ヤンデレパニック―私のお兄ちゃん8_ヤキモチ合戦攻防戦


待ち合わせは10時正門前。9時に出れば十分間に合う訳だが7時起き。
服を引っ張りだして取替えひっかえしてはため息をつく。


女子校…なんとなく緊張する。

自分があまりオシャレな方ではないと言う自覚はあるし、逆にカッコいい錆兎はきっと女子高生達の注目の的になるだろう。

しかも…可愛いと評判の女子校の女子高生達……。
可愛さを比べられたらもうそんな可愛い女子高生に敵うわけがない。

行きたくない…というより錆兎を行かせたくない。

…が、炭治郎と善逸がトラブルに巻込まれているとわかったら行かない、行かせないというわけにもいかないだろう。

義勇はため息をついた。

そこにガチャリとドアが開いて、錆兎が朝食のトレイを片手に入ってくる。



「なんだ?もう起きてたのか。珍しいな」
と、トレイをテーブルに置きながら言う声は若干不機嫌なようだ。

「…寝てて欲しかったのか?」
いつもなら錆兎が朝食を運んできてくれるまで寝てたりするので、それかと思って首をかしげると、錆兎は眉を寄せた。

「普段そうしてるのに、今日は何故そんなに服をとっかえひっかえしてるんだ?」
手早くその辺りの服を片付け始める錆兎に、義勇も慌てて片付け始める。

「わ、悪い、散らかして。俺が片付けるから。」
そっちだったかと焦って言うと、錆兎はいきなり義勇の腕を掴んで抱き寄せた。

「さ、錆兎??」
わたわたと慌てる義勇の唇を強引に塞ぎ、錆兎はそのまま義勇をベッドに押し倒す。

「ちょ、今日はっ……」
「黙ってろ」

義勇の抵抗を軽く封じ込めて錆兎はせっかく着た洋服を脱がせていく。
こうなると腕力的な意味でも経験的な意味でも義勇に錆兎を止めるのは不可能だ。
抵抗しても仕方ないと大人しく脱がされていく。

しかしそうして半分ほど脱がしたところで、錆兎はぴたりと動きを止めた。


「…さ…びと??」
このままなし崩し的に一緒に抜くところまでするのかと思えば急に離れる錆兎に義勇が不思議に思って半身を起こすと、錆兎は何か感情を逃がすように小さくため息をついて

「…すまん」
と、いきなり謝罪の言葉を口にした。

「いや…良いんだけど…」
こんな風に突然強引に始める事はないので、ただただなんだろう?と思って言う義勇に

「良くはないだろう!無理矢理しようとするなど犯罪だ。お前はちゃんと怒れ」
と、何故か怒られてますますきょとんだ。

「いや…無理矢理にではないぞ?俺は錆兎がしてくれるならいつでもしたい。
でも今日は出かける予定があるから駄目なのかと思ってた。それだけだ」

するか?と、義勇が顔を覗き込むように見上げると、錆兎はまたはぁ~とため息をつく。

「…本当にすまん。男として情けない。嫉妬しただけだ」
「へ?嫉妬???」

嫉妬?嫉妬?錆兎が俺のこと???
思いがけない錆兎の言葉に朝の憂鬱な気分が消えて、義勇は瞬時にテンションがあがってしまう。

「…お前…何故そこで喜ぶ?」
と、それをどこか力の抜けたような目で見る錆兎。

「だって…それだけ俺に気が向いているということだろう?」
「…俺はお前だけだと日々伝えてなかったか?」
「ああ。でも今日行くのは可愛い子が多いと評判の女子校だし…。
錆兎はどこに居ても絶対に誰よりカッコいいのに、俺は可愛さで比べられると敵わないから…。
普段あまり自分で服を選んだことがなかったけど、少しでも錆兎の隣に立って見苦しく見えないようにと思って選んでた。
…錆兎といるのにあまりに不似合いに思われたら嫌だし…」

そんな言葉に錆兎は頭を抱えてその場にしゃがみこんだ。

「錆兎?」
と、またそれを不思議そうに見下ろす義勇に、錆兎はうつむいたまま言う。

「…心の底から安心しろ。
可愛さでお前を超えるやつなんて聖星の女子高生でもいないから。
それに…朝弱いお前が今日は朝っぱらから着替えを引っ張り出しているくらいで、そんなに女子校に行くのが楽しみなのかとみっともなく嫉妬するくらい、俺はお前にしか興味がない」

え?そこ?そこだったのか??
あまりの意外さに義勇はびっくりしすぎて固まった。

「えと…えっと、じゃあ…錆兎…」
「…?」
「今日俺が着る服は錆兎が選んでくれ。
制服でもジーンズでもなんならスカートでも何でもいい。
錆兎がそれを着せて隣に連れて歩きたいと思う格好がいい

にこにこと上機嫌でそう言うと、錆兎にぎゅうっと抱きしめられる。

「本当に…お前はどこまで俺の心を鷲掴みにすれば気がすむんだ」
と、そういう錆兎のほうがカッコよすぎて、義勇のほうが心を鷲掴みにされている気分なのだが…。

ともあれ、そんな風に互いに機嫌をすっかり直すと、二人で改めて食事を取って、錆兎は制服、義勇は先日買ったゆったり目のセーターにジーンズ。
そしてそれは錆兎の私物の大きなジャケットを着て行くことにして、2人は待ち合わせの時間より少し余裕を持って待ち合わせ場所である聖星の校門にたどりついた。



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