ベッドはふかふかで起きちゃうのが惜しいけど、マスターが適温になるように絶妙に調節してくれたミルクティが冷めちゃうのはもったいないな…
マシューは鼻をひくひくさせてそれからニコォっと微笑んだ。
幸せな思い出は薔薇と紅茶と共にあると言っても過言ではない。
このまま目を開ければマスターが優しい声音でおはようって言って額にキスしてくれるはず……
ふわふわした気分でぱちりと目を開けたマシューを見降ろしていたのは優しいマスターではなく、当然額へのキスもない。
それどころかむぅっと眉を寄せて不機嫌な調子で
「ようやく起きたか。」
とつぶやかれる言葉。
あまりの不機嫌ぽさに思わず
「ごめんなさい。」
と謝ると、
「怒ってねえ。いちいち謝るな、うっとおしい」
と、やっぱり怒ってるんじゃないかなぁ…と思う声が返ってきた。
それでも、
「ホラ、飲めっ。」
と差し出されるクマさん模様のマグに入ったミルクティは優しい味がして…
「美味しいです…」
と、思わずほぉっとため息をつきながら言うと、
「そうか…」
と一瞬だけ優しい眼がむけられ、すぐにまた不機嫌な顔に戻った。
聞きたい事はたくさんあるのだけど、こんなに美味しいミルクティを適温で飲まないのはもったいないと、質問は後回しにしてコクコク飲み干す。
ふとカップの合間から覗くと視線は優しくて…でも飲み終えてカップを置いてしっかり表情が見えた時にはしかめつらに戻っていた。
何故僕は生きているんだろう?と、とりあえずマシューは首をかしげる。
確か自分の身体は水の石の魔力で保たれていて、それを取りだしてしまうと魔力切れで動かなくなってしまう…人間で言えば死んでしまうと説明を受けたはずだ。
何かが抜け落ちたような感覚…たぶん石がないせいなんだろう。
念の為と、石があったらしい辺りに手をやってみるが、傷跡一つない。
その動作に
「どこか痛むか?」
と少し眉を寄せて降ってきた声は、マスターみたいに柔らかくはないけどどこかマスターに似た心配そうな声音で、やっぱりこの人はマスターのお兄さんなんだなと思った。
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