温泉旅行殺人事件_Ver錆義7_事情聴取

その時…

「大変ですっ!!!」
各部屋を念のためにと確認しにいった従業員が顔面蒼白で戻って来た。

「小澤様が殺されてますっ!!」

再度フロントがその旨を警察に連絡して、花火を見物していた宿泊客も安全のため母屋へと集合させられた。

やがて警察が到着。
従業員が事情を説明している。


宿泊客が殺された?

それと義勇達がいなくなったのと何か関係があったら…変な物を目撃してたとしたら…


とりあえず従業員から事情を聞き終わると、事件の関連性もあるということで炭治郎と義勇の事について錆兎と善逸も事情を聞かれる事になった。
善逸が主にいなくなった時の状況を説明し、錆兎がペンダントの事を説明する。

その後…宿についてから遺体が発見された840分までのアリバイを聞かれた。


正直…もうそんな物はどうでも良かった。

死んだものは生き返るわけじゃないっ!先に義勇達を探してくれっ!!と喉まで出かかって、飲み込む。

とりあえず…いったん取り調べに使っている部屋から出されて、ロビーへ。
そこに集合している他の宿泊客のざわめきがなんだか気に触る。


「錆兎…大丈夫?」
心配する善逸の声すら煩わしい。
頭に血がのぼって冷静に頭が働かない。

「今…話しかけないでくれ…頼むから」

平静さを失うあまり、刺激されると絶対に口にしてはいけないような事を口走りそうで、錆兎は善逸にそう言った。

夏休みの出会うきっかけになった事件から実に5回めの殺人事件。

そのうち義勇が連れ去られなかったのは直前の宇髄の別荘のものだけで、今回も含めて4回も義勇を連れ去られている。

自分的に気合を入れて守っているはずなのに、詰めが甘すぎるのだろうか

よもやその身を預けておいた炭治郎ごと攫われるとは思っても見なかった。

今までと違って1人ではないから、少なくとも“生きているうちは”義勇のことは炭治郎がかばってくれるだろうし、心細さも少し緩和されるかもしれないが、それも本当に二人揃って“生きている”うちだ。

義勇が殺されるなんて論外だが、義勇が生きていたとしても目の前で友人である炭治郎が殺されたりすれば、ひどくショックを受けるだろう。
それも絶対に避けたい。

もちろん、義勇自身が殺されたりすることがあった日には、自分とて生きてはいない。
後を追う気は満々だ。

本当に本当になんで自分はあの時自分以外に預けて義勇から離れてしまったんだろう。
何か変わったイベントだったり旅行だったりの時は何故か色々起きるということは、もう嫌というほど経験していたはずなのに

そこで気をつけて離れない様にしていればこんな事には…


まだ露天からの帰り道に繋いだ少し冷たい手のぬくもりが残っている気がした。

もし…事件に巻き込まれてさらわれたとしたら…生かされている可能性は極めて低くなる…

あの幸せなぬくもりを永遠に失ったのかも知れない。
そう考えた途端また強烈な吐き気と息苦しさにみまわれる。

「鱗滝さん、ちょっとお聞きしたい事があるので、もう一度いらして頂けますか?」
ふいにまた警察官が錆兎を呼びに来た。

「俺も…一緒じゃダメですか?」
血の気が失せて真っ青で今にも倒れそうな錆兎を心配して善逸が聞くが、
「申し訳ありませんが…」
と、倒れそうな錆兎を抱える様にして警察官が中へと連れて行った。



「何度も申し訳ありません、おかけ下さい」
言われて錆兎は椅子にかける。

「行方不明の二人は…みつかりましたか?」
かすれた声で聞く錆兎に、捜査官は
「残念ながらまだ…。しかしかなりの人数を動員して現在捜索中です」
と首を横に振った。

「そう…ですか」
もうそれでここで何を話しても仕方ない気になる錆兎だったが、向こうはそうではない。
当たり前だが本題に入ってくる。


「鱗滝さんは19:30前、冨岡さんが露天風呂に忘れ物を取りに行かれたのに付き添ったという事ですが…その際、冨岡さんはご自身の忘れ物の他に何か拾われたとかそういう話はなさってませんでしたか?」

捜査官の質問に錆兎はその時のやりとりを思い出すが、義勇が何か言っていたという記憶はない。
しかしそれがまさか今義勇がさらわれたのと関係するのだろうか?

「それが…冨岡が行方不明になったのと何か関係しているんですか?」
答えてくれないだろうな…と思いつつ聞いてみると、やはり
「申し訳ありませんが、捜査上の情報に関してはお答えする事ができません」
と、返される。

まあ…どちらにしても”何かみつけた”ならとにかく”何もみつけてない”わけだから事態は変わらないだろう。

「いえ、少なくとも俺は何も聞いていません。忘れた物があったとしか…」
「何か見覚えのない物を手にしていたとか言う事もないですか?」
「いえ、いつも持ち歩いているポーチだけです。」
「そのポーチの中身は確認しましたか?」
「いえ、していません」
「そうですか、ありがとうございました」
言って捜査員は立ち上がってお辞儀をする。


そんな感じで全員入れ替わり立ち代わり事情聴取を受け、一通り終わったのは朝の2時。
「一応今晩はもう部屋に戻って頂いて結構です」
と、言う事でそれぞれ離れに戻った。



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