とある白姫の誕生秘話2_姫爆誕

ヒュムメスエフシーサイズエス

知らない人間が聞けばなんの呪文かと思うだろう。
義勇も最初クラスメートがそれを可愛いと言っている時にはなんなんだと思った。

女性のヒューマン、フェイスタイプCの一番小さな身長のキャラの事らしい。

実際に忘れないように秘かにメモったそれを繰り返し唱えながら、義勇はキャラメイクの画面をカチカチ進んでいく。

種族…1:ヒューマン、2:エルフ、3:ホビット……1、カチッ
性別…1:男、2:女……2、カチッ
フェイスタイプ…1:フェイスA、2:フェイスB、3:フェイスC……3カチッ
Aは中年、Bは普通、Cは童顔で、このあと瞳の色や細かい顔の造作、髪型などは微調整できる。
そして最後に
身長…1:L、2:M、3:S……Sで決定!!

我ながらいかにも構ってあげたくなるような小柄な可愛い女の子キャラが出来た。

頑張った!よく頑張った、俺っ!!!
ある種の達成感から来る気持ちの高揚。

グッと拳を握りしめて天井を仰ぐ。

さあ、あとは冒険を始めるだけだ。

と、その前にジョブ選択。
これはあとで変更する事もできるが、まあ、庇護欲をそそる構いたくなるジョブと言えば後衛だろう。

というわけでブラック、レッド、ホワイトの3色魔術師。
ブラックは攻撃魔法、レッドは双方の専門には及ばない程度の攻撃と回復、それに支援魔法、ホワイトは回復と防御の魔法が使える。

となれば、もちろん可愛い癒し系を目指すわけだから、迷うことなくホワイトメイジ。

ディスプレイを見ればそこには真っ白な地の胸元に金の十字架の模様の入ったドレスを着た実に愛らしいキャラが立っている。

髪と瞳の色は自分と同じ漆黒に青い瞳。
名前はユウ。
初期装備のブロンズのワンドを手に冒険に出発だ!!



基本的には6人パーティを組んでレベル上げのための狩りをするこのゲームでも、最初はもちろん1人きりである。

元々先にやっている知人がいたりする奴は、その知人が入っているギルドに誘って貰って色々を手伝ってもらったりできるようだが、少なくとも義勇にはそういう知人は居ない。
1人きりのスタートだ。

だいたい知人に囲まれているとかでなければ、レベル10くらいから皆パーティを組み始めているようなので、それまでは地道にレベル上げ。

本来の目的からは1人でやることになるそれは少しかけ離れるが、ゲーム慣れしていないので基本操作に慣れると言う意味ではちょうど良い。

さらに言うならヒーラーなので、同じように1人でレベル上げをしているプレイヤーに、通りすがりに回復魔法をかけてやる事が出来る。

最初は気まぐれにそれをしていたが、学校では何をしても当たり前だったのに、ゲーム内ではいちいち──ありがとうっ!!──の言葉が返ってくるあたりが楽しい。

こうして自分もレベル上げをしながら、時折りそうやって辻ヒールでまわりと接触を持ちながら初めてパーティに参加したのはLv9。

それまでは自分1人で倒さなければならなかったのでヒーラーでも敵を殴っていたが、そこからは殴るのは他のジョブに任せて、回復に専念する。

アタッカーやタンク()がヘイトを稼ぎきらないうちにあまり大きな回復をすると、回復によるヘイトで敵に殴られるとか、そんなパーティーならではの情報は、あらかじめ調べてあったので、マメに少量の回復を繰り返して、タゲを取らないように気をつけた。

それでもいかにも初心者と言った装備の可愛らしい女性キャラのせいだろうか。
みんなが親切に色々と教えてくれる。

そんな気持ちが嬉しくて、瑣末な事から重要なことまで、教わるたびいちいち感心して驚いて丁寧にお礼を言っていたら皆がさらに優しくなった。

そんな姿勢はリアルと対して差をつけているつもりはないのだが、外見と性別が違うせいか、周りの態度が驚くほど違う。

そのことに心底驚きながらも、義勇は

いつか立派なホワイトメイジになってナイトさんに“守る”を使って頂くのが夢なんです
と、今日も自分の野望を口にする。

守るは文字通り、ターゲットになった相手をモンスターから守って自分が代わりに攻撃を受けるという、ナイトのスキルの一つである。
しかしそもそも他がよほどヘタレとかでない限り、ヒーラーがタンクよりもヘイトを稼いでタゲを奪う時点で、“立派なホワイトメイジ”とは言えない。

そんな矛盾は実は当然わかってはいるのだが、“誰かに大切に思われて気にかけてもらう”という目的を考えると、そのあたりはわかっていても譲れないところなのだ。

とにかく謙虚に可愛らしく…それでいてパーティに面倒はかけないように…。
うん、なかなか大変だ。

しかし『目指せ!愛され人生!!』の前にはそんな苦労も苦労のうちには入らないのだ!



そして!!とうとうその時が来た!!!

ゲーム開始から4日目、パーティを組み始めて2日目のレベル14で入ったパーティでついに声がかかったのだ。

「ユウさん、もしかしてまだギルドとか入ってないようなら、私のギルドに入らない?
とのお誘いが!!



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