前世からずっと一緒になるって決まってたんだ59_少年欲求

自分に対するストーカー行為で始まった一連の事件から派生したのではと思う今回の事件に、錆兎の恋人の義勇は眠れないでいる。

責任とストーカー相手に対する恐怖と不安に、大きな青い目をしっかり見開いたまま考え込んでいる恋人の緊張をほぐそうと、錆兎はチュッチュッと恋人の顔じゅうに軽いキスを落とし始めた。


(…さびと…どうしたんだ……)
くすぐったさに笑いながら身をすくめて小声で言う義勇に、錆兎はにやりと
(ん~、キス?義勇が可愛いから)
とマイペースに返す。

(なんで今?)
と、そのうちいたずらにくすぐりだした錆兎の手を避けつつもくすぐったさにクスクス笑う義勇は可愛い。

(したかったから…か?)
と、そんな可愛い恋人にさらにくすぐりながら口づける。

不安げにしている様子も可愛ければ、くすぐったそうに笑う様子も可愛い。

付き合い自体は1000年前、平安時代からだが、今生で付き合い始めたのは半年前。
だから今生ではそれまでの年月、とても損をしていたと思う。
とにかく離れて生きてきた分の損を取り返さなければ…と、錆兎は日々恋人を眺め、愛で、構い倒すのである。

そんな、構われ倒されている義勇の側にしてみれば、本気でわけがわからず、意味もなく、感情のままに行動しているような恋人に、不安な気持ちが霧散していくが、日常的な感覚が戻ってくると、今度は別の困惑と焦燥に義勇の大きな澄んだ眼が揺れた。


(…ん?どうしたんだ?)
急に反応が薄くなった恋人に錆兎は少し心配そうに形の良い眉を寄せる。

そうやって真面目な顔をする恋人は本当にカッコいい…と義勇は再認識した。
いや、どんな顔をしていても錆兎がカッコいいのは世界の常識だと思ってはいるのだが…。

今生ではたまたま巡り合うのが遅くて半年ばかり前にようやく一緒に暮らし始めたが、それまでは転生するたび生まれてすぐくらいに傍にいた相手だ。

錆兎の方がいつもわずかばかり先に生まれて、なんでも教えてくれて、なんでも手助けしてくれた。
そのおかげで他には言えないこと見せられないことも錆兎に対しては一切の隠し事はない。

距離感ゼロで……つまりあれだ。
今、錆兎の腕の中で一息ついて襲ってきた欲求はとどのつまりは、まあ…アレである。
第二次性徴が来た少年には当然ある、アレだ。


1000年前、どうしていいかわからずいた義勇に、適度に抜くことを教えてくれようとしたのだが、男性社会から少々距離があった義勇はなんとなく抵抗があるというか、自分でうまくすることができずにいたら手助けしてくれて…結果…それからずっと錆兎の世話になっている。

自分ですることに抵抗があっても、恋人にしてもらうのは良いのか…と、錆兎的には不思議に思わないでもないのだが、ずっと手放す気がない以上、自分に依存させる部分は多い方が良いと絶賛放置中だ。
それに何よりそんな恋人が可愛い。

まあ気持ちが少し落ち着いてくると、そんな日常的な欲求もでてくるわけで……


(……なんでも…ない…)

お年頃である身体的にはじゃれあいの刺激で溜まっている事を認識しても、錆兎と二人きりの時なら問題ないが、さすがにこんな風に他が大勢いる時にそんな事を口に出せるはずもなく、義勇は少し視線を逸らして白い頬を赤く染める。

(あ~…そうかぁ…)
と、敏い錆兎はそれで察して小さく笑みを零した。
恥ずかしそうに耳まで赤く染めて目を潤ませる恋人は壮絶に可愛らしい。

(…抜いてやろうか?)
とストレートに聞くと、ビクン!と身を震わせて、ぶんぶんと首を横に振った。

(そのままだと、辛いだろう?)
爽やかなまでにあっけらかんと言う錆兎に義勇は羞恥で真っ赤になる。


そんな恋人が可愛くて、錆兎が反応し始めてしまっている義勇のソコに手を伸ばすと、義勇は目じりを赤く染めて、…んっ……と小さく可愛らしい声を漏らしてしまい、慌てて片手で自分の口をふさぎながら、もう片方の手で錆兎の手を制した。

(…さびと……やだ…。声出てしまうし……恥ずかしい……)
と、大きな瞳にじわりと浮かぶ涙。

ああ、もう可愛すぎてどうしてくれようか…と思いはするものの、恋人を泣かせることは翻意ではない。

なので
(確かに…でもそのままだと辛いだろう?)
と、目元に口づけていったん手を引っ込めて錆兎は起き上がると、不思議そうに見上げてくる義勇を助け起こした。

そしてそのまま義勇の手を引いてダイニングへと続く戸口へ。


「おい?」
と、当然声をかけてくる宇髄に、

「ダイニング使う。すぐ戻るから気にしないでくれ。
戻るまでは来こないでくれ。来たら殺さないといけなくなるからな?」
と、なんでもないことのように宣言する錆兎。


普通なら止めるところであるが、まあ自分よりはるかに腕っぷしの強いこの腐れ縁なら大丈夫だろうと、宇髄ははこれを止めようとはせず、ただ大きく息を吐き出した。



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