「義勇、お前は見ない方がっ!!」
と、テーブルの上に気付いて慌てて言う不死川。
だが義勇は相変わらず錆兎の腕の中でのんびりとした口調で言った。
「よく出来てるな。あれ、炭治郎の人形だぞ?」
「はぁ?!」
義勇の言葉に不死川は中へと駆け込み、蝋燭を消さないように気を付けながらもテーブルに近づくと、マジマジと生首を観察する。
本当に近くで目を凝らすと、それが精巧に作られた人形であることがわかる。
そう思って冷静になれば、血が流れてきた時間を考えると死にたてではありえない遺体の首としては、生前の肌の色を保ち過ぎているし、硬直も見られない。
「…ほんとうだ……。こんな暗がりで遠くから人形だなんてよくわかったなぁ」
感心した様子でもう一度しげしげと観察する不死川に、義勇は
「俺は卜部だから。
昔錆兎が言ってくれたんだ。
俺のよく見える目は広い視界で得た情報を錆兎に伝える大切な目だって。
錆兎がいつでも俺を守ってくれていて、俺は自分の身の危険に気を配る必要はないから、その分色々な物を見て、色々な情報を錆兎に伝えるんだ」
と、嬉しそうに錆兎を見上げて笑う。
「そうだな。俺は義勇を守る盾で刀で…義勇は俺を守る目だ。
俺たちは二人で一人だから」
と、それにそう返す錆兎。
そんな二人の周りは、こんな血まみれの場所だというのに、妙に甘い空気が漂っていて胸やけしそうだ…と、不死川は大きくため息をついた。
藪をつついて蛇を出した気分で、もう言わなきゃよかった、褒めなきゃよかったと言ったところである。
そんな甘い空気なのに、次に錆兎から出る言葉は、
「血は本物だが…全然固まっていないということは、薬を入れてるな」
などとさらに血生臭い話で恐ろしい。
義勇の方だって炭治郎の姿を借りた無惨の粘着にはあれほど怯えていたくせに、人形だと認識していれば目の前の生首も全く気にならないらしい。
さすが錆兎!めのつけどころが違う!
などと目をハート形にして錆兎をうっとりとみあげている。
もうこいつらは気にしたらだめだ、気にしたら負けだ!と、割り切ることにして、不死川は目の前の生首の仕掛けに視線を戻した。
言われて改めてみると、確かにそうである。
普通なら乾いて茶色になっているであろうあたりも真っ赤なみずみずしい液体のままだ。
そうとわかって不死川があらためてテーブルの仕掛けを観察してみると、生首の中に血液らしき赤い液体が入っていて、それが少しずつ流れ出すようになっている。
錆兎いわくその液体は本物の血と言うことなので、それだけの量を手に入れて、その血液が固まらないように抗凝固剤を混ぜて生首の中に詰めるなど、簡単な作業とは言えない気がした。
「脅したいだけのいたずらにしては…あまりに手がこんでるよなぁ……」
汚れた手をハンカチで拭きながら、さらに何かないかと周りを見回す不死川に、錆兎は
「いたずらではないが…脅したいんじゃないか?本人が言ってただろ、さっき」
と、興味なさげに肩をすくめるが、そこで腕の中でビクっと身をすくませる愛しい恋人に気付くと、
「ああ、義勇のことじゃない。
たぶん…あいつの言う裏切り者っていうのは、さっき逃げた水木のことじゃないか?
なんだか身に覚えありそうだったし…」
と、安心させるように優しくほほ笑むと、チュッと軽く口づけを落とす。
「…本当に?」
と、あの思い切りトラウマを作ったストーカー事件からまだ半年しか経っていないこともあって、ひどく不安げな目で見上げてくる義勇に、
「本当に。絶対だ。安心しろ」
と、錆兎が断言すると、義勇は少しホッとしたように息を吐き出した。
まあ…あの時携帯を取り上げて、あのユダの裏切りうんぬんのメールを見せずに済んで本当に良かったと思う。
あれを見ていたら、無惨関係に関してはひどくナーバスになる義勇のことだ、ショックで倒れかねない。
しかし不本意ながら長く見続けることになった…そして同じ相手が好きな錆兎としては、わかるのだ。
執着しすぎて取る態度が義勇にとっては十分気味が悪くダメージになるという事は確かなわけだが、どれだけ拒絶されようと、自分的に嫌な態度を取られようと、無惨は意図的に義勇を傷つけようとは思わないはずだ。
義勇に対するそれは飽くまで好意と執着から来る行動で、悪意ではないのだ。
「脅したいだけのいたずらにしては…あまりに手がこんでるよなぁ……」
汚れた手をハンカチで拭きながら、さらに何かないかと周りを見回す不死川に、錆兎は
「いたずらではないが…脅したいんじゃないか?本人が言ってただろ、さっき」
と、興味なさげに肩をすくめるが、そこで腕の中でビクっと身をすくませる愛しい恋人に気付くと、
「ああ、義勇のことじゃない。
たぶん…あいつの言う裏切り者っていうのは、さっき逃げた水木のことじゃないか?
なんだか身に覚えありそうだったし…」
と、安心させるように優しくほほ笑むと、チュッと軽く口づけを落とす。
「…本当に?」
と、あの思い切りトラウマを作ったストーカー事件からまだ半年しか経っていないこともあって、ひどく不安げな目で見上げてくる義勇に、
「本当に。絶対だ。安心しろ」
と、錆兎が断言すると、義勇は少しホッとしたように息を吐き出した。
まあ…あの時携帯を取り上げて、あのユダの裏切りうんぬんのメールを見せずに済んで本当に良かったと思う。
あれを見ていたら、無惨関係に関してはひどくナーバスになる義勇のことだ、ショックで倒れかねない。
しかし不本意ながら長く見続けることになった…そして同じ相手が好きな錆兎としては、わかるのだ。
執着しすぎて取る態度が義勇にとっては十分気味が悪くダメージになるという事は確かなわけだが、どれだけ拒絶されようと、自分的に嫌な態度を取られようと、無惨は意図的に義勇を傷つけようとは思わないはずだ。
義勇に対するそれは飽くまで好意と執着から来る行動で、悪意ではないのだ。
まあ…自分にとっては幸いにして、無惨にとってはあいにく、それは義勇には微塵も伝わっていないわけだが…。
「とりあえず…この部屋には水木に対する嫌がらせの道具しかなさそうだな。
血文字のからくりはわかったわけだし、館は広いし、探索するにしても明日、日中の明るい時間の方がいいんじゃないか?」
と錆兎が言ったのは、飽くまで大事な恋人がひどく疲れた様子をしていたからだったが、
「確かに!暗い中だと色々見落としそうだし、腹も減ったなっ!」
と、煉獄もそれに同意し、
「ほんなら、リビング戻って朝まで休みますか。交代で見張りして」
と、黒井もそれに同意した。
「とりあえず…この部屋には水木に対する嫌がらせの道具しかなさそうだな。
血文字のからくりはわかったわけだし、館は広いし、探索するにしても明日、日中の明るい時間の方がいいんじゃないか?」
と錆兎が言ったのは、飽くまで大事な恋人がひどく疲れた様子をしていたからだったが、
「確かに!暗い中だと色々見落としそうだし、腹も減ったなっ!」
と、煉獄もそれに同意し、
「ほんなら、リビング戻って朝まで休みますか。交代で見張りして」
と、黒井もそれに同意した。
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