「…宇髄…動物虐待はいかんぞ…」
と、みせられたメールに思い切り引く実弥と、思い切り眉を潜める錆兎。
ちなみに義勇の視界は錆兎が手で遮っているし、錆兎がそうする時点で義勇はそれを拒むことはせず、大人しく弁当を放り込まれた口をモグモグ動かしている。
それは今朝きたメールだった。
きっかけは錆兎が自宅に義勇を引き取った翌日、義勇のマンションに義勇の当座の荷物を取りに行くのに付き合った時に炭治郎に目撃されたらしく、宇髄が黒幕だったのか?というようなメールが義勇のスマホに届いたので、それに対して、自分のスマホから黒幕を名乗って、義勇から手を引けとメールを送ったことである。
その後、すぐ怒涛の怒りやら恨み言やらのメールが送られてくるも無視していたら、だんだんと内容がエスカレート。
嫌がらせのメールが来るのは想定の範囲内だったので、どうでも良いいつでも捨てられるアカウントで送ったのだが、それでも気持ち良いものとはいえない。
なにしろ送ってこられるメールは陰湿というのを通り越して陰惨で不気味だ。
今見せたメールに写真が添付されていて、それはどうやら何か黒魔術のようなものを行っているところを写したもののようだ。
床に描かれた魔方陣に首を切られた猫の遺体が乗っている。
本文は…【悪魔に身を売ってでも呪ってやる…覚悟しておけ…】である。
そしてどこからか調べたのかフェイスブックにもずっと『呪われろ…呪われろ…呪われろ…』というコメントが羅列。
朝学校にくると、やはり件の写真と共に呪われろ…の文字が並んだものを印刷した紙が下駄箱に入っている。
「なぁ…これってやばくねえかぁ?警察案件じゃね?」
と、一連を見終わったあと、実弥がさすがに青ざめて表情を固くする。
常軌を逸してんだろぉ、これ…という実弥の主張に、
「あ~、まあまともじゃねえなぁ」
と、同意しながらも、宇髄は
「でもまあ…もう少し様子見だ。俺にも色々考えがあるから、気にすんな。」
と、肩をすくめた。
そう…いきなり黒魔術系で来るとは思わなかったが、まあこの程度の嫌がらせは想定の範囲内だ。
気味が悪い…という他は今のところ実害はない。
第一…この程度の嫌がらせなら警察に訴えたところで、所詮ネット内の事でもあるし、様子見だろう。
変に小出しにして他からぬるい警告が入って、逃げられては元も子もない。
これらのメールが炭治郎からの物であるというのは、添付されてきた写真のExif情報から撮影した場所の位置情報が読み取れたので確認が取れているし、何かもう少し…小さな傷害でもなんでもいい。
刑事法に触れるような事をやらかしてくれれば、貯めておいた情報を全部揃えて証拠として差し出せる。
それまではジッと我慢の子だ。
さらに…少し気になることには、嫌がらせ以外に不思議なメールが来るようになった。
いわゆる密告メールと言うやつである。
こちらもおそらく捨てアドで、簡単に言うと炭治郎が宇髄を攻撃するのを手伝えと、自身が手下だと認定しているあたりを集めたLineグループに流してきたらしい。
しかし自分を始めとする大部分は、今までも炭治郎の攻撃の矛先が向くのが怖くて色々従っていたに過ぎず、もし宇髄が炭治郎と対峙するつもりなら、色々影から支援したいというものである。
信用は出来ない…と思う。
この申し出自体が罠な可能性もあるし、そうでなくても矛先が向くのが怖いから…という理由で黙って色々を黙認してきた相手だ。
こうして情報を流している事がバレたら、今度は炭治郎の機嫌を取るために偽情報を流しかねない。
(まあ…それでも利用しねえ手はねえか…)
メールには炭治郎のLineのログ。
そこには宇髄を初めとする自分の思い通りにならない相手に対する悪口や恨み事が延々と綴られており、最後に宇髄への呪詛と共に、嫌がらせに協力するような要請がなされている。
ほとんどが恨み事、愚痴、暴言で埋め尽くされたログを見れば、ああ、これでは見ている方も嫌にもなるだろうと思う。
グループのメンバーに対しても随分上から目線で辛らつだ。
一応密告者の本心としては、自分は安全な所で協力するから、宇髄が炭治郎をなんとか潰してくれないか、それによって炭治郎の支配を逃れられないかと期待しているという程度なのだろう。
そんな可能性を考えながら、結局はその申し出は受けておくことにする。
とりあえず、その情報によると、炭治郎は宇髄の自宅を調べたらしく、窓に殺した動物の血で落書きをする予定らしい。
折しも脅されたクラスメートから、脅されて住所を教えてしまったので気をつけて欲しいと詫びのメールが届いているので、嘘ではないと思う。
(阻止してもいいけど…まあやらせておいた方があとあと追い詰める材料にはなるな…)
などとこれから起こるであろう事も種明かしもわかってはいるので慌てることもない。
どうせ今の家は産屋敷のほうから提供されている借家なので、やらせるだけやらせて嫌になれば引っ越せばいいだけだ。
自前のマンションに住んでいる錆兎のほうに来られるよりはよほどいい。
そんなことを考えているうちに昼休みが終わり、義勇を囲むように一年の教室へ送っていくと、義勇のクラスの後ろのドアには炭治郎の姿。
義勇の頭の上からにやりと挑発するような笑みを浮かべてやれば、わかりやすく突き刺すような視線を向けられた。
基本的には義勇を自宅に保護している錆兎にターゲットが向けられないように3人で囲みつつも宇髄は彼のメインの恨みの目が自分に向くように務めることにしているので、こうした挑発もその一環である。
炭治郎はそれに見事に乗ってくれたようで、心の中で安堵した。
ポケットに手を突っ込んだ状態で、つかつかとこちらに歩いてくる炭治郎。
変に小出しにして他からぬるい警告が入って、逃げられては元も子もない。
これらのメールが炭治郎からの物であるというのは、添付されてきた写真のExif情報から撮影した場所の位置情報が読み取れたので確認が取れているし、何かもう少し…小さな傷害でもなんでもいい。
刑事法に触れるような事をやらかしてくれれば、貯めておいた情報を全部揃えて証拠として差し出せる。
それまではジッと我慢の子だ。
さらに…少し気になることには、嫌がらせ以外に不思議なメールが来るようになった。
いわゆる密告メールと言うやつである。
こちらもおそらく捨てアドで、簡単に言うと炭治郎が宇髄を攻撃するのを手伝えと、自身が手下だと認定しているあたりを集めたLineグループに流してきたらしい。
しかし自分を始めとする大部分は、今までも炭治郎の攻撃の矛先が向くのが怖くて色々従っていたに過ぎず、もし宇髄が炭治郎と対峙するつもりなら、色々影から支援したいというものである。
信用は出来ない…と思う。
この申し出自体が罠な可能性もあるし、そうでなくても矛先が向くのが怖いから…という理由で黙って色々を黙認してきた相手だ。
こうして情報を流している事がバレたら、今度は炭治郎の機嫌を取るために偽情報を流しかねない。
(まあ…それでも利用しねえ手はねえか…)
メールには炭治郎のLineのログ。
そこには宇髄を初めとする自分の思い通りにならない相手に対する悪口や恨み事が延々と綴られており、最後に宇髄への呪詛と共に、嫌がらせに協力するような要請がなされている。
ほとんどが恨み事、愚痴、暴言で埋め尽くされたログを見れば、ああ、これでは見ている方も嫌にもなるだろうと思う。
グループのメンバーに対しても随分上から目線で辛らつだ。
一応密告者の本心としては、自分は安全な所で協力するから、宇髄が炭治郎をなんとか潰してくれないか、それによって炭治郎の支配を逃れられないかと期待しているという程度なのだろう。
そんな可能性を考えながら、結局はその申し出は受けておくことにする。
とりあえず、その情報によると、炭治郎は宇髄の自宅を調べたらしく、窓に殺した動物の血で落書きをする予定らしい。
折しも脅されたクラスメートから、脅されて住所を教えてしまったので気をつけて欲しいと詫びのメールが届いているので、嘘ではないと思う。
(阻止してもいいけど…まあやらせておいた方があとあと追い詰める材料にはなるな…)
などとこれから起こるであろう事も種明かしもわかってはいるので慌てることもない。
どうせ今の家は産屋敷のほうから提供されている借家なので、やらせるだけやらせて嫌になれば引っ越せばいいだけだ。
自前のマンションに住んでいる錆兎のほうに来られるよりはよほどいい。
そんなことを考えているうちに昼休みが終わり、義勇を囲むように一年の教室へ送っていくと、義勇のクラスの後ろのドアには炭治郎の姿。
義勇の頭の上からにやりと挑発するような笑みを浮かべてやれば、わかりやすく突き刺すような視線を向けられた。
基本的には義勇を自宅に保護している錆兎にターゲットが向けられないように3人で囲みつつも宇髄は彼のメインの恨みの目が自分に向くように務めることにしているので、こうした挑発もその一環である。
炭治郎はそれに見事に乗ってくれたようで、心の中で安堵した。
ポケットに手を突っ込んだ状態で、つかつかとこちらに歩いてくる炭治郎。
そして義勇には目もくれず、宇髄の側で一瞬立ち止まり
――…調子乗ってたら怖い目をみるぞ
――…調子乗ってたら怖い目をみるぞ
と、小声で一言。
手を突っ込んだポケットからチキチキ音がするのは、おそらくカッター音だろうか…。
「…おお、怖ぇなっ」
と、わざとおどけておおげさに肩をすくめれば、チキッと止まる音。
炭治郎の手の動きを察して、宇髄は急所をカバーしようと反応しかけ、錆兎がフォローしようと動きかけるが、動揺したように視線を泳がせる義勇がピタリと止めた目線の先を追った実弥が
「あ~、山ちゃん、ちょい待ってくれ!」
手を突っ込んだポケットからチキチキ音がするのは、おそらくカッター音だろうか…。
「…おお、怖ぇなっ」
と、わざとおどけておおげさに肩をすくめれば、チキッと止まる音。
炭治郎の手の動きを察して、宇髄は急所をカバーしようと反応しかけ、錆兎がフォローしようと動きかけるが、動揺したように視線を泳がせる義勇がピタリと止めた目線の先を追った実弥が
「あ~、山ちゃん、ちょい待ってくれ!」
と、いち早く反応して声をかけたところで、さすがに教師の見ている所ではまずいと思ったのだろう。
炭治郎の手が完全に止まってポケットから出て、彼が舌打ちをしながら立ち去ったところで、宇髄以外の3人がホ~っと息を吐き出した。
──さすが義勇…目が良いなぁ…
と、まず義勇を褒める錆兎。
その視線の先に気づいて行動した実弥にも、炭治郎をとりあえず自分にひきつけておいた宇髄にも一言もなくこれなのは、もう通常運転なので気づかないフリをする。
実弥も昼休みの諸々で、そのあたりは指摘をすれば100倍になって返ってくることをさすがに学んだらしくスルー。
こうして何事もなく短い休み時間が終わり、チャイムと共に2年の自分達の教室に3人揃ってダッシュした。
「…なんか…もう宇髄、かなり本気でやばくねぇかぁ?」
走りながら、なんのかんので気遣いの人間である実弥がさきほどの一件について眉を寄せる。
人間(自分達に関して)は悪口では死なない…ということが共通認識で、誹謗中傷の類で収まっているうちはまあ良いかと思っていたが、刃物がでてくるようなら話は別だ。
権力のある大人を介入させたほうがいいんじゃないか…と、暗に提案しているその言葉に、宇髄はまだそこまでではないと、それを否定した。
「あ~、大丈夫だ。
よほど刺激しねえ限りある程度他人のいるところでは仕掛けてこねえよ。
必死に他者からの評判気にしてっからな。
教師とかの前で印象悪くすんのが嫌だからさっきも引いたんだろうし?」
そのあたりについては例の密告者から情報が来ている。
いつも人がいなさそうな所で今は宇髄の中傷をしているが、教師に注意されると途端にひどく反省したようなフリで謝罪をして、しかしさらに見つからないような裏で中傷を繰り返すらしい。
――あいつの反省ってのは、中傷をしたことではなされなくて、それを影響力があるまともな相手に指摘されて自分の評価が落ちる事でされるんです。だから注意されたって、さらに見つからなそうなところを探して繰り返すんっすよ。
というのは、おそらく中傷についてだけではない。
物理的な嫌がらせについても当てはまるだろうから、余計に完全に追い詰められる材料が揃うまでは、周りにもちょっかいをかけて炭治郎を警戒させて欲しくはない。
さらに奥にこもられるとやっかいだ。
まあ…今日行われるであろうことを考えると本気で憂鬱なのだが…。
(落書きによる器物破損…じゃ、偶発じゃなく計画的な悪意の証拠の1つにはなっても、追い込むには弱えよなぁ…)
ガリガリと頭をかきながら、宇髄はため息をついた。
そして、いっその事、さっきカッターで切りつけでもしてくれてたら、一挙解決だったのかも…などと、義勇あたりが聞いたら卒倒しそうな物騒な事を思う。
とにかく挑発し続けて尻尾を出させなければ……宇髄がそんなことを考えているうちに、あっという間に一日が過ぎ、無事放課後に。
念のため尾けられていないかをチェックするため宇髄が遠目に炭治郎を見張っているうちに、錆兎と…カモフラージュに実弥も一緒に義勇と帰っていく。
まあ密告者の情報によると炭治郎は今日宇髄の家に嫌がらせにくるらしいから、その準備に(?)忙しいだろうし、義勇にばかりかまってもいられないだろうが…。
こうして親友二人と後輩を見送ったあと、一人で帰る帰り道。
後ろからキツイ視線を感じるが、無視だ。
校門を出て駅の改札をくぐり、ホームに着くとちょうど来た電車に飛び乗る。
そこでようやく途切れる視線に、は~っと力を抜く。
「…あ~、思ったより疲れるなぁ、こりゃあ。」
炭治郎の手が完全に止まってポケットから出て、彼が舌打ちをしながら立ち去ったところで、宇髄以外の3人がホ~っと息を吐き出した。
──さすが義勇…目が良いなぁ…
と、まず義勇を褒める錆兎。
その視線の先に気づいて行動した実弥にも、炭治郎をとりあえず自分にひきつけておいた宇髄にも一言もなくこれなのは、もう通常運転なので気づかないフリをする。
実弥も昼休みの諸々で、そのあたりは指摘をすれば100倍になって返ってくることをさすがに学んだらしくスルー。
こうして何事もなく短い休み時間が終わり、チャイムと共に2年の自分達の教室に3人揃ってダッシュした。
「…なんか…もう宇髄、かなり本気でやばくねぇかぁ?」
走りながら、なんのかんので気遣いの人間である実弥がさきほどの一件について眉を寄せる。
人間(自分達に関して)は悪口では死なない…ということが共通認識で、誹謗中傷の類で収まっているうちはまあ良いかと思っていたが、刃物がでてくるようなら話は別だ。
権力のある大人を介入させたほうがいいんじゃないか…と、暗に提案しているその言葉に、宇髄はまだそこまでではないと、それを否定した。
「あ~、大丈夫だ。
よほど刺激しねえ限りある程度他人のいるところでは仕掛けてこねえよ。
必死に他者からの評判気にしてっからな。
教師とかの前で印象悪くすんのが嫌だからさっきも引いたんだろうし?」
そのあたりについては例の密告者から情報が来ている。
いつも人がいなさそうな所で今は宇髄の中傷をしているが、教師に注意されると途端にひどく反省したようなフリで謝罪をして、しかしさらに見つからないような裏で中傷を繰り返すらしい。
――あいつの反省ってのは、中傷をしたことではなされなくて、それを影響力があるまともな相手に指摘されて自分の評価が落ちる事でされるんです。だから注意されたって、さらに見つからなそうなところを探して繰り返すんっすよ。
というのは、おそらく中傷についてだけではない。
物理的な嫌がらせについても当てはまるだろうから、余計に完全に追い詰められる材料が揃うまでは、周りにもちょっかいをかけて炭治郎を警戒させて欲しくはない。
さらに奥にこもられるとやっかいだ。
まあ…今日行われるであろうことを考えると本気で憂鬱なのだが…。
(落書きによる器物破損…じゃ、偶発じゃなく計画的な悪意の証拠の1つにはなっても、追い込むには弱えよなぁ…)
ガリガリと頭をかきながら、宇髄はため息をついた。
そして、いっその事、さっきカッターで切りつけでもしてくれてたら、一挙解決だったのかも…などと、義勇あたりが聞いたら卒倒しそうな物騒な事を思う。
とにかく挑発し続けて尻尾を出させなければ……宇髄がそんなことを考えているうちに、あっという間に一日が過ぎ、無事放課後に。
念のため尾けられていないかをチェックするため宇髄が遠目に炭治郎を見張っているうちに、錆兎と…カモフラージュに実弥も一緒に義勇と帰っていく。
まあ密告者の情報によると炭治郎は今日宇髄の家に嫌がらせにくるらしいから、その準備に(?)忙しいだろうし、義勇にばかりかまってもいられないだろうが…。
こうして親友二人と後輩を見送ったあと、一人で帰る帰り道。
後ろからキツイ視線を感じるが、無視だ。
校門を出て駅の改札をくぐり、ホームに着くとちょうど来た電車に飛び乗る。
そこでようやく途切れる視線に、は~っと力を抜く。
「…あ~、思ったより疲れるなぁ、こりゃあ。」
誰にともなく小さくつぶやくと、宇髄は珍しく座席に座って背もたれに身体を預けて足を投げ出した。
疲れはするものの、全ては計画通りだ…頑張れ。
心の中で自分を叱咤激励しつつ気合を入れなおす宇髄。
しかし夜…事態が思わぬ方向から動き出して行くことを、さすがの宇髄もこの時は予想だにしていなかった。
疲れはするものの、全ては計画通りだ…頑張れ。
心の中で自分を叱咤激励しつつ気合を入れなおす宇髄。
しかし夜…事態が思わぬ方向から動き出して行くことを、さすがの宇髄もこの時は予想だにしていなかった。
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