さらに“鬼狩りを出来ている達成感”をお手軽に味合わせるために、リアルよりも随分と簡単に成果があげられるように戦いの難易度が調節されていることすら、──鬼が妙に弱いのは、もしかして…あの“義勇もどき”を送り込んで来た奴が何か企んで調整しているのかも──などと、錆兎に疑われて用心されていることに至っては、鬼も頭を抱えるしかない。
ぜんっぜん楽しんでもリラックスもしてくれないこの男はなんなんだ?!と鬼は嘆いた。
もちろんそんな裏方の思いなどつゆ知らず、普通に迫ってくるメインヒロインに対しては迫られるたび自分には恋人がいるからと諭しては距離を置き、皆が思いを寄せる彼女に迫られていることで敵対心を向けてくる同僚の男達には飽くまで誠実に親切に。
そうすることで相手が態度を軟化してきて話をできそうな状態になれば、自分は恋人がいるので他の女には全く興味はない。
だからそんなにヒロインが好きなら堂々と伝えて幸せにしてやれ、そのための協力なら惜しまないと伝えて、そんな設定ではなかったはずなのに、メインヒロインより彼らに慕われ始める。
さらに男の夢であろうハーレム状態になるようにしているのに、迫ってきた他の女性陣に対して自分には自分の世界に恋人がいるので浮気は出来ないと丁寧にお断りをいれた上で、なんなら
「お前の事だけを大切にしてくれる相手が絶対に見つかる。
気になるような相手が見つかったなら相談に来い。
力になってやるからな」
と、励ましたりまでする。
対男性であろうと対女性であろうと全くブレない揺れない変わらない。
恐ろしいことに、本来は夢鬼が作っているはずの夢なのに、どんどんこの錆兎という男のコントロール下に置かれていって、総受け乙女げえむの主人公の乙女を含めて全女性が好きになるギャルゲの主人公になるはずが、男は何故かみんなの相談室の頼れる先生になっていく。
おかしい…こんなことは初めてだ…と、鬼は心底途方にくれた。
設定が変わるどころの話ではない。
男はこの夢の世界に疑いを持ち始めて、解決すべく事態の解明に乗り出しすらしている。
そうしてどんどん壊れていく夢の世界。
まずい…非常にまずい。
夢は一晩で解けてしまうので、それまでにこの男を魅了できるような夢にしなければ無惨様に踏まれる!!
仕方ない。
本当にこんなことはしたことがないが、自分も夢に入って軌道修正するしかない。
直接標的と接したことなどなくて怖いが本当に仕方がない。
夢鬼は覚悟を決めて自分用にモブ隊士を設定する。
そんな風に動揺している間にも、一つ大きなイレギュラーが起きたことにも気付かずに…
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