前回が前回だけに全員が真っ青になって部屋に飛び込むと、抱き合って震えている善逸と禰豆子。
そして禰豆子が
「お兄ちゃんっ!お化けがっ!!!」
と、善逸から離れて炭治郎に抱きついてそう言うと、窓の方向を指差した。
いきなりの謎の言葉に炭治郎は妹が指をさす窓に視線を向けるが何も見えない。
しっかりしがみつかれて動けない炭治郎の代わりに錆兎が窓に駆け寄って外を見るが変わった様子はない。
念のためと窓を開けて上下も確認するがこれと言って何もない気がする。
「何も…ないぞ?」
「嘘っ!さっき窓の外に浮いてたんだよっ、人みたいなのがっ」
という善逸の言葉に錆兎は再度窓の外に目をやる。
幽霊というのはないにしても、泥棒という線もある。
…が、近くに飛び移れるような木もなければ、雨で濡れた土には、特に足跡がついている様子もない。
「やっぱり何もないんだが…」
錆兎の言葉に恐る恐る窓際による善逸と禰豆子。
自身の目で確認してようやく納得したらしい。
「まあ…疲れてるのかもな」
と宇髄が、
「…色々あったしな、ふたりともゆっくり休め」
と義勇が
「まあまた何かみつかったら今度は内線で呼べ」
と、錆兎がそれぞれに言って、それぞれの部屋へと帰っていく。
まあ何故か事件にばかり遭遇することもあって、あんなことがあると、さすがに盛り上がった気分も覚めてしまう。
「錆兎……」
と、ぎゅっと義勇に抱きつかれても、それが色っぽい気持ちではなく過去のトラウマから来る不安からの行動だと言うのがわかるし、錆兎の方もなんとなく義勇を慰め守ってやらねば…と、それは恋人と言うよりは保護者のような気分になってきた。
「大丈夫だ。善逸達の気のせいか、あるいはあちら側のいたずらか何かだろう」
ちゅ、ちゅ、と、閉じた義勇の瞼に口づけを落としながらそう言うと、
「どちらにしても俺が側にいればお前に危険はない。
さっさと試合を終えて禰豆子の今後の憂いを取り去ってロマンスカーで駅弁食わないとだから、体調崩すわけにもいかんし、寝るぞ」
と、錆兎は義勇をベッドへとうながした。
こうして自分の腕の中で早々に眠ってしまった恋人の寝顔を見ながら、錆兎はしかし、本当に勘違いや悪戯なのだろうか…と、自分で言った言葉を脳内で疑ってみる。
元々どことなく不穏なことが多いイベントではあったので、何も起きないと思うかと言うと微妙なところだ。
まあ、チェスに負けた舞達の側の嫌がらせという可能性もあるが、単なる嫌がらせで終わればいいなと思う。
そして翌朝…
錆兎の朝は早い。
毎日の習慣で目覚ましがなくとも5時には目が覚める。
普段だとこれからランニング&基礎鍛錬なのだが…窓の外はあいにく昨日から続く雨がまだ降り止まない。
軽く室内でできる屈伸、腹筋、腕立てなどをやってはみたものの…物足りない。
(廊下…走ったらまずいか…)
屋内テニスコートがあると言ってたから、そこなら周囲を走れそうな気がするが、この時間だ。
起こして聞くわけにはいかない。
しかし…逆に早い時間なら絨毯ばりで音もしないことだし廊下を少しくらい走らせてもらってもバレないのでは…と、こそりとドアを開いた丁度同じタイミングで、別の部屋のドアが開いた。
宇髄だ。
「おう、錆兎、早いな。どうした?」
トレーニングウェアで出て来た所を見ると同類らしい。
「たぶん…お前と同じ理由だ」
と少し笑みを浮かべる錆兎に、宇髄は
「そっか、じゃ、一緒に軽く走るかぁ」
と、笑顔を向けた。
「ま、雨ふってなきゃ良いランニングコースあるんだけどなぁ、今日はテニスコート周りか」
と、そんな宇髄の言葉を聞きながら廊下を抜けて階段へ。
そして一足先に階段を降りた錆兎は目の前に広がる光景を見て呆然とした。
廊下のベージュの絨毯に真っ赤な液体がぶちまかれている。
「…なんだっ…これ?血かっ?!」
一歩遅れて降りてきた宇髄が隣で同じく呆然と立ち尽くした。
一体何が起きているのかよくわからない。
なので錆兎は念の為にその場に宇髄を押しとどめると、自分だけ下に降りてみた。
まず足元、そしてあたりを見回して、現時点で何か危険そうなモノがないと判断すると、赤い液体のぶちまかれたあたりに進む。
そして片膝をついてかがむと、まじまじとその跡を凝視した。
(血…ではないな…)
乾いた部分も茶色く変色してない事からそう判断して、錆兎は染まった部分の匂いを嗅いで見る。
「これ…トマトジュースっぽいぞ…」
最終的に判断して宇髄を振り返ると、宇髄は大きく息を吐き出した。
「誰のいたずらだよ…」
と、階段を完全に下りた宇髄はそこでとある一点に目をやると、再び青褪めて足をとめる。
そして
「錆兎…」
と、声をかけた。
「なんだ?」
「ダイニングのドアのとこ…」
宇髄の言葉にあらためてドアに目をやると、ドアの下に小さな紙キレ。
かけよってきて手に取ろうとする宇髄をまた錆兎は制して、紙に目を落とす
” Who
killed juliet ? ” (誰がジュリエットを殺したの?)
Before <<< >>> Next
0 件のコメント :
コメントを投稿