焦った…善逸はすごく焦った。
まさかあんなこと言ってて、二人して殺されちゃったの?
殺されちゃったのぉぉ?!!!!
そう思って1人普通にログインしてきたタンジロウに電話をして泣く。
するとタンジロウは苦笑交じりに
「普通の相手にサビトが殺されるとかはないと思う。
サビトは強いしね。
一応確認のためにメールは送っておくけど…」
というので、そうだよね、そうだよね、と、頷いていると、その後ぽつりと
「…まあ…なんらかでギユウさんを人質に取られてとかだったらわからないけどな」
というので、絶叫しながら号泣した。
これ、ダメじゃない?ほんっとにダメなやつじゃない?!!
武道3つやってるサビトが死ぬってことは、1つのタンジロウも死んじゃう?!!!
と、もう善逸はパニックになった。
その日は当然レベル上げや素材狩りどころではなくて、キャラ放置でタンジロウと電話。
そうしているうちに2時間ほどたって、タンジロウが
「あ…サビトから返事来た」
というのでとりあえずホッとした。
「なんて?」
「ギユウさん…誘拐されてたんだって」
「へっ?!!!」
「それを助けに行って、警察の事情聴取とか受けてたから連絡できなくて悪かったって…」
「そりゃあ連絡どころじゃないでしょうがぁああーーー!!!」
驚いた、ほんっきで驚いた。
「で?ギユウは?!」
と流れで聞いたが
「サビトが助けに行ったわけだし…ね」
と言われれば、ああ、愚問だったなと思う。
そうか…本当に誘拐されても助けられちゃうくらいの人間なんだなぁ…と、善逸はあらためて実感。そして本当にそんなすごい高校生が実在するんだ…と感心。
「それで…犯人は?」
「捕まったって。だからもう心配しないでいいって言ってたぞ」
「うあああ~~本当か?良かったあぁあ~~」
どっと肩の力が抜けた。
電話の向こうでタンジロウがクスクス笑う声がする。
こうしてその日はなりすましメールで騙されて呼び出されて以来、本当に久々に枕を高くして寝ることができたのだった。
そうしてそれから3日
──犯人はイヴとアゾットな
と、サビトからの説明はそれだけで、
──第二の奴らみたいな輩がでないうちにさっさと魔王を倒すぞ
と、毎日怒涛のようにレベル上げと魔王の城の周りの情報集めに奔走する日々だ。
他もインしてるのかどうか確認する間はなかったが、とりあえず魔王の周りをうろつくのは善逸達4人だけになっていた。
サビトがレベル44になってて、他は43。
魔王には3回目の挑戦だ。
善逸が攻防命中を上げる魔法をかけると、雑魚戦闘と違い敵の攻撃を他に向けない様にまずサビトが切り込む。
レベルと言うのもあるが…この中では一番防御高いためだ。
ベルセルクは攻撃力も素でシーフの4倍、エンチャの8倍ある。
さらに装備できる武器防具自体の性能も一応ウォーリアと並んで数少ない純近接アタッカーなので善逸達より段違いに高い。
善逸が20とか30とかをペチペチ削ってる間に、ガンガン100以上のダメージを与えてる。
一億は…サビトのとこに行くんだろうな~…
と善逸は思うが、別にそれには全然不満はない。
少なくとも善逸はサビトがいなければ魔王の姿も拝めないどころか、下手すれば死体になって川に浮いてたわけなので…。
もう今一億に関して頭に浮かぶのは単純な好奇心。
サビトはいったい何に使うんだろうか…
そんな事を考えながらオートでペチペチと魔王を叩いている自キャラをぼ~っと眺めていると、いきなりサビトが後ろに走った。
時間がかかってたせいか、少し後方で回復してるギユウの後ろに一度倒した雑魚敵がまたわいている。
サビトってよく見てるよなぁ…。
と、感心しつつもギユウのフォローに走るサビトを追いかける魔王をそのままオートで後ろからプスっと斬りつけた瞬間、
ピカ~っと光を放って魔王の身体が霧散した。
え??えええ????
なんだかめでたそうな音楽がなってるよっ!
コングラッチュエーションだよっ!
なんか…俺が倒した事になってる……?
ええええ????
呆然とディスプレイを眺める善逸をよそに、なんだか魔王を倒した祝いのような画面が流れて、ストーリーが進んで行く。
そして有無を言わせず終了画面。
めでたそうに平和が戻った事を喜ぶお城の面々の画面のまま、テロップが流れた。
『魔王討伐お疲れさまでした。
今回参加して頂いた皆様には当企業の側でささやかながら祝宴と粗品をご用意しております。
また、その場で一億円の授与式も予定しております。
明日午前中、それぞれのご自宅にお迎えにあがりますのでご自宅前でお待ち下さい。
なお、お迎えに上がる時間には多少差がございますので、別個メールにてお知らせいたします。』
本当に本当に、なんだかあっけない終了宣言だ。
しかし祝宴ということは全員が集まるということで…正直それはとても楽しみである。
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