いつも明るい甘露寺がいつもにもましてニコニコと満面の笑み。
その横ではいつもは不機嫌な伊黒が少しばかり照れたように…それでも幸せそうな笑みを浮かべていた。
宇髄は出席は許されてもこの屋敷の場所は明かさせぬようにと厳命を受けて隠に運ばれていた奥方達の目隠しを取りつつ、彼にしては珍しく素直に嬉しさを前面に出している。
同僚の柱達も苦楽を共にした仲間の幸せそうな様子に祝福に満ちた視線を送り、お館様のおいでを待つ間、どうやら長く甘露寺の相談に乗っていた胡蝶などは彼女と手を取り合って喜びをわかちあっていた。
そんな中で不死川は昨日の帰りに自分が見事に振られた相手、同僚柱の到着を待っている。
水柱、冨岡義勇。
おそらく最初は彼に偏見を持っていた。
冨岡は元水柱で現在でもお館様の信任の厚い鱗滝左近次の弟子である。
共に鱗滝に師事した兄弟弟子の渡辺錆兎はなんと鬼殺隊の中で実質お館様に次ぐナンバー2である彼の私設秘書に抜擢されていた。
依怙贔屓とか不正とか、そういう物が大嫌いな不死川は最初その錆兎にも反発したが、彼の場合は師匠の七光りでは決してないということが、強引に持ち込んだ手合わせでまるで敵わず一太刀を浴びせることもなく、真剣を持っていた自分が木刀でコテンパンに伸された事でわかった。
あとで聞いたところによると、彼は元々が平安から続く鬼退治で有名な武士の家の末裔で、その祖父は鱗滝の弟弟子。
彼自身も類稀なる才能の持ち主で、鱗滝に師事する遥か前、物心ついた頃から刀を握り、最終選別ではほぼすべての鬼を斬って捨てたという剛の者らしい。
生まれた家が家なので、刀だけではなく上に立つ教育もきちんと受けていて、鱗滝が推挙したというよりは、彼がまだ師範の元で修業中だった頃にそういう諸々を知ったお館様の方からぜひにと申し出たというのが本当のところだということだった。
だから彼がその地位にいるのは当たり前のことで、実力の差も状況も見極められずに喧嘩を吹っ掛けた不死川が土下座して態度を改めた時もまったく根に持つこともなく、それほどかしこまることもないし、気にすることもない、他がそう呼ぶように気軽に錆兎と呼んでくれとにこりと人好きのする笑顔で言われて、その器の大きさにかえって恐縮をしてしまったのは記憶に新しい。
そしてそんな風に錆兎に対して認識を改めた頃、不死川は錆兎の兄弟弟子の冨岡義勇のことを知る。
巷で言われていることには、その大変忙しいはずの錆兎が冨岡が任務に入る時は保護者よろしくついて行って補佐をして、大怪我をさせぬようにしながら鬼を斬らせてやるのだ…と、それはまあ尾ひれがつきまくった噂だったとあとで知ることになるのだが、とにかくそんな噂を聞いていたので、それで50体斬ったか下弦を倒したかで柱になったと言われれば、これこそ師匠と兄弟弟子の七光りか…と、いつもの反骨の精神が頭をもたげてしまった。
そうして嫌って罵って喧嘩を吹っ掛けて…と、いつものパターンだったのだが、こいつがなんだかどれだけ殴ろうが罵ろうが懲りずに近づいてきて、あまつさえ不死川の好物がおはぎであることまで調べ上げておはぎ持参で寄ってくる。
そうして拒絶されると、なんだか子犬のようにシュンとするため、さすがに不死川も自分が単なる弱い者いじめをしている気分になってきて、心が痛んできた。
怒鳴っても殴ってもテチテチと幼児のようなあどけない様子で追いかけてくるのに、元は長男である不死川は徐々に絆されていくが、生来の素直じゃない性格が災いして態度を変えることができない。
そもそもが冨岡自身は不器用すぎて画策などできそうにない人柄で、実力なのか多少の贔屓が入っているのかはおいておいて、彼自身は必ずしも水柱になりたいとは思っていないようだった。
それによくよく注意してみてみればどこか弟っぽいあどけなさがある。
だから彼がその地位にいるのは当たり前のことで、実力の差も状況も見極められずに喧嘩を吹っ掛けた不死川が土下座して態度を改めた時もまったく根に持つこともなく、それほどかしこまることもないし、気にすることもない、他がそう呼ぶように気軽に錆兎と呼んでくれとにこりと人好きのする笑顔で言われて、その器の大きさにかえって恐縮をしてしまったのは記憶に新しい。
そしてそんな風に錆兎に対して認識を改めた頃、不死川は錆兎の兄弟弟子の冨岡義勇のことを知る。
巷で言われていることには、その大変忙しいはずの錆兎が冨岡が任務に入る時は保護者よろしくついて行って補佐をして、大怪我をさせぬようにしながら鬼を斬らせてやるのだ…と、それはまあ尾ひれがつきまくった噂だったとあとで知ることになるのだが、とにかくそんな噂を聞いていたので、それで50体斬ったか下弦を倒したかで柱になったと言われれば、これこそ師匠と兄弟弟子の七光りか…と、いつもの反骨の精神が頭をもたげてしまった。
そうして嫌って罵って喧嘩を吹っ掛けて…と、いつものパターンだったのだが、こいつがなんだかどれだけ殴ろうが罵ろうが懲りずに近づいてきて、あまつさえ不死川の好物がおはぎであることまで調べ上げておはぎ持参で寄ってくる。
そうして拒絶されると、なんだか子犬のようにシュンとするため、さすがに不死川も自分が単なる弱い者いじめをしている気分になってきて、心が痛んできた。
怒鳴っても殴ってもテチテチと幼児のようなあどけない様子で追いかけてくるのに、元は長男である不死川は徐々に絆されていくが、生来の素直じゃない性格が災いして態度を変えることができない。
そもそもが冨岡自身は不器用すぎて画策などできそうにない人柄で、実力なのか多少の贔屓が入っているのかはおいておいて、彼自身は必ずしも水柱になりたいとは思っていないようだった。
それによくよく注意してみてみればどこか弟っぽいあどけなさがある。
おかげで自分だって妹なうえに彼より3歳も年下の胡蝶しのぶに「冨岡さんは天然ドジっ子だから」などと言われる始末だ。
そう意識してみれば、なんだか守ってやりたい長男心をくすぐられる。
そんな風にじくじたる思いを抱えていたところにお館様の祝言発言で、これだ!と思った。
突き放しても突き放しても寄ってくるのだから、冨岡は不死川に好意を持っているのだろう。
同性なのでそれが性的なものかはわからないが、そうでなかったとしても結婚という形を取って一緒に暮らして面倒を見てやることはやぶさかではない。
そう思って、帰りに冨岡を呼び止めて結婚しても良いと申し出たら、あっさり断られた。
え??
と、一瞬驚きのあまり固まる不死川。
そういう特別な関係を望んでいないなら、あのやたらと寄ってきたのはなんだったんだ?と思っていると、冨岡はあっさりと、錆兎に仲良くしろと言われたからだと言うではないか。
そうか…自分に対して好意を持っていたからではなく、ただ錆兎に言われたからだったのか…むしろ錆兎と恋仲なのだろうか…と、正直落ち込んだ。
しかしすっかり祝言をあげて一緒に住む気になってしまっていたからか、そう言われてもはいそうですかとは諦めきれず、さらにその日に出張から戻ると言う錆兎を待って、どうせなら男よりもお館様のお嬢様の誰かと結婚したらいいんじゃないだろうか…などと未練がましいことを言って、錆兎にきっぱりと拒否された。
そうして心の底から落ち込んで帰宅して、しばらくは何もする気がおきずにぼ~っとしていたのだが、ふと気が付く。
そう言えば冨岡は錆兎と付き合っているとは言っていないし、錆兎も拒否したのはお館様のお嬢様と結婚を…という発言に対してで、冨岡以外と結婚ということは一言も言っていない。
そんな風にじくじたる思いを抱えていたところにお館様の祝言発言で、これだ!と思った。
突き放しても突き放しても寄ってくるのだから、冨岡は不死川に好意を持っているのだろう。
同性なのでそれが性的なものかはわからないが、そうでなかったとしても結婚という形を取って一緒に暮らして面倒を見てやることはやぶさかではない。
そう思って、帰りに冨岡を呼び止めて結婚しても良いと申し出たら、あっさり断られた。
え??
と、一瞬驚きのあまり固まる不死川。
そういう特別な関係を望んでいないなら、あのやたらと寄ってきたのはなんだったんだ?と思っていると、冨岡はあっさりと、錆兎に仲良くしろと言われたからだと言うではないか。
そうか…自分に対して好意を持っていたからではなく、ただ錆兎に言われたからだったのか…むしろ錆兎と恋仲なのだろうか…と、正直落ち込んだ。
しかしすっかり祝言をあげて一緒に住む気になってしまっていたからか、そう言われてもはいそうですかとは諦めきれず、さらにその日に出張から戻ると言う錆兎を待って、どうせなら男よりもお館様のお嬢様の誰かと結婚したらいいんじゃないだろうか…などと未練がましいことを言って、錆兎にきっぱりと拒否された。
そうして心の底から落ち込んで帰宅して、しばらくは何もする気がおきずにぼ~っとしていたのだが、ふと気が付く。
そう言えば冨岡は錆兎と付き合っているとは言っていないし、錆兎も拒否したのはお館様のお嬢様と結婚を…という発言に対してで、冨岡以外と結婚ということは一言も言っていない。
ああ、そうだ。
今までは冨岡は錆兎に同僚と仲良くと言われたから自分の元に来ていただけだとしても、いまから親しくなればいいんじゃないだろうか…。
これからは殴らないようにしよう。
そうしたら心を開いてくれて、いつか特別に思ってくれるのではないだろうか…
今まで取ってきた態度を考えると気まずいが、それでまたあの家族の温かさを味わえるかと思えばたいしたことじゃない。
幸いにして祝言を挙げる伊黒、甘露寺、宇髄の任務調整のために翌日も全員が産屋敷家に呼び出されることになったので、まずはその日、今日からだ。
ということで、不死川はやや緊張した面持ちで冨岡の到着を待ったわけなのだが、なぜか来ない。
今までは冨岡は錆兎に同僚と仲良くと言われたから自分の元に来ていただけだとしても、いまから親しくなればいいんじゃないだろうか…。
これからは殴らないようにしよう。
そうしたら心を開いてくれて、いつか特別に思ってくれるのではないだろうか…
今まで取ってきた態度を考えると気まずいが、それでまたあの家族の温かさを味わえるかと思えばたいしたことじゃない。
幸いにして祝言を挙げる伊黒、甘露寺、宇髄の任務調整のために翌日も全員が産屋敷家に呼び出されることになったので、まずはその日、今日からだ。
ということで、不死川はやや緊張した面持ちで冨岡の到着を待ったわけなのだが、なぜか来ない。
そろそろお館様が来てしまうから、話すのは会議が終わってからか…そんなことを考えつつ待っていると、とうとう冨岡がこないうちにお館様がおいでになる旨が告げられた。
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