ジュリエット殺人事件Ver錆義4_思い出


よもや負けると思ってはいなかったらしい。
舞の側は大騒ぎだ。

そんな騒動を見ていても仕方がないので、錆兎達は早々に退散することにしていったん部屋に戻ろうと2Fへの階段を上がるが、そこで宇髄が

「どうせならこれから皆で露天入らないか?
酒はさすがに無理だが、冷たい飲み物くらいは用意させるぜ?」
などと言い出す。

「あ~…じゃあ皆でどうぞ。
俺は禰豆子が入れないから一緒に部屋いるから」
と、それに当たり前に言う炭治郎だが、そこで善逸が

「それなら俺が一緒に待ってるからさ、炭治郎もたまにはゆっくりしなよ」
と、勧めてくる。

炭治郎は当然遠慮するが、互いに譲らず、宇髄がそれなら翌日は交代すればいいと、結局その日は善逸と禰豆子を置いて男4人で露天風呂に入ることになった。




「すっごい雨だなぁ…これホントやむのかぁ?」

一応露天と言っても雨避け程度の屋根はついている。
小さな簡易テーブルもあるので飲み物も持参で、4人で風呂につかりながら、おしゃべりに興じていた。

「まあ…この人数でも2週間分くらいはなんとかなる食材はあるから、なんとならないのは退屈なだけだな」
宇髄はそう言って大きく伸びをする。

「中学くらいまでは長期滞在も楽しかったんだけどなぁ…よく4人で遊びにきて…」
「宇髄さんと二宮さんと矢木さんと…あと一人…ですか?」

「ああ、中2で死んじまったやつがいてな。
事故死なんだか自殺なんだかいまだわかんないんだわ、これが。
3人揃って聖星でな、例のマリア像あるだろ、屋上の。
この前の白鳥アリスの事件の時に姫さんがよじのぼって錆兎がキレたやつな?
あれが好きだったらしくてな、よく見に行ったり抱きついたりしてたらしい。
で、確か台風の日だったかな。
学校休みだったんだが、何故かそのマリア像見になのか学校行ってて、屋上から落ちて死んじまったんだと。
事務員やシスターがそいつが一人で屋上行くのはみかけてて…
だから他殺とかではないらしくて、台風の強い風でバランス崩して落ちたのか飛び降りたのかは結局わからず終いだった…」

「え~と…でも、普通休みにわざわざマリア像見に学校ってあり得なくないですか?
覚悟の自殺では?」
と、炭治郎はまあしごくもっともな意見を述べるが、宇髄はそれに対して少し寂しそうな笑みを浮かべた。

「なんつ~かな…常識で計れないようなヤツだったから…
理屈じゃなくて感覚で生きてるっていうか…
とにかくフワフワしてて…もっとちゃんと捕まえておいてやれば良かったってしばらく後悔したわ…」
宇髄は言って遠くを見つめる。

「美佳なんかも仲良くてな、奈々が死んだ時はもう号泣。
あ、そいつのことな、奈々。
しばらく魂抜けたみたいだったなぁ…。
天使みたいな子だったから天使になっちゃったんだ、なんて、よくボ~っと空眺めて過ごしてたよ。美佳も」
当時を思い出したのか、さらに宇髄の表情が曇った。

そこでさすがにしまったと思ったのか焦る炭治郎だが、普段はフォローをいれる錆兎はと言うと、前回義勇が登っていた時の事を思い出して下手すると義勇もやばかったのかと思ってしまったらしく、いきなり義勇を抱き寄せていて、義勇は焦ってアワアワしている。

「幼馴染4人組って言っても、奈々繋がりなところがあってな。
俺はガキの頃から出来すぎるお子様だったんでなんだか他からは距離取られてて、舞はあの性格で女から嫌われて、美佳はどんくさくて他についていけなくて集団に入れなくて…
普通に他が近寄って来ない俺らに躊躇なく笑って手を差し伸べてくる女だったんだ、奈々は。
だからあいつがいなくなってあまり付き合いもなくなってたんだけどな。
まあ今回は楽しかったガキの頃の思い出の残骸みたいなもんがあって、舞に言われて断ることもねえかって会場提供したわけなんだが…なんか、悪かったな。
会場貸す前にガツンて言い聞かせるとこだったよな」

と、それはしっかりと炭治郎に向けて言うので、炭治郎はますます困って
「いえ、宇髄さんのせいじゃないし…俺の方こそ妹のことで宇髄さんはもちろん、錆兎や義勇さんにもご迷惑おかけして申し訳なかったです」
と、ワタワタと首を横に降った。

そこでちらりと会話に加わらない二人に視線を向けると、

(…錆兎が裸で抱きしめてくるから……勃った…)
と、真っ赤な顔で義勇が小さな小さな本当に小声で錆兎にささやく声を拾ってしまって、炭治郎はゆでダコのように赤くなり、宇髄は小さく息を吐き出す。

そして当の錆兎は…
「じゃ、俺らはそろそろあがるなっ!」
と、にこやかに義勇の腕を取って立ち上がった。

「あ~、もう好きに盛ってこい、このバカップル!」
と、それをシッシッと追い払いながら、宇髄は

「んじゃ、俺らもあがるか~」
と、炭治郎に声をかけて自分もザバン!と湯から出た。



こうして4人で風呂を出て私室に戻ろうと廊下に出た瞬間である。

「きゃああぁぁーーー!!!」
と、すごい悲鳴が前方の禰豆子と善逸の待つ善逸の部屋から聞こえてきた。



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