温泉旅行殺人事件_Ver錆義4_露天へGO!


露天までは母屋を通り抜けて徒歩で行く。

露天には外鍵と内鍵がついていて、外鍵は貸し出し用が2セット。
露天に向かう前に母屋で借りて、帰ってきたら返す。

なので部外者が露天に入る事はできない。

そして内鍵は文字通り内側からの鍵なので、現在使用中だと早めに行って外鍵を使っても内鍵でロックされているため入れないという仕組みだ。



「結構…遠いよね。足場も悪いし、夜なんてめっちゃ歩きにくそう」
ご丁寧に草履まではいてきたせいで、余計に歩きにくくて景色そっちのけでついつい愚痴の出る善逸。

それでなくても道は細い木でできていて二人並んで歩くのがやっとな上に曲がりくねっているので歩きにくい。

「ん~これだけ広いと安全管理どうなっているんだろうな。
部外者でも忍び込めそうな気がする」
と、こちらも景観をそっちのけな様子の錆兎。

確かに…母屋から奥、離れのある中庭は全体を塀がおおっているものの、母屋より手前の外庭はその気になれば部外者でも簡単に入り込めそうだ。

もっとも四方を山でかこまれているため、山を越えてこなければいけないので大変なのは大変そうだが…。


「小川…水綺麗だな、…冷たっ」

と、そんな中でこのシチュエーションを大いに楽しんでいるらしい。
義勇は道沿いに流れてる小川に少し指先をつけて、あわててひっこめる。

「馬鹿…風邪ひくだろう」
錆兎は自分のハンカチでその指を拭いてやると、指先を包むように手を握った。

「なんか…山に囲まれてて木と小川と空しか見えなくて建物も全然なくて、ホントに旅行してるって感じだな。ほら、ひな菊とかも咲いてる」
子供のようにその手を大きく振りながら、楽しげに言う義勇に、錆兎と炭治郎が微笑む。

そうして二人して
「「義勇(さん)が楽しそうでなによりだ(です)」」
と口を揃えた。

「炭治郎って本当に錆兎と義勇のこと好きだよな」
と、義勇の恋人であるらしい錆兎はとにかくとして、そんな二人を本当に嬉しそうにみつめる炭治郎に善逸が言うと、炭治郎は

「ん?ああ、二人には本当に幸せになって欲しいと思っているからな。
でも俺は二人だけじゃなくて善逸のことも大好きだぞ」
などと全く照れもなく言うので動揺してしまう。

善意の中でまっすぐ育った炭治郎としては深い意味はないのかもしれないが、親に捨てられ他人に疎まれて育った善逸からすると、そんなことをさらっと口にする時点で、本当にとんでもない炭治郎だ、と、つくづく思った。



そんなこんなで露天に到着。
「じゃあはいるか~」
と、全員露天へ。

脱衣室になっている小屋はこんな所にあるにしては随分としっかりした綺麗なもので、普通に旅館の室内にあるソレのようだ。

まず全員で小屋に入ってしっかりと鍵をかけ、備え付けのタオルを手に露天へ。

「ひゃ~さっみぃ!」
と、かけ湯だけして湯船に浸かった。

外は冬だけあってめちゃくちゃ寒いが、その分温かい湯につかった時の気持ちよさは格別だ。


「…ああ…気持ちいいな…」

長めの髪をタオルでまとめて、真っ白な肌を蒸気させてぽわんとつぶやく義勇の姿は濁り湯で首から下が見えない状況だとまるで女の子のようで、なんだか複雑な気分になってくる。
もちろんそんなことを口にしたら錆兎が怖いので絶対に口にはできないが


風呂から上がって着替えると、そこで錆兎がタンブラーに用意してきたらしいスポドリを紙コップに注いで

「また歩いて帰るから今のうちに水分補給な」
と、全員に配ってくれる。


「さすが錆兎。準備が良いですね。自宅から持ってきたんですか?」
という炭治郎に善逸もウンウンと頷くと、彼は

「粉末のスポドリとタンブラーだけな。
それを旅館で用意されてた水差しの水で溶かして持ってきた。
外は寒いけど温泉は熱いし汗をかくからな」
と、当たり前のように言う。

うん、この気配りが当たり前なのがすごいと善逸が感心しつつそれを飲み干すと、錆兎は全員分の飲み終わった紙コップを回収。

それをきちんと持参のゴミ袋に収納すると、
「じゃ、そろそろ行くか」
と、また夜の野道を今度は旅館の方へ。


「錆兎ってさ、頭いいだけじゃなくてすごい色々気がつくよな。
俺、旅行にタンブラーだけじゃなく粉末のスポドリ持ってきた奴なんて初めてみたよ」
と、善逸が言うと、錆兎は、ああ、と笑う。

「俺も普段はそういう習慣なかったんだけどな。
以前生徒会メンバーで旅行した時、不死川がな、持ってきてた」

「え?不死川さんが?」

「そうそう。あいつは7人兄弟の長男でな。
小さい妹や弟を連れて出かける時は氷だけ入ったタンブラーを全員に持たせるんだと。
で、スポドリの粉だけ持参で現地で水買って溶かして、それをそれぞれ飲む分だけいれる。
そうすると氷も溶けにくいし、幼い妹弟が重い荷物を持たなくて済むからって。

で、自分も持つのが2リットルのペットボトルに作って弟妹が飲んだあと僅かな残り分だけで軽いからって言ってたな。
だからスポドリの粉を持ち歩くのが習慣らしくて、いつも持ってる。
チビ達も大好きなオススメはコーオリジナルのレモン味のスポドリの粉らしいぞ」

「そうなんだ。俺も今度買ってみようかな。
でもすごいな。頭良いなっ!」

「ああ、あいつはああ見えてすごく頭いいぞ。
特待生だしな。
学年で3位から落ちた事がない」

「うあ、あんなにおっかなそうな顔なのに?!」

「おっかなそうか?
ああ、顔に傷跡あるからか。
あれは幼い頃に事故で弟かばって出来た傷らしいけど、傷がなかったら案外童顔だと思うぞ」

などと錆兎とそんな会話を交わしながら、4人で旅館にたどり着き、母屋を抜けてそのまま離れの方へ戻っていった。




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