前世からずっと一緒になるって決まってたんだ1_18参戦プラス2+1

そして翌日…まだ薄暗い中、義勇を伴ってマンションの前に行くと、いきなり迎えに来たのは黒塗りの高級車。
窓はスモークがかかっていて中は見えない。


その後部座席のドアを開けて出てきた宇髄に、

「…なんかヤのつく自由業のようだよな……」
と思わず錆兎がつぶやくと、車に乗ったままの実弥が

「違いねえ」
と、笑った。


当の宇髄は

「お前な~、せっかく迎えに来てやった優しい天元様に何を言いやがる」
と、錆兎の頭にこつんと軽く拳骨を落とすが、

「どうせ耀哉からの借り物だろ?」
と錆兎が言うと、

「あ~、まあな。錆兎に助けが必要なら協力してやれってよ」
と、肩をすくめる。


ともあれ、

「とりあえず…奴が張る前にすませたほうがいいだろ。
早く行こうぜ」
と、そんなやりとりをしながらも宇髄に促されて錆兎と義勇も車に乗り込んで、車は義勇のマンションへ向かって走り出した。



こうしてマンションへ着くと宇髄の指示で錆兎と不死川は車に待機。
義勇と宇髄がマンション内へと入っていく。

その後しばらくすると義勇がまとめた荷物を共に手にしながら宇髄と義勇が戻ってきた。
そして車に乗ってドアを閉めると、宇髄はおもむろに手にした袋をかざす。


「なんだぁ?それは」

固いものがぶつかり合うような音に錆兎は察して口をつぐむが、止める間もなく疑問を口にした不死川の言葉に、宇髄が

「玄関にあった隠しカメラ。
普通の部屋はたぶんしょっちゅう掃除するだろうしものの移動も激しいから見つかると思って、靴以外のものは比較的動かさない玄関にだけ置いて、他は外から頑張って覗いてたんだろうな。その代わりに寝室には盗聴器があった」
と、答えたその言葉に一気に青ざめる義勇。

「大丈夫!これからは俺の部屋で俺がずっと一緒に居るからな」
と、錆兎が庇うように抱きしめると、義勇もぎゅっと抱きしめ返してくる。

それを零れ落ちそうな勢いで目を丸くして凝視する不死川と、当たり前に眺めている宇髄。


念のため車を追って錆兎のマンションまで尾けてこられないように遠回りをしながら戻る途中、しばらく静かだった義勇のスマホがメールの着信を告げた。

それを義勇に見えないように開く錆兎。
そして少し眉を寄せて苦笑すると、黙って宇髄に見せた。

そこに添付されているファイルを開くと、イスカリオテのユダの画像。


そしてメールの内容は

『俺はいつも影に日向に義勇さんに尽くしてきたつもりです。
なのにその結果がこんな風なユダのごとき裏切りで一度も恨まなかったといえば嘘になりますけど、今は義勇さんのことは恨んでません。

黒幕は宇髄さんだったんですね…。
義勇さん、騙されているんです。おそらく錆兎も騙されているだけだと思います。
目を覚ましてください。
本当に…あの人は俺に対してひどく悪意を持った信用できない人間なんです。

恨んでも恨んでも恨み足りない…呪って呪って呪って…呪い殺しても飽き足りない…』

「怖ぇなぁ、おい」
と、横からそれを覗き込んだ不死川も苦笑した。


宇髄はと言うと、不安げな顔を向けてくる義勇になんでもないことのように笑って

「あ~、さっき俺が一緒に行っただろ?
隠しカメラとか解除する時に姿見られてるから、俺が黒幕だったのか…騙されんな、みてえな内容のメールだから錆兎も実弥も笑ってるってわけだ」
と伝えてやる。

イスカリオテのユダうんぬんなどというものまで見せれば確実にメンタルにダメージを負うであろう義勇を気遣ってのその宇髄の言葉に、錆兎は秘かに感謝をした。

もちろん巻き込まれてくれていることにも感謝をしているが、宇髄からすれば義勇のことがなかったとしても巻き込まれる気は満々だったし、わざわざカメラがあるであろう場所に錆兎ではなく自分が行ったのは、義勇のフォローと護衛で忙しくなるであろう錆兎に負担をかけず、相手の矛先を自分に向けるためなので、このメールの炭治郎の認識は本望である。


「まあ、これからだが…実弥は義勇と同学年の玄弥に義勇が錆兎んとこに泊まってるってことは伏せた上で、ストーカーにあっててまいってること、錆兎と義勇が付き合っていて仲睦まじいってことを1年の間に出来るだけ広めさせろ。
ストーカーに関しては個人名出すと厄介だし、みなだいたい想像はつくだろうから、実名は出すなよ?

俺は派手に動いてせっかくそう思ってくれてんなら俺が黒幕で錆兎は協力者くらいに思われた方が楽だな。

だから錆兎は全くというのは無理だが、極力目立つな。
炭治郎を追い詰めるめどが立つまでは俺がひきつけるから」


実際、この手の駆け引きは自分が一番向いているし…と宇髄は仲間にそう根回しをしつつ、義勇のスマホから入手したメルアドに1本のメールを打っておく。


タイトルは

──黒幕より──

本文は2行だけ…

『義勇はすっげえ迷惑してる。
いい加減手を引け』


(さあて、これで標的は俺んとこに向いてくれるかねぇ)
メールを送信し終わると、宇髄は鼻歌交じりに自分のスマホをポケットに突っ込む。


自分でも性格が悪いとは思うが、平安時代からずっと暗躍し、画策し、戦い続けた宇髄には平和で何も問題のない現代は少々退屈すぎた。

だから錆兎達には悪いが、今回の諸々は少し楽しい。


まあ…その代わり悪いことにならねえようにきっちり責任を持って巻き込まれてやるからよ。

ぐるりぐるりと回って辿りついた錆兎のマンションで仲良く手を繋いで降りる二人を見送って、宇髄はもう一人、現代で微妙に退屈しているのか宇髄と同様に巻き込まれる気満々の主に現状報告のメールを送った。


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