とある白姫の誕生秘話4_1人楽しい竜さん

こうしてケイトに連れられて行ったのはルーランの砦。
こちらから攻撃を仕掛けなくても攻撃を仕掛けてくる、いわゆるアクティブな敵がウロウロしている場所だ。

中にいるのはレベル1520くらいの敵なので、義勇1人なら敵に見つかればあっという間に死ねる強さである。

しかしアイテムは当事者でなければ取れないため、なるべく敵に見つからないように、見つかった場合は敵の仲間が集まって来る前に速やかに倒さなければならない。

なのでケイトはメインであげているクラス、レベル70の戦士で来てくれた。

装備はやはりハーネス系だが、低レベルの前衛ジョブが皆着れる茶色のシンプルなものと違って、戦士のクラス装備だと言う所々の金の模様の入った赤いハーネス。

ここは一声必要な所だと思い、
「クラス装備ですか?きらびやかで素敵ですね」
と思い切ってそう言ってみれば、誰しもメインでやっているクラスには愛着があるのだろう。
「そうでしょっ!」
と、嬉しそうに頷いた。


そうして2人して待っていると、ワープポイントに現れた青い影。

ケイトが戦士のがっしりとしたデザインの赤なら向こうはスマートなラインのプルシアンブルーの竜騎士のクラス装備だ。

そして後ろにはハタハタとやはりブルーの子竜が飛んでいる。

うあ~うあ~うあ~~!!と義勇は内心叫ぶ。

竜騎士はオートで補佐をする、この子竜と一緒に戦うジョブだ。
それは攻略サイトでは見て知ってはいたが、実際プレイヤーのあとをぱたぱた付いてくる子竜の姿は、秘かに可愛いモノ、小動物好きにとってはたまらない愛らしさだ。

「お前、遅いよ」
「はいはい、そりゃあ悪かったな。急いで来たんだが」
などとケイトと竜騎士ウサが言葉を交わしている間、義勇の視線はその子竜に釘付けだ。

「てことで、こいつはウサね。
ユウさんの前にギルド入りした一番の新米。
で、最近ようやくクラス装備取ったとこなんだよ」
と、ケイトの声に視線を向ければ、
「よろしくな~」
とヒラヒラ手を振ってくるウサ。

それに義勇は
「今日は突然お呼びたてして申し訳ありません。
よろしくお願いします」
と、ぺこりと頭をさげた。

我ながら…清楚なキャラの容姿とあいまって、なかなかにお育ちの良いお嬢様のように見える。
とはいっても言動はリアルとは対して変わらず、ただ、キャラの容姿が少女なだけなのだが、それだけで笑ってしまうほど反応が違う。

ケイトは
「な?すごく礼儀正しい良い子だろっ!!」
と、テンション高く自慢する。



その日のイベントに関しての印象はあまりない。
ただ、竜さんはなかなかインパクトがあった気がする。

アイテムが取得できる現場に行く道々の会話で、とにかく子竜が可愛らしかったので、『この子、名前とかあるんですか?』と聞くと、ウサは
「あ~、今だすな」
と、非表示にしていた子竜の名前を表示してくれた。

「…Konkon…さん?」
「そそ、こんこんな。覚えやすいだろう?」
「……はあ…ええ、そうですね」
正直どう反応して良いかわからない。

確かにドラゴン!というには可愛らしすぎるが、だからといってコンコンというネーミングもどうなのだろうと思わなくもない。
なんだかキツネみたいだなと思いつつも、確かに覚えやすいかと言われれば覚えやすい名ではあるので、ついつい頷いてしまう。

ウサいわく
「竜騎士は普段はパーティに入らないで、相棒の子竜と1人と一匹で楽しく狩りがメインのジョブなんだ」
とのこと。

このゲームはレベルがあがるに従って1人でのレベル上げは厳しくなってくる。
だからたいていは6人でパーティを組んで狩りをするのだが、そのパーティを組めるまでが長い。

それでもパーティに入れれば良い方で、クラスのバランスよくパーティを組まないと効率が悪いと言う事で、パーティメンバーを募集していても自分のクラスの枠が空いていないとパーティに入れない。

では自分でパーティを作ろうとなると、これも初心者にはなかなか敷居が高い作業になる。


そんな風なので、1人で可愛い子竜と狩りもいいなぁと思うが、それを口にするとケイトが

「あ~竜さんはパーティに枠がないからねぇ。
アタッカーは他にもいろんなクラスがいるし、火力あっても打たれ弱いからヒーラーに負担かけるし。
だからソロなんだけど、パーティだと1戦で数百の経験値稼げるけど、他よりソロしやすいっていっても良くて100とかだし?大変だよ。
その点戦士だとタンク役もできるから」

と、言いだして、さすがに義勇も内心ひやひやするが、ウサは

「ま、楽しみ方は人それぞれだ」
と飄々とかわした。


結局その日は無事にクラスアップアイテムを取り、その後もレベルが違うため他のメンバーとレベル上げのパーティを組むと言う事はなかったが、どうやらボス以外は男所帯のギルドだったため、礼儀正しくお育ちの良い新人のお嬢さんと言われながら、以後、日々ギルド内で会話をしたり、イベントに参加をしたりはするようになった。




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