会場内はだいたい数十人ほどの人間がいるが、その多くは大学生のようだ。
中には高校生も混じっているが多くはない気がする。
そのうち半数くらいはそれぞれバイオリンやフルートなどを持っているので、あわよくば加瀬兄弟との共演をと思っているのだろう。
そんな中で一人、気になりすぎる人物が……
不死川もそちらがひどく気になっているようだ。
一つのテーブルを占領して山盛りの料理を黙々と食べている男。
目をかっぴらいてとにかく食事を詰め込んでいる。
金色をベースに赤の指し色という派手な色合いの髪のその男はどう見ても煉獄だと思う。
いや、あの家は転生とかそういう以前の問題で生まれる男児はクローンか?!と思うほどに同じような顔をしているので、“あの”煉獄なのかと言うと、絶対とは言い切れないのだが…。
気になるなら声をかければいいのだがためらう理由は、前回の炭治郎の姿をした無惨にある。
もしまた鬼側の誰かがその姿をしているのならと思うと、散々大変な思いをして遠ざけたところなので、ちょっと勘弁してほしいところだ。
宇髄の隣の不死川も同意見だったらしい。
声をかけるべきかかけぬべきか迷っていて、ちらちらと宇髄の方に視線を向けていた。
そんな二人の様子に、ずっと義勇しか見ていなかった錆兎もようやく気付いたのだろう。
「二人ともどうした?」
と、その視線の先を追う。
「あれを…」
と、それに気づいた宇髄がどう思う?と続ける間もなく、錆兎がいきなり
「お~い!杏!杏寿郎じゃないかっ?!!」
と、笑顔でぶんぶん手を振りながら叫んだ。
すると、バッと顔をあげた相手は、
「おおっ!錆兎っ!!やっぱりお前かっ!久しいなっ!!」
とホッとした笑顔で同じく手を振り、その後少し迷って、なんとテーブルごと移動してきた。
「いやいや、お前、テーブルはまずかろう!料理だけにしておけ」
と、それにそう苦言は呈するものの、さして驚いた様子のない錆兎に隣で不死川が驚いている。
「そうだなっ!テーブルごと持ってくると狭い!
天元、錆兎、すまないが皿を移動するのを手伝ってくれっ!!」
と、当たり前に言ってくる煉獄に、宇髄は少し考えて
「…平安の記憶ありか?」
と、錆兎の言葉に対する反応から聞いてみる。
そう、実は煉獄とも古い付き合いだ。
「…平安の記憶ありか?」
と、錆兎の言葉に対する反応から聞いてみる。
そう、実は煉獄とも古い付き合いだ。
ただ、宇髄や錆兎と違って、煉獄の場合は義勇と同様、前世からの記憶がある時とない時がある。
ちなみに大正時代はなかったので宇髄の方も知らないふりをしていた。
今生では錆兎に対する記憶があるということは記憶があるのだろう、そう思って聞いてみたのだが、案の定
「ああ。平安はもちろん、生きていた当時は過去の記憶がなかった大正その他の記憶もしっかりとある。
宇髄や錆兎はいつの時代も記憶がしっかりしているからな。
俺のことも覚えているだろうとよほど声をかけようとしたのだが……」
と、そう言いつつそこで煉獄には珍しく口ごもる。
何かあったのか?と考え込む宇髄とは対照的に、錆兎は
「なんで声をかけてこなかったんだ?
ちなみに俺はお前に気づかなかっただけなんだが。
なにしろお前ときたらいつも食い物を食う時は、どでかい声で『美味い!美味いっ!』と叫んでいるからな。
それがないと気づかん」
とどきっぱりと断言した。
「ああ、それはな。
現世では公共の場で大声を出すのは礼儀に反するから気を付けるようにと注意されてな。
公共以外では相変わらずだなっ!
で、声をかけなかったのは…実は1年ほど前か…大正時代に鬼殺隊で一緒だった竈門少年をみかけてなっ。
声をかけてみたのだが、俺など知らぬと不審者のような目で見られてさすがにやや落ち込んだということがあってな…
まあ、お前は相変わらず楽し気に義勇の世話を焼いているから他人の空似とかではないと思ったのだが、逆に義勇といるお前に俺に対する記憶がないのに声をかけたりすると、防衛本能全開で敵対される気がするしなっ!」
煉獄は懐かし気に、またはしゅんと肩を落としたりと、忙しく表情や態度を変えながら、自分の側の立場を説明する。
そうして煉獄の言葉がいったん途切れると、錆兎は、頭をがりがりと掻きながら
──あ~…炭治郎のことはなぁ……天元が説明する
と、いきなり宇髄に振ってきた。
まあ、このあたりはいつものことだ。
慣れているので宇髄も小さなため息一つ。
それを了承と取って、錆兎はまた煉獄が来ても相変わらずもきゅもきゅと錆兎が取り分けた料理を不器用に口に運ぶ義勇の汚れた口元を拭いてやるという、彼にとって今一番の最重要事項へと戻っていく。
それを二人して視線で確認すると、そちらから互いに目線を移した。
「あのな、炭治郎のことなんだが…なんでそうなってんのかわかんねえんだけど、あれ、中身が月哉なんだわ」
「はあっ?」
あまり物事に動じない煉獄も、それにはさすがに驚いたようだ。
「月哉というのは…“あの”月哉という認識でで良いのか?
ということは、鬼舞辻無惨でもあるわけだな?!
平和な世の中になっていたように思っていたが、まだ鬼はいるのかっ?
そもそも俺は今まで自分も周りも転生するのを見てきたが、他人の姿に転生した人間はみたことがない。
そんなことがありうるのか?!
それとも無惨が竈門少年に化けているのか?」
まあ、転生に対しての認識は宇髄も似たようなものだ。
錆兎も義勇も耀哉も自分も…そして煉獄も、皆、転生前の容姿そのままの姿で転生を繰り返している。
今回の炭治郎のような事例は初めてで、いまだに理由がわからない。
だからこちらも煉獄に声をかけるのをためらっていたのだと告げた。
「ただ、無惨は大正の最後の戦いで倒されている。
だから本当に月哉はなんでかわかんねえが炭治郎の姿で転生してきたらしい。
でも中身が月哉だからな。
ぎゆうに付きまとっていたんだが、俺と錆兎と実弥で返り討ちにして、今は現世で奴の祖父の神父に生まれた桑島爺が海外の奉仕活動に奴を連れて行ってるらしい」
と、簡単に説明した後、詳しい経緯を話して聞かせた。
そしてすべてを話し終わると、煉獄はむぅぅ~と唸って腕組みをして考え込む。
「それでは…竈門少年は本来転生をする資質を持っていたのに月哉に乗っ取られて消えてしまったということなのか…」
と、普段はキリリと上向きの眉が、へにょんと下がって八の字になった。
ああ、そう考えればそうなのか…と思うと、たとえ無惨が物理的に近くに居なくなったとしても、炭治郎と親しい人間からすればめでたしめでたしというわけでもないのだろう。
転生のシステムは正直わからないが、無惨が割り込んだせいで炭治郎の魂のようなものが消えてしまったのかと思えば、かなり複雑な気分になる。
その可能性にシン…と静まるテーブル。
そんな中で聞いていないようで聞いていたらしい。
口の中の物をもぐもぐごっくんと飲み込んだ義勇が言った。
──世の中同じ顔の人間は3人いるというから、炭治郎の中身も炭治郎な人間もどこかにいるんじゃないか?もしくは逆に容姿が入れ替わって無惨の顔をしているとか…
最初の発言でおおっ!と浮上して、次の発言で、うわぁ~と嫌な顔をする3人。
それをまとめて救い上げるように
「まあ差し迫っているわけでもなければ、何もわかっていない状態であれこれ考えても仕方がない。
とりあえず今は杏との再会を祝すところだな。
酒が飲めないのは残念だが、ジュースで祝杯としよう!」
と、錆兎がグラスを取っていうので、宇髄も不死川も煉獄も、それもそうかとグラスを手に取った。
ちなみに大正時代はなかったので宇髄の方も知らないふりをしていた。
今生では錆兎に対する記憶があるということは記憶があるのだろう、そう思って聞いてみたのだが、案の定
「ああ。平安はもちろん、生きていた当時は過去の記憶がなかった大正その他の記憶もしっかりとある。
宇髄や錆兎はいつの時代も記憶がしっかりしているからな。
俺のことも覚えているだろうとよほど声をかけようとしたのだが……」
と、そう言いつつそこで煉獄には珍しく口ごもる。
何かあったのか?と考え込む宇髄とは対照的に、錆兎は
「なんで声をかけてこなかったんだ?
ちなみに俺はお前に気づかなかっただけなんだが。
なにしろお前ときたらいつも食い物を食う時は、どでかい声で『美味い!美味いっ!』と叫んでいるからな。
それがないと気づかん」
とどきっぱりと断言した。
「ああ、それはな。
現世では公共の場で大声を出すのは礼儀に反するから気を付けるようにと注意されてな。
公共以外では相変わらずだなっ!
で、声をかけなかったのは…実は1年ほど前か…大正時代に鬼殺隊で一緒だった竈門少年をみかけてなっ。
声をかけてみたのだが、俺など知らぬと不審者のような目で見られてさすがにやや落ち込んだということがあってな…
まあ、お前は相変わらず楽し気に義勇の世話を焼いているから他人の空似とかではないと思ったのだが、逆に義勇といるお前に俺に対する記憶がないのに声をかけたりすると、防衛本能全開で敵対される気がするしなっ!」
煉獄は懐かし気に、またはしゅんと肩を落としたりと、忙しく表情や態度を変えながら、自分の側の立場を説明する。
そうして煉獄の言葉がいったん途切れると、錆兎は、頭をがりがりと掻きながら
──あ~…炭治郎のことはなぁ……天元が説明する
と、いきなり宇髄に振ってきた。
まあ、このあたりはいつものことだ。
慣れているので宇髄も小さなため息一つ。
それを了承と取って、錆兎はまた煉獄が来ても相変わらずもきゅもきゅと錆兎が取り分けた料理を不器用に口に運ぶ義勇の汚れた口元を拭いてやるという、彼にとって今一番の最重要事項へと戻っていく。
それを二人して視線で確認すると、そちらから互いに目線を移した。
「あのな、炭治郎のことなんだが…なんでそうなってんのかわかんねえんだけど、あれ、中身が月哉なんだわ」
「はあっ?」
あまり物事に動じない煉獄も、それにはさすがに驚いたようだ。
「月哉というのは…“あの”月哉という認識でで良いのか?
ということは、鬼舞辻無惨でもあるわけだな?!
平和な世の中になっていたように思っていたが、まだ鬼はいるのかっ?
そもそも俺は今まで自分も周りも転生するのを見てきたが、他人の姿に転生した人間はみたことがない。
そんなことがありうるのか?!
それとも無惨が竈門少年に化けているのか?」
まあ、転生に対しての認識は宇髄も似たようなものだ。
錆兎も義勇も耀哉も自分も…そして煉獄も、皆、転生前の容姿そのままの姿で転生を繰り返している。
今回の炭治郎のような事例は初めてで、いまだに理由がわからない。
だからこちらも煉獄に声をかけるのをためらっていたのだと告げた。
「ただ、無惨は大正の最後の戦いで倒されている。
だから本当に月哉はなんでかわかんねえが炭治郎の姿で転生してきたらしい。
でも中身が月哉だからな。
ぎゆうに付きまとっていたんだが、俺と錆兎と実弥で返り討ちにして、今は現世で奴の祖父の神父に生まれた桑島爺が海外の奉仕活動に奴を連れて行ってるらしい」
と、簡単に説明した後、詳しい経緯を話して聞かせた。
そしてすべてを話し終わると、煉獄はむぅぅ~と唸って腕組みをして考え込む。
「それでは…竈門少年は本来転生をする資質を持っていたのに月哉に乗っ取られて消えてしまったということなのか…」
と、普段はキリリと上向きの眉が、へにょんと下がって八の字になった。
ああ、そう考えればそうなのか…と思うと、たとえ無惨が物理的に近くに居なくなったとしても、炭治郎と親しい人間からすればめでたしめでたしというわけでもないのだろう。
転生のシステムは正直わからないが、無惨が割り込んだせいで炭治郎の魂のようなものが消えてしまったのかと思えば、かなり複雑な気分になる。
その可能性にシン…と静まるテーブル。
そんな中で聞いていないようで聞いていたらしい。
口の中の物をもぐもぐごっくんと飲み込んだ義勇が言った。
──世の中同じ顔の人間は3人いるというから、炭治郎の中身も炭治郎な人間もどこかにいるんじゃないか?もしくは逆に容姿が入れ替わって無惨の顔をしているとか…
最初の発言でおおっ!と浮上して、次の発言で、うわぁ~と嫌な顔をする3人。
それをまとめて救い上げるように
「まあ差し迫っているわけでもなければ、何もわかっていない状態であれこれ考えても仕方がない。
とりあえず今は杏との再会を祝すところだな。
酒が飲めないのは残念だが、ジュースで祝杯としよう!」
と、錆兎がグラスを取っていうので、宇髄も不死川も煉獄も、それもそうかとグラスを手に取った。
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