上乗せできるものでなければ……さあ、どうする、錆兎。考えろ。
こういう時にお館様の名代をしていたために身に着いた膨大な知識がモノを言う。
そしてたどり着く一つの案。
男は色々大変なのだ。
はぁ…とため息をついてうつむく錆兎に、宇髄は苦笑した。
「あ~…当事者は本当に自分の周りを見えねえってよく言うけどな…」
「……?」
宇髄の言葉に錆兎は顔をあげる。
「他人の気持ちを本人がいねえところで言うってのはあまり良い趣味だとは言えねえけど、ま、今回は色々仕方ねえよな」
「……?」
「冨岡な、」
「…ああ?」
「5人でも10人でもお前の子を産んで大小のお前に囲まれて人生を送れたら最高の勝ち組だって言ってたんだが?」
「はあ???」
いや、本当に義勇が言いそうなことだが…
「ちなみに、この前の例の部屋ん時な?
俺はさすがにないわ~って思ったんだが、それ聞いた甘露寺が、じゃあ自分も5人伊黒を産むから、みんな一緒に最終選別受けて、一緒に柱になれたら素敵ね♪みてえな、恐ろしい話し始めて盛り上がっててな…。
あいつら自分似の子になる可能性とか欠片も考えてねえところが、たいがい互いの男好きすぎだろうって、俺は思ってたんだが……」
宇髄が嘘をつく理由はないし、本当にあの二人ならそんなやり取りをしている図が容易に想像できてしまう。
そうか…そうなのか…嫌じゃないのか……
本人に聞かずに周りに…というのは男らしくないと思いつつも、やっぱり嬉しさが先にたつ。
しかし嬉しいのはおいておいて…
「じゃあ、何故義勇はあんなに沈み込んでるんだ?」
と、疑問がわいてきた。
「そうだよなぁ。
任務で何かってことは聞かねえし、お前も浮いた噂一つねえから他の女に~ってのもねえだろうし?」
と、宇髄も一緒に首をかしげていると、
「あ、もしかして…自信ないとか…。
あたしもたまに思いますもん。
天元様はすごい方だしむちゃくちゃ素敵だし、あたしなんかが嫁でいいのかなぁって」
と、お茶を煎れてきてくれた須磨が困ったように笑いながらそう言った。
それに宇髄は即
「なあに言ってんだっ。
確かに俺が派手にすごくていい男なのは確かだけどな、お前らはそのすげえ俺が選ぶくらいに良い女だから安心しろっ」
と、その頭をくしゃくしゃと撫で、それに須磨がえへへ、と、嬉しそうに笑みを浮かべる。
ああ、なるほどっ!
確かにそれかもしれない。
そう言えば今回の婚姻に関しては、錆兎が驚いているうちに義勇が決めてきて、錆兎自身も義勇と結婚したいのだと言ってやっていなかった気がする。
「あ~、それかっ!」
錆兎はパシッと片手で自分の額を叩いた。
「とりあえず見当がついた気がするっ!
ちょっと義勇つかまえて話してくる。
宇髄、本当に助かった。
須磨殿も本当に感謝する。
良い嫁御だな、宇髄」
と、笑顔で立ち上がってそう言うと、宇髄は須磨の肩をグイっと抱き寄せて
「そうだろ?
俺の自慢の嫁の一人だからなっ!」
と、得意げな笑みを浮かべる。
そうして善は急げと早々に宇髄家を辞した錆兎は、足早に街の方に向かいながら考えた。
義勇は今日は柱女子会で帰りは夕方だと言って居たから、時間はある。
もし自分の考えている通り、自分がきちんと言ってやらなかったのが原因なのだとすれば、ただの求婚ではだめだ。
やらかした分も上乗せできるものでなければ……さあ、どうする、錆兎。考えろ。
こういう時にお館様の名代をしていたために身に着いた膨大な知識がモノを言う。
そしてたどり着く一つの案。
考えると非常に恥ずかしいのだが、しかし義勇を不安にさせ続けたことを考えればそのくらい気恥ずかしい思いをするくらいは妥当なところだろう。
よし、やるか。
そう決意して錆兎はとある店に入った。
よし、やるか。
そう決意して錆兎はとある店に入った。
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