前世からずっと一緒になるって決まってたんだ2_6協力者を得て

それは無惨が小学4年生の頃だった。

テレビでニュースをやっていた。
初老の男性が行方不明になったというものである。

その男性は息子がとある宗教団体にはまって家財を投じて入信後にその息子と連絡が取れなくなったということで、他にも多くいる同様の人達をまとめてその宗教団体に家族の返還要求をしている被害者の会の会長を務めていた人物だ。

当然そういう事情なのでまずその宗教団体の関与が疑われるが、証拠が全くない。

なので誘拐なのか事故なのかもわからないまま、疑惑が疑惑を読んで、ワイドショーが連日面白おかしく騒ぎ立てている。

無惨は小学生だったのでその男性が行方不明になるまでその件については知らなかったが、大人の間ではその前からすでに色々と取り沙汰されていたらしい。

と、そんな行方不明の男のことなど無惨にとってはどうでもいいことではあったが、問題はその宗教団体の名称だ。

その名も【万世極楽教】

そう、前世での部下が人間の頃から教祖をしていた新興宗教団体である。


前世の鬼狩りとの戦いでその部下も確かに死んだはずだったが、よもや奴も転生していたのか?…と思ったが、実際どうなのだろうか…

自分のことは覚えているだろうか…と、それが気になって、無惨は小遣いで切符を買ってこっそりと電車を乗り継いで、万世極楽教の教団事務所を訪ねる。

もちろん子どもがいきなり教祖に会わせてもらえるはずもないので、取次ぎに、──教祖様に無惨を覚えているか?と伝えてくれと自身の連絡先を告げてその日は帰った。


そしてその夜、なんと窓がノックされる。
無惨が窓に駆け寄ると、そこには前世のままの姿の童磨が微笑んでいた。

「お久しぶりです、無惨様。どこかで見たことのある姿なきがしますが…?」
と、炭治郎の姿の自分をきちんと無惨だと認識しているらしい。

そういう童磨に、
「ああ、前世で追い詰められた時に鬼狩りの一人と一時融合してな。
その時の影響でその鬼狩りの姿に転生したらしい。
それよりお前はどうしたんだ?
死んで転生してきたのではないのか?
鬼の能力を引き継いで転生してくるなんてことがあるのか?」
と、無惨が矢継ぎ早に聞くと、童磨は、あ~…と頭を掻いた。

「あの時俺は実は死ななかったんですよ。
正確には俺の一部が分裂して離脱して、そこから復帰したというか…。
ただ、小さな塊だったので、元の姿まで戻るのに時間がかかって、戻った時にはすべてが終わっていたので、教団へ戻ったんです。
おそらく…俺が分離した時に無惨様の力が鬼狩り達の薬とか諸々ですごく弱まっていたために、干渉を受けなくなったみたいで、無惨様が亡くなってもこうして生き残ってしまいました」


なるほど。
すごいタイミングだったということか…

「それでは鬼の頃の能力はほぼそのままということだな?」
と聞くと、童磨はにこりと頷いた。

「ええ、俺に関しては。
ただ、無惨様亡きあと、俺の血を与えても鬼にはできないようで、新たに鬼を増やせません。
昔話もできないし、なかなか退屈だったんですよね。
無惨様は…何か目指すところがおありのようで?
俺に協力できますか?」


鬼のままの力を持っているだけでなく、今生でも大勢の信者を抱えた新興宗教の教祖である童磨と、ただの小学生に転生した無惨。

前世とは違って立場や力の差が歴然としているにも関わらず、何故この男は自分に協力したいようなことを言うのだろうか…。

まあ、小学生の身でわざわざ教団を訪ねていったのだから、何か望みがあるのだろうと思うことは自然ではあるが…

いぶかし気な視線を童磨に向ける無惨に、彼はにこやかに言い放った。


「さっきも言った通り退屈なんですよ。
以前と違って本当に一人で長い時間生きてるんで。
それに…無惨様にはあの時鬼の体にしてもらった恩もありますしね」

こいつは感情が読めない男ではあるが、他意のない性格だということもまた知っている。

やりたいことがあろうと何もできない小学生の身となった自分の手足ができるならそれに越したことはないだろう。

もちろん世間で色々取り沙汰されている【万世極楽教】とのつながりが公になれば、一般人には避けられかねないし、それでせっかく今生は近くなっている義勇との距離があいてしまうのは困る。


「いいだろう。目的はある。
動いてもらう必要がある時は連絡する。
貴様に直接つながる連絡手段をよこせ」
無惨がそう言うと童磨は無惨の手にスマホを一つ握らせた。

「そうおっしゃられると思ってこれに俺の連絡先を登録しておきました。
俺は夜しか動けませんが、昼に動く必要がある時は信者に命じますから、なんなりと」
「うむ」

…と、こうして無惨はこの世でも十分な程度の手足を手に入れたのである。



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