エルフだがLサイズなのでややがっしりした感があり、露出の高いハーネス系の鎧を着けて斧を背負っている典型的な姉御肌な印象のキャラで、実際、彼女の言う『私のギルド』というのは文字通り、彼女がマスターをしているギルドだと言うことである。
だから義勇には断る理由などなく、二つ返事でお願いした。
「始めたばかりで知り合いもいなくて心細かったので、嬉しいです」
と、それはキャラ作りでもあるが実際に本心もあって言うと、ケイトは
「ある程度の礼儀は守ってほしいけど、ユウさんはすごくきちんとした印象受けるし、その点は大丈夫そうね。
徐々に他のメンバーにも紹介するし、クラスアップのアイテム取りとかも手伝うから」
と、心強い事を言ってくれた。
ちなみに、レベル15になるとクラスアップが出来て、より色々なスキルを身につける事ができるようになる。
クラスアップをしなくてもHPとMPは普通にあがって行くのだが、そのクラス特有の強力なスキルは覚えられないので、そのレベルになればクラスアップをするのが一般的だ。
ただ、そのためにはクラスごとにアイテムが必要で、それはそのレベルのキャラ1人で取る事はできないので、ギルドなどに入っていて手伝ってもらえる相手がいれば手伝ってもらい、そうでなければ野良で同じ目的の人間やヘルプを募集する事になる。
だからケイトの誘いはとても良いタイミングだったと言える。
こうしてギルドマスターである彼女からギルドに入会させてもらい、まず、紹介。
『皆、新しく1人入会したから。
まだ新人だから色々手伝ってもらうことになるけどよろしくな。
レベル14のホワイトメイジ、ユウさんね』
『ユウです。4日前にこのゲームを始めたばかりなので、まだまだわからない事だらけで、色々ご迷惑をおかけする事もあるかと思いますが、よろしくお願いします』
そう挨拶をすれば、
『おお~白姫だ~』
『俺メインがブラックのノアノアね。よろしく~、ユウちゃん』
『同じくホワイトのシオだよ。よろしく~』
『ウサ、竜さんだ。よろしくな』
『俺は……』
と、その他にも延々とされる自己紹介。
大勢いて覚えきれないので、義勇はそのログをスクショを取って保管した。
そうして大方の自己紹介が終わると、ケイトが続ける。
『これからユウさんのクラスアップアイテムを取りに行こうと思うんだけど、手の空いてる奴いる?』
へ?と隣にいる彼女を見あげると、彼女はにこりと笑う動作。
「ああ、今レベル14だしね。
レベル15になったらすぐ必要になるものだから、もう取っておいた方が良いよ」
と、当たり前に言われて、おお~!!と感動する。
こんな風に自分に必要な事を他人が先回りしてくれたのは初めてだ!!
とうとう、“愛され人生”の第一歩かっ!!
最初の一歩、されど一歩
ここで終わってはいけない。これを続けてもらえるようにしなければ!!!
「お気遣いありがとうございます。
お手数をおかけして申し訳ありません。
でもとても助かります」
と、ぺこりと頭を下げておく。
謙虚さと感謝の気持ちは大切だ。
そうやってにこりと礼を言うと、満足げなケイト。
ただ時間が時間だったため、ギルドメンバーのほとんどはパーティー中らしい。
『悪い、今パーティー中だわ。
あと30分は抜けられそうにない』
『俺も。終わってからなら手伝いに行くけど?』
などの返答が続く中、ケイトが
『ウサ、お前は来れるよな?ルーランの砦前集合だから』
と、有無を言わさずに名指しで指名したのは、確か竜騎士だと言っていたメンバーだ。
それに対して相手は
『俺は拒否権なしかw
ま、了解。じゃ、ルーランで』
と、笑う。
え?え?え?と、義勇はそれに対して焦った。
もしかして迷惑がられてたりはしないだろうか…
「あ、あの、皆さんお忙しいようでしたら、後日でも、自分でアイテム取りパーティを主催して集めるのでも大丈夫なので……」
と、申し出るが、ケイトはヒラヒラと手を振って
「あ~、あいつは一番の新米なの。
で、あいつのクラス装備取りとかもギルドで手伝ってるからね。
お互い様ってことで」
と言う。
そう言われてもなお、良いんだろうか…と、本気で気にしてしまうあたりが、“甘やかされ生活”に慣れていない義勇の義勇たる所以であった。
それでもここで飽くまで固辞すると、かえって空気が悪くなる。
なので呼ばれた竜さんにはあとでお礼をしておこうと決めて、すなおに厚意を受ける事にした。
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