なにしろ隣に夢にまでみた錆兎がいる。
いや、居るだけではない。
ちゃんと義勇のことを認識しているどころか、笑顔を向けて言葉をかけて、色々気遣ってさえくれるのだ。
さりげなく話題にして知ったことだが、宇髄と不死川は錆兎と同じく義勇の学校の系列校の出身で、幼稚舎からの幼馴染らしい。
というか、むしろ錆兎達が通っていた学校のほうが本校で、そちらは少人数で英才教育をすることで有名な進学校だ。
その本校よりは若干緩やかな系列校が2校あり、そのうちの1校が義勇の通っていた学校である。
ちゃんと義勇のことを認識しているどころか、笑顔を向けて言葉をかけて、色々気遣ってさえくれるのだ。
さりげなく話題にして知ったことだが、宇髄と不死川は錆兎と同じく義勇の学校の系列校の出身で、幼稚舎からの幼馴染らしい。
というか、むしろ錆兎達が通っていた学校のほうが本校で、そちらは少人数で英才教育をすることで有名な進学校だ。
その本校よりは若干緩やかな系列校が2校あり、そのうちの1校が義勇の通っていた学校である。
錆兎の通っていた本校の方は文武両道…ということで、何かしら勉学だけではなく結果を出している生徒が多く、錆兎は小学校の頃から剣道の全国大会の連続優勝者だし、宇髄は絵画コンクールでいくつも入賞し、不死川はなんと小学校5年生で数学検定1級を取った数学の天才らしい。
そんなとてつもない実績を、まるで習い事の一つを話すかのように話す錆兎。
実際、本校から来た生徒にとっては、そんな一芸に秀でているのは当たり前で、習い事を語るのと変わらない認識なのかもしれないが…
しかも3人そろって小学校4年から中学3年まで、本校で児童会、生徒会の役員を勤め上げ、成績もいつもトップ3。
錆兎、宇髄、不死川の順らしいが、それも錆兎に言わせると、
『俺は試験前1週間は部活も休みだからその期間はもちろんのこと、普段から必死に勉強もしてるんだけどな、宇髄はやってない。
本当に試験前日でも平気で絵を描いててそれだから、たぶんあいつが本気で勉強すれば軽く抜かされる。
本当に試験前日でも平気で絵を描いててそれだから、たぶんあいつが本気で勉強すれば軽く抜かされる。
ただ…まあ、本人曰く、
俺ほど真面目にコツコツやるということに向いてない人間はいねえし、そういう才能がないから一生やることはないし、たぶん出来ねえ…だそうだ。
で、不死川は他は良いんだけどな、国語が絶望的にだめな奴で…
漢字はまだいいんだけどな、文章系の問題については、
他人がその時何を思ったかなんて本人以外わかるわけねえだろっ!ましてやオオサンショウウオやら小魚やらが何を思ったかなんて人間様にわかってたまるかっ!…だそうだ』
俺ほど真面目にコツコツやるということに向いてない人間はいねえし、そういう才能がないから一生やることはないし、たぶん出来ねえ…だそうだ。
で、不死川は他は良いんだけどな、国語が絶望的にだめな奴で…
漢字はまだいいんだけどな、文章系の問題については、
他人がその時何を思ったかなんて本人以外わかるわけねえだろっ!ましてやオオサンショウウオやら小魚やらが何を思ったかなんて人間様にわかってたまるかっ!…だそうだ』
などという話を本人達の口真似を真似て語るものだから、思わず噴出してしまう。
ああ、なんだか宇髄も不死川も今生でも前世とは別の意味ですごい人間らしいが、義勇が前世で知っている彼らと本質は変わっていないようでなんだか懐かしくなった。
錆兎の両腕に庇われたままそんな楽しい話を聞いていると、普段は長い満員電車の時間もあっという間に過ぎ、二人並んで最寄り駅から徒歩10分ほどの道をまた、色々話しながら歩く。
それはとてもとても楽しくも幸せな時間で、校門が見えてきた時にその時間の終わりが少し残念に思えたのだが、校門をくぐった時に校庭に見えた光景に、義勇はそれどころではなくなってパニックを起こしそうになった。
学校に着くと何故か校庭に炭治郎が立っていた。
え?え?俺より遅く来たはずだよな?何故?!!
と、ひたすらに動揺する義勇の肩を
──大丈夫だ。まかせておけ
と、大きく頼もしい錆兎の手が軽く叩く。
そうして義勇を背に隠すように、どこか怒ったような顔の炭治郎のほうへ一歩歩み寄ると
「おはよう、炭治郎。今日は早いな」
と、何事もなかったように笑顔で軽く手をあげた。
学校に着くと何故か校庭に炭治郎が立っていた。
え?え?俺より遅く来たはずだよな?何故?!!
と、ひたすらに動揺する義勇の肩を
──大丈夫だ。まかせておけ
と、大きく頼もしい錆兎の手が軽く叩く。
そうして義勇を背に隠すように、どこか怒ったような顔の炭治郎のほうへ一歩歩み寄ると
「おはよう、炭治郎。今日は早いな」
と、何事もなかったように笑顔で軽く手をあげた。
それにヒクリと引きつった笑みを浮かべる炭治郎。
だが、そんな錆兎の挨拶はスルーして、その後ろに隠れるように立っている義勇に視線を送る。
だが、そんな錆兎の挨拶はスルーして、その後ろに隠れるように立っている義勇に視線を送る。
そして
「義勇さん、今日はどうしたんです?
家の前で待ってたのに、置いてきぼりはひどいですよ。
あの電話のあと、俺、タクシー拾っちゃいました」
と、ゆっくりと歩み寄ってきた。
まるで錆兎のことなど目に入らないかのように義勇にそう言う笑顔が怖い。
確かに炭治郎は前世から他人の話を聞かない人間だったが、他人を無視するとかそういうタイプではなかった。
今生の炭治郎はなんというか…気配も無く気づけばじぃぃっと後ろで見張っていて、じわり、じわりと距離を詰めてくるような、そんな粘着質な執着を感じる。
元弟弟子にそういう言い方はしたくないが、例えるなら気味の悪い妖怪に取り憑かれたような気分だ。
――なぜ…そこまでやるんだ…
と、小声で漏らす義勇の声は震えている。
今回の炭治郎のその行動にぞおぉっと背筋に薄ら寒いものを感じて、義勇は思わずぎゅっと錆兎の上着の背を掴んだ。
そんな義勇に気づいて、錆兎は少し後ろの義勇を振り返って、大丈夫だぞ、とでも言うように優しく笑う。
そうして再度前を向いた。
「炭治郎、すまないが義勇が怯えてるから、少し距離を置いてやってくれないか?
義勇に言わせると毎朝お前に家に迎えに来られるのも困るらしい」
飽くまで穏やかに錆兎がそう切り出すと、炭治郎は初めて錆兎に視線を向けた。
「いったい何なんですか?錆兎には関係ないでしょう。
どいて下さい。俺は義勇さんと話しをしているんです」
静かに切り出す錆兎とは対照的に炭治郎の方はイライラを隠すことなくそう答える。
それに錆兎は苦笑した。
凛々しい太目の眉が八の字を描き、口元が困ったように笑みの形を作る。
「義勇はそうやって問い詰められることを嫌がってるから、やめてやってくれないか?
で、すまんな、俺も無関係ではない。
…何なのかと言われると、義勇の恋人なんだが…」
「はあ??」
その言葉に炭治郎は大きく目を見開いた。
「なにを…言ってるんですか……」
と、信じられない…と言った風にやや呆然と続ける炭治郎に、錆兎はやはり少し困った風に…しかし、きっぱりと
「ああ、色々あってな。付き合うことにしたんだ。
だからこれからは俺が毎朝迎えに行くし、義勇は俺と登校するから」
と、宣言する。
その錆兎の言葉に炭治郎はさらに大きく目を見開いて、錆兎の後ろの義勇に視線を向けた。
それに気づいた義勇はやはり錆兎の後ろに隠れたまま、顔だけぴょこんと出して
「ああ、本当だ。
いつも来ないでくれと言っているが、これからは本当に来られても困るから来ないでくれ」
と、錆兎の言葉が真実であると同意する。
そこで初めてそれを事実として認識したらしい。
それからはすごい応酬になった。
「何故俺の義勇さんに手を出すんですっ?!
俺の想い人だと知ってますよね?!
同級生の恋愛相手に手を出すって、ずいぶんじゃないですかっ!!」
「両思いで付き合っているならな。
百歩譲って相手がニュートラルな状態ならまだしも、義勇は本当に困っていたからな。
助け守ってやりたいと思うのが人情だ。
そもそもお前のものではないだろう」
「幼稚舎の頃からずっと俺のですっ!
ふざけるなっ!!」
静かに淡々と言う錆兎と激昂する炭治郎。
元弟弟子にそういう言い方はしたくないが、例えるなら気味の悪い妖怪に取り憑かれたような気分だ。
――なぜ…そこまでやるんだ…
と、小声で漏らす義勇の声は震えている。
今回の炭治郎のその行動にぞおぉっと背筋に薄ら寒いものを感じて、義勇は思わずぎゅっと錆兎の上着の背を掴んだ。
そんな義勇に気づいて、錆兎は少し後ろの義勇を振り返って、大丈夫だぞ、とでも言うように優しく笑う。
そうして再度前を向いた。
「炭治郎、すまないが義勇が怯えてるから、少し距離を置いてやってくれないか?
義勇に言わせると毎朝お前に家に迎えに来られるのも困るらしい」
飽くまで穏やかに錆兎がそう切り出すと、炭治郎は初めて錆兎に視線を向けた。
「いったい何なんですか?錆兎には関係ないでしょう。
どいて下さい。俺は義勇さんと話しをしているんです」
静かに切り出す錆兎とは対照的に炭治郎の方はイライラを隠すことなくそう答える。
それに錆兎は苦笑した。
凛々しい太目の眉が八の字を描き、口元が困ったように笑みの形を作る。
「義勇はそうやって問い詰められることを嫌がってるから、やめてやってくれないか?
で、すまんな、俺も無関係ではない。
…何なのかと言われると、義勇の恋人なんだが…」
「はあ??」
その言葉に炭治郎は大きく目を見開いた。
「なにを…言ってるんですか……」
と、信じられない…と言った風にやや呆然と続ける炭治郎に、錆兎はやはり少し困った風に…しかし、きっぱりと
「ああ、色々あってな。付き合うことにしたんだ。
だからこれからは俺が毎朝迎えに行くし、義勇は俺と登校するから」
と、宣言する。
その錆兎の言葉に炭治郎はさらに大きく目を見開いて、錆兎の後ろの義勇に視線を向けた。
それに気づいた義勇はやはり錆兎の後ろに隠れたまま、顔だけぴょこんと出して
「ああ、本当だ。
いつも来ないでくれと言っているが、これからは本当に来られても困るから来ないでくれ」
と、錆兎の言葉が真実であると同意する。
そこで初めてそれを事実として認識したらしい。
それからはすごい応酬になった。
「何故俺の義勇さんに手を出すんですっ?!
俺の想い人だと知ってますよね?!
同級生の恋愛相手に手を出すって、ずいぶんじゃないですかっ!!」
「両思いで付き合っているならな。
百歩譲って相手がニュートラルな状態ならまだしも、義勇は本当に困っていたからな。
助け守ってやりたいと思うのが人情だ。
そもそもお前のものではないだろう」
「幼稚舎の頃からずっと俺のですっ!
ふざけるなっ!!」
静かに淡々と言う錆兎と激昂する炭治郎。
炭治郎の言い分を聞いていると、まるで錆兎が横恋慕したように周りに思われるのでは…と、急に不安になる義勇だが、そんな義勇の不安を汲むように、錆兎は義勇にだけ辛うじて聞こえるくらいの小声で
──大丈夫。周りとはこれで人間性を疑われるような付き合いはしてきてはいない。
と言う。
ああ!さすが俺の錆兎!!
と、義勇はそれを聞いて、そんなことを思っている場合ではないのに感動してしまう。
そうだ、いつだって錆兎はカッコいいし、優しいし、強いし、賢いし、カッコいい!!
そんなことは日が東から昇って西に落ちるくらいには当たり前のことだ。
そんな風に義勇がキラキラした目を錆兎に向けていると、そんな錆兎の言うところの“周り”の一人なのだろう。
後ろから
「お~。なんか揉めてる最中かぁ?」
と、聞きなれた声がした。
──大丈夫。周りとはこれで人間性を疑われるような付き合いはしてきてはいない。
と言う。
ああ!さすが俺の錆兎!!
と、義勇はそれを聞いて、そんなことを思っている場合ではないのに感動してしまう。
そうだ、いつだって錆兎はカッコいいし、優しいし、強いし、賢いし、カッコいい!!
そんなことは日が東から昇って西に落ちるくらいには当たり前のことだ。
そんな風に義勇がキラキラした目を錆兎に向けていると、そんな錆兎の言うところの“周り”の一人なのだろう。
後ろから
「お~。なんか揉めてる最中かぁ?」
と、聞きなれた声がした。
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