続聖夜の贈り物_10章2

スコットは幼児が嫌いだ。

何故?と聞かれれば、痛々しいから…という答えが浮かぶあたりが、そもそもが幼児に対する認識が間違っていると言わざるを得ない。


しかし彼にとって、幼児と言ってイメージするのは、何かに耐えるようにそのまだ柔らかい小さな手をぎゅっと握りしめて、人恋しい眼で愛情を与えてくれない自分達を見上げる最愛の末弟なので、それは仕方ない事なのだ。

そして今…目の前に幼児がいた。

最愛の弟はいつまでも子供であれと思う兄の気持ちとは裏腹にすっかり可愛く成長して、どこぞの馬の骨に連れて行かれてしまったので、これは別の幼児…もっと言うならその可愛い弟が自分を頼って連れてきた幼児型のマジックドールだ。

宝玉の欠片の一つ、水の石を体内に取り込む事で動いているそれは、水の石の力を失えばじきに動きを止める。
人間でいうところの死を迎えることになる。

それを説明した上で石を取りだす事を告げたのだが、幼児は泣くでもなく怯えるでもなく、ただ邪気のない目で微笑んで、その運命を受け入れる事を了承した。

諦めと許容…甘やかされるために存在するようなフワフワとした容姿でそんな態度を取る事にイライラした。

世の中の子供はもっと泣いて喚いて暴れて甘えて、その小さな身体をいっぱいに使って要求するものなのではないだろうか。

何も望まずにただ大人しく許容するその姿に小さな頃の弟の姿が重なり、心を動かさない訓練を積んできたスコットの心に小さなゆさぶりをかける。

ああ、性質が悪い。だから子供なんて大嫌いなんだ。めんどくせえことさせやがって…
と一人心の中で毒づいて、スコットは禁呪すれすれの魔法を使うために、準備を始めた。


水の石の代わりに自分の魔力でドールの命をつなぐ魔法…。

それはカークランドの中でも限りなく純血に近く高い魔力を持つスコットの魔力だからこそ足りうるだけの分を与えられるわけだが、当然自分の死と共にその効力は切れる。
水の石のように永遠に…とはいかない。

どちらかと言えば自分の自己満足なんじゃないかという気がしないでもない。
前当主であった父親が生きていたら、くだらない事で魔力の無駄遣いをするなと叱責されるのは請け合いな、なんとも意味のない行動だと思う。

それでもスコットはそれを行う事にした。
ただ…自分のなかのイライラを収めるために。


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