病の床に臥すこともなく、寿命に怯えることもない。
唯一太陽の光と特殊な鋼でできた刀のみにより死の危険に晒されるので、まずは誰を遠ざけようとも如何ともしがたい太陽の光の克服に力を入れた。
そのために自らの血を与えることで下僕を増やし、太陽の克服に必要とされる“青い彼岸花”を探させる。
その報告を聞くこと、鬼となった自分とその下僕たちを執拗に殺そうとする産屋敷本家の血を引く人間たちとその一派との闘い。
それが無惨のライフワークとなった。
不思議なことに無惨とは違って耀哉は寿命で死ぬくせに、定期的に転生という形で蘇る。
鬼でもない人の身のくせにあいつは化け物かっ?!と、秘かに思っていたのだが、長い時を生きているうちにそれが実は耀哉だけではないということに無惨は気づいた。
転生した耀哉のそばには何故か天元も配下として転生している。
とすると……もしや、ぎゆうも?!
と、無惨は期待した。
最初の生では渡辺錆兎にかっさらわれたが、転生したとしたら奴にとられる前に抱え込んでしまえばいい。
あの頃と違って自分は鬼の頭領でそれを即実行できる力がある。
…と思ったのだが、甘かった。
非常に腹の立つことに、見つけたぎゆうのそばには常に、あの渡辺の男がいた。
ある時は親同士も親友で生まれた時から家族ぐるみの付き合いのある幼馴染、またある時は従兄弟同士など、見つけた時にはほぼ長い付き合いで心を通わせた状態で、無惨が割り込む余地などない。
それでも引き離せないかと画策しても、なぜか転生後も交流を持っている耀哉や天元も一緒になって阻止され続けた。
そもそもが、転生したぎゆうをみつけるたび、ぎゆうの心はいつも渡辺の錆兎の方へ向いている。
おのれ、錆兎!許さんぞ、憎き渡辺の子孫!!
最初の2回ばかりはそれでも頑張った。
手を変え品を変え、偶然を装ってぎゆうに近づいて歓心を買おうとしても、元々人慣れないぎゆうは警戒するばかり。
そして錆兎の後ろに逃げ込むのが常だった。
それでは気持ちは後回しにして…と攫ってみたのだが、なんとあっさり自害される。
そこで無惨は我に返った。
どうやっても手に入らぬ少年を前に初心を思い出したのである。
まずは死の原因になるものを取り除く…他のことは考えない。
一つ一つ確実に…
人は…というか、彼らは何度も転生を繰り返すらしい…とわかってしまえば、最初の目的である完全なる不死が果たされるまでは放置でもいいではないか。
二兎追うものは一兎をも得ず。
そう、二兎追うものは一兎をも得ずである。
それからは無惨は転生したぎゆうを探さなくなったし、目にとめても気にしないようにした。
そしてひたすらに配下を増やして“青い彼岸花”を探させる日々を送る。
鬼である以上人は喰らうが、それは生き物である以上しかたのないことだろう。
それこそ命を繋ぐ食糧として以上に、やれ競技としてなどと称して遊びで動物を殺す人間に、喰う分しか殺さない、逆に言えば殺したら喰う鬼の食事を悪などと言われたくはない。
人が喰うどころか戯れに殺す動物の数に比べたら、人より遥かに数の少ない鬼が喰う人の数など大した数ではないはずだ。
それでも自分は殺しても良くとも鬼はいかんとばかりに、耀哉をはじめとする人間たちはわざわざ鬼を追いかけまわして殺そうとしてくる。
ついには鬼を殺すためだけのその名も鬼殺隊などという組織を編成するほどだ。
そうなってくると無惨の第一の目的、生きること、生き延びることということも、容易いことではなくなってくる。
結果、そうと決意しなくとも、ぎゆうにかまけている時間はすぐに無くなった。
そうして鬼殺隊とのおいかけっこが始まる。
無惨にしてみれば、自分は耀哉にちょっかいをかけようなどとはしていないのに、耀哉の方はなぜここまで自分を追い回すのか本当にわからない。
生きるために鬼になった自分より、自分を意味なく追い回す耀哉を始めとする人間たちの方がよほど異常で頭がおかしいと思う。
もういいじゃないか。
自分は貴様らに関わらんのだから、貴様らも私にかまうな!
神に愛されず何も与えられない者がただひっそりと生き延びることを望むことすら許さないと言うのか?!
最初はそう思って逃げ回ったものの、相手が自分が生きている事を諦めてくれないのなら、相手の方を滅するしかない。
そう決意した無惨は仕方なしに強い鬼を作り造り始めた。
そして始まる人対鬼の戦い。
鬼は強いものの人は数が多い。
それで決着のつかぬまま、一時は継国縁壱という鬼の始祖である無惨すらまったく敵わぬ者が出たがそれも寿命で死んで900年ほど追いかけ追いかけられ殺し殺されを繰り返した末の大正時代。
やはりぎゆうが転生していたが、非常に珍しいことに錆兎がすでに死亡していた。
…が、それに喜んだのも一瞬で、肉体はなくともぎゆうの心はしっかりと掴み続けていたらしい。
錆兎の死亡後のぎゆうは人としての感情をほぼ失くしたような状態で、ただ生かされたことに対する義務感だけで生きているような状態だった。
そこにいたのは無惨が欲していた少年ではない。
容姿はぎゆうのものだったが、なによりきらきらと感情を表していた青い綺麗な目が死んだように光がなく、下手をすれば似た容姿の他人ではと思うほどで、耀哉の攻勢で余裕がなかったのもあるがそれをさしおいても手を伸ばしたいという気が起きなかった。
ということで、無惨的には大正時代は特に気合を入れて生き延びるために力をいれる時代だったはずなのだが、皮肉なことに、そんな時代であるのに勝負をかけてきた耀哉達に逆に追い詰められ…そしてとうとう生存という唯一の望みを手放しかけることになる。
生きたい…生き延びたいと足掻きながらも死にかけた無惨は、何も与えられず全てを諦めて望んだその願いすら、自分を傷つけ滅しようとする異常者達に奪われようとしていることに憤った。
自分が鬼の力を失い消滅したあとも、自分から全てを奪った耀哉や天元、そして神に愛され全てを与えられた渡辺錆兎と無惨が望んだにも関わらずその錆兎に奪われたぎゆうはこの時代の肉体が滅んだとしても、また転生を繰り返して何度も幸せな人生を送るのだろう。
せめてその人生にわずかばかりの障害を与えたい…自分ばかり不幸になるのだからそのくらいは…と、苛立ちと悲しみで最後の足掻きとばかりに飲み込んだ鬼殺隊の少年。
彼を新たな鬼の始祖として自分が生きた証、自分の意思を埋め込もうと融合しかけた時、逆に彼の記憶も無惨の中に流れてきた。
その後、彼は鬼殺隊の仲間の手で無惨と分離され、無惨は日の光に晒されて滅ぶことになったのだが、少年の中にあった無惨と同じ強い思いが彼と無惨を強固に結び付け、どうやら無惨の魂の一部がその少年の中に残ったらしい。
鬼としての体は消滅したので、少年が人間としての生を終えた瞬間にいったんは無惨も完全に消失した。
だが、そうして平安から一度として死を経験せずに長い時を生き続けた無惨が一度死を迎えたことで、何かが変わったらしい。
その後、気づけば思いがけないことが起こっていた。
鬼でもない人の身のくせにあいつは化け物かっ?!と、秘かに思っていたのだが、長い時を生きているうちにそれが実は耀哉だけではないということに無惨は気づいた。
転生した耀哉のそばには何故か天元も配下として転生している。
とすると……もしや、ぎゆうも?!
と、無惨は期待した。
最初の生では渡辺錆兎にかっさらわれたが、転生したとしたら奴にとられる前に抱え込んでしまえばいい。
あの頃と違って自分は鬼の頭領でそれを即実行できる力がある。
…と思ったのだが、甘かった。
非常に腹の立つことに、見つけたぎゆうのそばには常に、あの渡辺の男がいた。
ある時は親同士も親友で生まれた時から家族ぐるみの付き合いのある幼馴染、またある時は従兄弟同士など、見つけた時にはほぼ長い付き合いで心を通わせた状態で、無惨が割り込む余地などない。
それでも引き離せないかと画策しても、なぜか転生後も交流を持っている耀哉や天元も一緒になって阻止され続けた。
そもそもが、転生したぎゆうをみつけるたび、ぎゆうの心はいつも渡辺の錆兎の方へ向いている。
おのれ、錆兎!許さんぞ、憎き渡辺の子孫!!
最初の2回ばかりはそれでも頑張った。
手を変え品を変え、偶然を装ってぎゆうに近づいて歓心を買おうとしても、元々人慣れないぎゆうは警戒するばかり。
そして錆兎の後ろに逃げ込むのが常だった。
それでは気持ちは後回しにして…と攫ってみたのだが、なんとあっさり自害される。
そこで無惨は我に返った。
どうやっても手に入らぬ少年を前に初心を思い出したのである。
まずは死の原因になるものを取り除く…他のことは考えない。
一つ一つ確実に…
人は…というか、彼らは何度も転生を繰り返すらしい…とわかってしまえば、最初の目的である完全なる不死が果たされるまでは放置でもいいではないか。
二兎追うものは一兎をも得ず。
そう、二兎追うものは一兎をも得ずである。
それからは無惨は転生したぎゆうを探さなくなったし、目にとめても気にしないようにした。
そしてひたすらに配下を増やして“青い彼岸花”を探させる日々を送る。
鬼である以上人は喰らうが、それは生き物である以上しかたのないことだろう。
それこそ命を繋ぐ食糧として以上に、やれ競技としてなどと称して遊びで動物を殺す人間に、喰う分しか殺さない、逆に言えば殺したら喰う鬼の食事を悪などと言われたくはない。
人が喰うどころか戯れに殺す動物の数に比べたら、人より遥かに数の少ない鬼が喰う人の数など大した数ではないはずだ。
それでも自分は殺しても良くとも鬼はいかんとばかりに、耀哉をはじめとする人間たちはわざわざ鬼を追いかけまわして殺そうとしてくる。
ついには鬼を殺すためだけのその名も鬼殺隊などという組織を編成するほどだ。
そうなってくると無惨の第一の目的、生きること、生き延びることということも、容易いことではなくなってくる。
結果、そうと決意しなくとも、ぎゆうにかまけている時間はすぐに無くなった。
そうして鬼殺隊とのおいかけっこが始まる。
無惨にしてみれば、自分は耀哉にちょっかいをかけようなどとはしていないのに、耀哉の方はなぜここまで自分を追い回すのか本当にわからない。
生きるために鬼になった自分より、自分を意味なく追い回す耀哉を始めとする人間たちの方がよほど異常で頭がおかしいと思う。
もういいじゃないか。
自分は貴様らに関わらんのだから、貴様らも私にかまうな!
神に愛されず何も与えられない者がただひっそりと生き延びることを望むことすら許さないと言うのか?!
最初はそう思って逃げ回ったものの、相手が自分が生きている事を諦めてくれないのなら、相手の方を滅するしかない。
そう決意した無惨は仕方なしに強い鬼を作り造り始めた。
そして始まる人対鬼の戦い。
鬼は強いものの人は数が多い。
それで決着のつかぬまま、一時は継国縁壱という鬼の始祖である無惨すらまったく敵わぬ者が出たがそれも寿命で死んで900年ほど追いかけ追いかけられ殺し殺されを繰り返した末の大正時代。
やはりぎゆうが転生していたが、非常に珍しいことに錆兎がすでに死亡していた。
…が、それに喜んだのも一瞬で、肉体はなくともぎゆうの心はしっかりと掴み続けていたらしい。
錆兎の死亡後のぎゆうは人としての感情をほぼ失くしたような状態で、ただ生かされたことに対する義務感だけで生きているような状態だった。
そこにいたのは無惨が欲していた少年ではない。
容姿はぎゆうのものだったが、なによりきらきらと感情を表していた青い綺麗な目が死んだように光がなく、下手をすれば似た容姿の他人ではと思うほどで、耀哉の攻勢で余裕がなかったのもあるがそれをさしおいても手を伸ばしたいという気が起きなかった。
ということで、無惨的には大正時代は特に気合を入れて生き延びるために力をいれる時代だったはずなのだが、皮肉なことに、そんな時代であるのに勝負をかけてきた耀哉達に逆に追い詰められ…そしてとうとう生存という唯一の望みを手放しかけることになる。
生きたい…生き延びたいと足掻きながらも死にかけた無惨は、何も与えられず全てを諦めて望んだその願いすら、自分を傷つけ滅しようとする異常者達に奪われようとしていることに憤った。
自分が鬼の力を失い消滅したあとも、自分から全てを奪った耀哉や天元、そして神に愛され全てを与えられた渡辺錆兎と無惨が望んだにも関わらずその錆兎に奪われたぎゆうはこの時代の肉体が滅んだとしても、また転生を繰り返して何度も幸せな人生を送るのだろう。
せめてその人生にわずかばかりの障害を与えたい…自分ばかり不幸になるのだからそのくらいは…と、苛立ちと悲しみで最後の足掻きとばかりに飲み込んだ鬼殺隊の少年。
彼を新たな鬼の始祖として自分が生きた証、自分の意思を埋め込もうと融合しかけた時、逆に彼の記憶も無惨の中に流れてきた。
その後、彼は鬼殺隊の仲間の手で無惨と分離され、無惨は日の光に晒されて滅ぶことになったのだが、少年の中にあった無惨と同じ強い思いが彼と無惨を強固に結び付け、どうやら無惨の魂の一部がその少年の中に残ったらしい。
鬼としての体は消滅したので、少年が人間としての生を終えた瞬間にいったんは無惨も完全に消失した。
だが、そうして平安から一度として死を経験せずに長い時を生き続けた無惨が一度死を迎えたことで、何かが変わったらしい。
その後、気づけば思いがけないことが起こっていた。
Before <<< >>>Next (11月7日公開予定)
誤用なのか無惨様語なのか微妙なところですが一応「二兎追うものは一兎を追えず」→「二兎を追うものは一兎をも得ず」が通常かと思うのでご確認ください_(^^;)ゞ
返信削除毎回ありがとうございます😀
削除ミスです。修正しました。
また何か見つかりましたら宜しくお願いします。
無惨様あんまりお勉強熱心そうなキャラじゃないみたいなので転生後もそこそこみたいだったし( ´,_ゝ`)類君のように走った事なかったから...という可能性も有りかと思ってました。もう一ヶ所同じ言葉出てきてたので見つけたら報告します(^_^ゞ
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