そんな事を考えていると、ふと領内に魔法の気配がした。
スコットが資料を消して望遠鏡で気配の方を覗いてみると、なんとアーサーが従者達(スコット視点)と塔の前に佇んでいる。
なんの用だ?
ウィルはいない、アイルとはそれほど接点がない…そう考えると自分に用なのだろう。
スコットは望遠鏡をしまうと、一階まで魔法で一気に移動する。
…が……いきなり出て行ったら怯えさせるかもしれない。
ここはティーでも用意して部屋で待つべきだろうか……
もう突き放す必要はないのだから、普通に迎え入れても……いや、でも、いきなり待ち構えられたら、それはそれで警戒させるかもしれない……。
結果…ドアの内側でウロウロと声をかけられるのを待ってみる。
そしてため息…。
何をやっているんだ、自分は……。
アーサーが戻ってきたというだけでどれだけ浮かれている、どれだけ弟が好きなんだ>自分…と、我ながら情けない気分になってきて、自室へと足を運びかけた時、外からでかい声で
「アーサーのお兄さ~ん!!こんにちは~~!!!
お願いがあってきましたぁ~~!!!」
と呼ばれて思わずピタっと足が止まる。
お願い?自分に?アーサーが?
本人に言われたわけでもないのに面白いほどピタっと止まってしまう足が恨めしい。
でも仕方ないじゃないか。どれだけ愛情を注いで育てたと思っているんだ…と、半ば自分に言い訳して、スコットはクルリとドアを振り向くと一息。
しかめつらしい表情を造ってドアを開けた。
「騒々しい。叫ばないでも聞こえる」
と言う言葉にビクッと怯えたようにすくみあがる最愛の弟。
ああ…またやってしまった…と思うものの、今更習慣となった態度は変えられない。
「で?そこまで騒いで呼びだした理由はなんだ?」
もう思い切り怯えさせたであろうアーサーに目を向ける事も出来ずに、しかたなしに大嫌いな馬の骨をギロリと睨みつける。
「あ~、実はな~、こいつの身体の中に水の石の半分が入ってるらしいんだけど、それを取りだして欲しいんだ。素人がいじって壊したらまずいだろ?」
意外な申し出にスコットはピクリと片眉を動かす。
一行の様子からすると、それを取りだす意味がわかって言っているとは思えない。
さてどうする……
一瞬迷うスコットに、ギルベルトが
「難しいのか?」
と聞いてくる。
「難しくはない」
それに端的に応えると、スコットは、
「ただドールの状態を見ないと良い状態で取りだせん。
これから見てやるから、貴様達は中で待ってろ」
と、ローブを翻して反転すると、一行を中へとうながした。
「茶は勝手に入れろ。わかってるな?」
居間に案内してアーサーにそう言って一行を居間に待たせると、
「こっちだ。」
と、スコットはマシューだけ自室へ招き入れる。
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