続聖夜の贈り物_9章9

そうと決まれば善は急げである。
ロヴィーノは先程からずっとルートに張り付いている弟に声をかけた


「フェリシアーノ、お前石今持ってんだよな?」

「うん♪これ俺のだもん♪」
すっかり自分がもらったつもりで袋にいれて首からぶら下げているフェリシアーノは、その袋を手にとって揺らしてみせる。

そして理由も出来たことだしと、かねてからの念願をかなえるべく、
「ね、これ俺に取りこんでよっ!」
とぴょんぴょん飛び跳ねてアーサーに迫った。

「え…でも……」
「ちょっと待てっ。お前が取りこむくらいなら俺がっ」
と、ためらうアーサーと止めるルートだったが、フェリシアーノは
「石集めたいって言いだしたのは俺なんだから、俺に権利があるんだよ~!」
と、ぷぅっと頬を膨らませた。

「ま、いいんじゃないか?
どうせ一緒にいるだけで狙われることはこの前の誘拐でわかったんだし、逃げる手段もっといた方がまだマシじゃね?」
と唯一ギルベルトだけが気楽に賛同する。

「まあ…そう言われればそうだな」
と、実兄のロヴィーノも賛同した時点で、アーサーが渋々了承した。



こうしてフェリシアーノに吸い込まれて行く風の石。

「移動する人は全員手をつないで、シンクロはマスターに任せて、フェリシアーノさんは強く行きたい場所をイメージして念じて下さい」
とのマシューの言葉に全員手をつなぎ、
「おっけぃ♪やってみるよっ」
とフェリシアーノはにこやかに答えて目をつぶると、つい先日に行ったカークランド本家を思い浮かべた。

シュン!と周りの空気が一瞬で変わり、目を開けた時にはもうついている。
「すご~い!俺すごいよねっ!」
フェリシアーノはその能力におおはしゃぎだ。

「今みたいに一度行った事がある場所はイメージすれば一瞬でいけますけど、行った事ない場所は空飛ぶ絨毯の要領で何か媒体を用意して現地まで飛ぶ事になります」
と、それにマシューが説明を付け加える。


「い、いきなり来たのは良いけど…兄さんになんて言えばいいんだろう…」
ああ、ウィル兄さんを通せばよかった…と今更ながら後悔するアーサー。

「お兄ちゃんなんだから、普通にお願いすればいいんだよっ♪」
と、それに対してフェリシアーノは飽くまで前向きだ。

そして…
「アーサーのお兄さ~ん!!こんにちは~~!!!お願いがあってきましたぁ~~!!!」
と塔の前で大声で叫んだ。


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