今日は爺さんが遅くなると言っていたので、1人きりならやりながら食べれば良いかと、善逸はおにぎりを握って出ていった兄貴分の残したPCのある自室へ。
そうしておにぎりを片手にソフトを立ち上げ、スタートをクリックすると現れるキャラ選択画面。
善逸は相変わらずおにぎりを食べながら、のんびりとディスプレイを確認する。
まずはジョブ選択。
7ジョブもあると迷う。
魔王を倒すという事は…やっぱり強いジョブが一番だ。
攻防のバランスの取れたウォーリアがいいのか…。
でも離れた所から攻撃できるアーチャーやウィザードも捨てがたい。
どうしようかな~作り直しができないから迷うな~う~~ん…
決めたっ!無難にウォーリアっ!
ポチっとな。
”そのジョブの受付は終了いたしました。”
………。
そっか…そうだよね、俺がいいなって思うってことはみんな思うんだよね。
仕方ない…アーチャーでいいや…。
ポチっとな。
”そのジョブの受付は終了いたしました。”
………。
これも駄目かぁ……。まあいっか。
ウィザードだったら防御なくても範囲攻撃できるしね。えいっ!
””そのジョブの受付は終了いたしました。””
……な…なにこれっ?!なんで全部終了してんのよっ?!
終了してないジョブないのっ?!!
嘘でしょっ!嘘嘘ぉぉ!!!
と、焦って上から順番にカチャカチャクリックしてみたが、ことごとく
”そのジョブの受付は終了いたしました。”のメッセージ。
あ…ありえないだろぉ~~っ!!!!
と、善逸は頭を抱えた。
もういい加減頭に来て、よく見ずにカチャカチャクリックしてたらようやく次の画面に進んだ。
ホッ…。
フンフン♪ようやくゲームが始められる♪
鼻歌まじりに画面に目をやった善逸は…えっ…と眼の前のディスプレイを凝視した。
目の前には黒い画面に白い文字でデカデカと…
”あなたのジョブはエンチャンタに確定しました”
うあああっっ!エンチャンタ?エンチャンタってなんだっけ?!!
と、慌ててそこで初めてマニュアルにしっかりと目を通すと攻防共に微妙なジョブ性能でパーティに入らないとあまり意味のない支援ジョブだということがわかった。
そこで慌てて戻るボタンを探すが当然ない。
確定……しちゃったよ……。
…マジ…ですか…?
攻撃力微妙、防御力微妙ってジョブで魔王倒すんですか…?
どうしろっていうのよ、これっ?!
などなど思うものの、もうどうしようもなさそうなので、諦めるしかない。
ということで次へをクリック。
すると黒い画面が一転してブティックの試着室のような部屋の画面へ。
中にはまだ何も決まってないためマネキンのようなキャラがたっている。
性別は…男。
もしかしたら気が合う奴できてリアルで会おうとかいう話にならないとも限らない。
その時にあんまり違和感与えるようなキャラは面倒だ。
ということで容姿もなるべく自分に近づけて…。
最後に名前はやっぱり呼ぶ時に違和感ないようにゼンイツ。
ポチッと完了ボタンを押すと、画面の中の自分にちょっと似た感じのキャラクタがクルクル回って光の渦の中に消えていき、プロローグ画面になった。
舞台はイルヴィス王国。
光の神を奉るその国を滅ぼそうと闇の魔王がモンスターを送り込んできているというありがちな設定。
参加者はその国お抱えの兵で、ミッションをクリアするごとにより重要なミッションを任せられ、最終的に魔王退治を命じられるらしい。
プロローグが終わると、真っ赤な短めのマントを羽織った自分にそっくりなキャラが街の広場にたたずんでいた。
このジョブでソロで真面目に経験値稼ぎしようなんて気にはとうていならないので、まずは…地道に装備代でも貯めつつ仲間探しだ。
すでに出遅れてもう誰もいなくなった街中を一通り探索したあと、ゼンイツは他の参加者の姿を求めて外へと足を踏み出した。
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