これはそんな任務の1つだった。
とある地方で、旅の一座が次々行方不明になっているらしい。
旅の芸人など、流れ流れていくものだから、いつのまにか消えていても不思議なこともない。
だから最初はたいした噂にもならなかった。
しかしある時、なかなか人気の一座が消えたことで、他にも消えていることが発覚することになる。
そうして調査が進んだ結果、消えた劇団の共通点としてさるお屋敷に公演に招かれた事がわかるが、そのお屋敷というのがさる大名華族の邸宅だったというのもあって、警察も踏み入ることが難しい。
しかしさらに、その邸宅の近くの街では時折神隠しが起こっていると居ることもあり、何かは起きているのだろうと思われている。
神隠しのあるところ鬼があり…とまではいかないものの、そういう事象は少なくはない。
ということで、”穏便な形で”そのあたりを調査し、状況によっては解決して欲しい…と、事態を重く見たお国からの依頼で、鬼殺隊が動くことになったのである。
こうして鬼殺隊内部にて、その人選にひと悶着。
「…何故俺達が?
こういうのは宇髄の仕事じゃないか?」
はぁ~と己が組み込まれた任務にため息をつく錆兎。
鎹鴉に伝えられて、一旦は産屋敷邸に。
そこで任務の詳細について説明をする事務方に思わずそう零せば、かなりベテランの事務方の女性は
「水の対柱は昔から十分人気だったじゃないですか。
私も何度かお二人の戦闘を見物に行ったものですわ」
などと笑みを浮かべる。
「勘弁してくれ…戦闘ならとにかくとして、俺は演技なんか出来んぞ」
「あら、錆兎様なら出来ますよ。
昔から本心を隠すのがお上手でしたし?
たった13の頃から厳しい戦闘でも飄々と…時には笑顔で。
だから大丈夫」
「あまり大丈夫とは思えんが……
もう一度聞くが、そもそもなんで宇髄じゃなくて俺達なんだ?」
そう、そこだ。
もし事務方のさじ加減というやつなら、なんとか説得して宇髄に変わってもらえないだろうか…と、珍しく任務に後ろ向きな錆兎であったが、一応理由はあったらしい。
例のごとく…後輩の面倒を見るという役割付きという……
「今年、隊士になりたてほやほやの坊やが3人一緒なので。
例によって新人たちの面倒みがてらこなして欲しい任務なんです」
と、言われれば、役者の真似事を出来るかどうかは別にして、人選についてはなるほど、と、納得せざるを得ない。
まだ新人でも2年目3年目ならとにかくとして、なりたての新人では難しいだろう。
「そのうち一人は対柱様達の弟弟子ですし、気心もしれてましょう?
それに今回は補佐役として錆兎様が慣れていて使いやすいようにと、村田隊士をおつけしますので」
と、さらにそのうちの一人が炭治郎で、村田までつけると言われれば、もう仕方ない。
「わかった。引き受けよう。
とりあえずどうすればいい?」
やらねばならないなら、もうそれ以上後ろ向きな事を考えてもしかたがない。
役者の真似事だろうと鬼退治だろうと、ひたすら前向きに取り組むまでだ。
そう腹をくくって、錆兎は事務方にむきあった。
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