無惨が即身を翻して再度雨の中へと消えていったため、王への用心のためにも深追いはせず、床にへたり込んで震えている水木を回収して二階へと戻りかけた宇髄達は、逆に上から下りてきた錆兎達と鉢合わせた。
目を丸くしてそう声をかける宇髄に、
「暗い中だと探索も危ないしなっ、とりあえず朝になって明るくなるまでリビングで休んだ方がいいんじゃないかと言う話になった!」
と、休む必要があるのか?と思われるような元気満々のどでかい声で煉獄が言う。
そんな場合なのだろうか?のんきに休んでいて危険じゃないんだろうか?と、宇髄を始めとする数人の脳内にはそんな言葉が浮かぶが、それに対しては錆兎がきっぱりと、
「黒幕が無惨なら無差別殺人にはならないから大丈夫だ。
義勇がいる所で全員が危険にさらされるような無差別の危害は加えてこない」
と断言して、少なくともこれまでの経緯を知る宇髄と不死川は納得した。
そして…宇髄の説明で加瀬英二と黒井は納得し、水木は一人相変わらず神経質に怯えている。
それでも先ほどの事もあり、一人で何かを出来るわけでもないので、大人しく大勢に従った。
こうしてリビングに戻ると、宇髄と不死川、それに錆兎が部屋の安全を確認後、全員リビングに入って、途中で近くの部屋から失敬したカーテンをブランケット代わりに眠る事にする。
「どうせ寝れない奴もいるだろうし?
知りたい事があれば、俺が見張りがてら、今回の黒幕の事について知ってる限り話してやるよ」
と、早々にダイニングから運び込んだ椅子をドア脇に置いて座り込む宇髄。
「じゃあ俺は寝とくわ。あとで宇髄が眠くなったら見張り代わるなぁ」
と、そこで不死川は早々寝ることを選択する。
「じゃあ、義勇も疲れてるだろうし、俺らも寝るぞ」
と、錆兎も当然就寝組だ。
しかしこちらは義勇をしっかりと抱え込んで寝るには少々ソファは狭いので、暖炉を背にしたソファの後ろ、ほどよく暖かそうなあたりに、ふわふわのファーの敷物を引きずってきてその上に二人して横たわる。
「じゃあ俺も寝かせてもらいますわ~。
なんか必要になったらいつでも起こしたって下さい」
「ああ、では僕も…」
と、黒井と王もそれぞれソファで就寝組。
残り一つのソファにちらりと視線をやり、煉獄はにこりと
「英二も寝ておいたらどうだっ。疲れてるだろう?」
とうながすが、英二は
「いや…寝れねえからいい」
と、小さく首を振ると、こいつ寝かせておけ…と、黒井から受け取って床に放置していた英一を煉獄に押し付けると、唯一船から持ち出したバイオリンケースを手にした。
そして普段のぶっきらぼうな態度からは想像できないような繊細な手つきで中から愛器を取り出して構える。
綺麗な…しかしどこか悲しげな音色。
静かに静かに奏でられるその音は決して安眠を阻害するようなものではない。
「…ただで……加瀬…英二のヴァイオリン聴きながら眠るなんて…すごぃ…ぜいたく…ですわ…」
すでに眠そうな黒井の声に、王も黙って頷いた。
「…来た甲斐…あった…気ぃ…しま……」
それが黒井の最後の声で、疲れもあったのだろう、あとは寝息へと変わっていく。
「寝つく寸前までおしゃべりって…すげえ根性だな」
その様子に宇髄がクスリと笑みを零す。
今回は黒井のポジティブさ明るさに救われた気がする。
「まあ…結局みんな何のかんの言って眠れるみてえだな。
水木さんは?どうするよ?」
「いや…俺はさすがに眠れそうにないよ」
と首を振る水木。
「俺も眠りそこねてしまったっ!入れてくれっ」
と、そこにカップを3つ持った煉獄が寄ってきた。
ほら、と、渡されて一瞬受け取るのを躊躇する水木に、煉獄は
「錆兎が言っていた通りだっ。
義勇が飲む可能性のあるものに害のあるものは入れないだろうし、俺がさっき毒見したから大丈夫だぞっ」
と、二人に向かってニカっと微笑む。
ああ、煉獄も基本明るいので、こういう時は必要な空気を作ってくれるので本当に助かるな…と、宇髄は礼を言ってカップを受け取った。
「んで、この際だから聞いちまうが…半年前の炭治郎の件で俺にメールくれたのって水木さんって事でいいんだよな?」
「ああ、では僕も…」
と、黒井と王もそれぞれソファで就寝組。
残り一つのソファにちらりと視線をやり、煉獄はにこりと
「英二も寝ておいたらどうだっ。疲れてるだろう?」
とうながすが、英二は
「いや…寝れねえからいい」
と、小さく首を振ると、こいつ寝かせておけ…と、黒井から受け取って床に放置していた英一を煉獄に押し付けると、唯一船から持ち出したバイオリンケースを手にした。
そして普段のぶっきらぼうな態度からは想像できないような繊細な手つきで中から愛器を取り出して構える。
綺麗な…しかしどこか悲しげな音色。
静かに静かに奏でられるその音は決して安眠を阻害するようなものではない。
「…ただで……加瀬…英二のヴァイオリン聴きながら眠るなんて…すごぃ…ぜいたく…ですわ…」
すでに眠そうな黒井の声に、王も黙って頷いた。
「…来た甲斐…あった…気ぃ…しま……」
それが黒井の最後の声で、疲れもあったのだろう、あとは寝息へと変わっていく。
「寝つく寸前までおしゃべりって…すげえ根性だな」
その様子に宇髄がクスリと笑みを零す。
今回は黒井のポジティブさ明るさに救われた気がする。
「まあ…結局みんな何のかんの言って眠れるみてえだな。
水木さんは?どうするよ?」
「いや…俺はさすがに眠れそうにないよ」
と首を振る水木。
「俺も眠りそこねてしまったっ!入れてくれっ」
と、そこにカップを3つ持った煉獄が寄ってきた。
ほら、と、渡されて一瞬受け取るのを躊躇する水木に、煉獄は
「錆兎が言っていた通りだっ。
義勇が飲む可能性のあるものに害のあるものは入れないだろうし、俺がさっき毒見したから大丈夫だぞっ」
と、二人に向かってニカっと微笑む。
ああ、煉獄も基本明るいので、こういう時は必要な空気を作ってくれるので本当に助かるな…と、宇髄は礼を言ってカップを受け取った。
「んで、この際だから聞いちまうが…半年前の炭治郎の件で俺にメールくれたのって水木さんって事でいいんだよな?」
ずずっとカップの中のコーヒーをすすりながら、宇髄は即本題に入る。
水木はそれに小さく頷いた。
まあ、ここまでくれば確定だろうが…。
「あれ…結局炭治郎にバレてたのか?」
とさらに聞くと水木は青ざめた顔で身震いした。
水木はそれに小さく頷いた。
まあ、ここまでくれば確定だろうが…。
「あれ…結局炭治郎にバレてたのか?」
とさらに聞くと水木は青ざめた顔で身震いした。
「…バレてない…って思ってた…けど、あいつやっぱ普通じゃないから……。
昔から違ってた…。
にこやかに見せて…穏やかに見せて……でもいったん敵認定するとすごいんだ…。
陰湿で…粘着質で…周りにはそうとわからないように、陰で貶める。
相手が潰れるまで…。
怖かった…離れたかったけど…離れたら次のターゲットになるからと思って……」
「自分はリスクを負わないようにして、俺に逆に潰してもらいたかった…と」
宇髄は片手で綺麗な髪をクシャっと掴んで息を吐き出した。
信念、友人、その他大事なモノのためには時にはリスクを負っても貫かなければならないものはあると思うが、他人にそれを押し付けていいわけではない。
(ああ…でも今はそんな感情出したらまずいな)
と、それでもこの状況下で敵はなるべく作らないほうが良いと、その黒い気持ちを飲み込んで、宇髄は
「まあ俺が優秀で強いのは確かだし?そうしたくなるのも仕方ねえ事かもしれねえけどな」
とことさら明るく言う。
優秀である…という事に加えて、その鉄の理性のために厄介事をどんどん持ち込まれる事に、この他の事には非常によく気がつく青年は気づかない。
そして…神様と言うのは真面目にやっている者よりも、時として好きに生きている人間のほうにころりと幸運を授けたりすることがままあるようだ。
厄介事を一人楽しく一身に背負った青年がこれからの事に頭を悩ませている一方で、暖炉近くのソファーの陰には棚からぽてんとぼた餅のように最愛の恋人を手に入れた、敵である無惨も認める、神様に確実に愛されているのであろう男。
見ず知らずの人間も含めたこの場にいる人間全員の事を思う宇髄とは違い、男が頭を悩ませるのは最愛の恋人についてだけだ。
昔から違ってた…。
にこやかに見せて…穏やかに見せて……でもいったん敵認定するとすごいんだ…。
陰湿で…粘着質で…周りにはそうとわからないように、陰で貶める。
相手が潰れるまで…。
怖かった…離れたかったけど…離れたら次のターゲットになるからと思って……」
「自分はリスクを負わないようにして、俺に逆に潰してもらいたかった…と」
宇髄は片手で綺麗な髪をクシャっと掴んで息を吐き出した。
信念、友人、その他大事なモノのためには時にはリスクを負っても貫かなければならないものはあると思うが、他人にそれを押し付けていいわけではない。
(ああ…でも今はそんな感情出したらまずいな)
と、それでもこの状況下で敵はなるべく作らないほうが良いと、その黒い気持ちを飲み込んで、宇髄は
「まあ俺が優秀で強いのは確かだし?そうしたくなるのも仕方ねえ事かもしれねえけどな」
とことさら明るく言う。
優秀である…という事に加えて、その鉄の理性のために厄介事をどんどん持ち込まれる事に、この他の事には非常によく気がつく青年は気づかない。
そして…神様と言うのは真面目にやっている者よりも、時として好きに生きている人間のほうにころりと幸運を授けたりすることがままあるようだ。
厄介事を一人楽しく一身に背負った青年がこれからの事に頭を悩ませている一方で、暖炉近くのソファーの陰には棚からぽてんとぼた餅のように最愛の恋人を手に入れた、敵である無惨も認める、神様に確実に愛されているのであろう男。
見ず知らずの人間も含めたこの場にいる人間全員の事を思う宇髄とは違い、男が頭を悩ませるのは最愛の恋人についてだけだ。
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平安時代からのつながりなんて素敵ですね。お話の再開を楽しみにしています。
返信削除この話では色々な時代で互いに恋する錆義を書いてみました💕
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