続聖夜の贈り物_9章3

正直、ギルベルトが抱え込んでいるなか、アーサーとの時間を作る自身はロヴィーノにはない。
かといって一人ぼっちのマシューを寂しいままにもしておきたくはない。
そこで少し考えて、そう言えば弟の話をしていたな、と、思い出す。


「あのよ、弟と二人で静かにっていうのはダメなのかよ?
なんなら俺らで本格的に弟探そうか?」
ロヴィーノの提案にマシューは複雑な表情を返した。

「えと…アルと二人はちょっと…」
と、珍しく言葉を濁す。

「仲悪いのか?」
意外に思ってきくロヴィーノには、困ったように首を少し傾けた。

「えと…悪くはないんですけど、正反対すぎて二人きりはかなりつらいというか…アルもそう思ってると思いますし、そもそも彼はひとところにジッとしているのが苦手なタイプなので」

「そっか~。じゃあこれ終わったらうちの城に来いよ。
うちならさ、俺がもしいつか年取って死んでも俺の子孫がずっとお前を一人にしないしな」
「その前にお嫁さんみつけないとね」
とまぜっかえすエリザ。

確かに特定の相手がいるわけではないので、ロヴィーノはそれに
「あ~、可愛いベッラどっかにいねえかなぁ…」
とガバっとテーブルにつっぷす。

「ふふっ、その前にどこぞの南の王様に食われないようにしないとねぇ」
「や~め~ろ~~!!それマジこええからっ!!」
ガバっと起きあがるロヴィーノは真剣に涙目だ。
「ロヴィーノ…あれよね。思い切りノンケなのに男に好かれるわよね」
エリザはロヴィーノに同情の視線を送った。


…アルかぁ……。

そんなエリザとロヴィーノのやりとりを前に、マシューは姿を消した双子の弟の事を考えた。

自分だってマスターを一人占めしたくなかったわけではない。
でも別にいつもいつも自分だけをみていてくれなくてもいい。

もっと言えば、たまに自分だけに目を向けてくれれば、あとは側においてくれるだけで良いくらいに思っていた。

でもアルはもっと貪欲にマスターを求めていたと思う。
それこそ今ギルベルトがアーサーを抱え込むのに負けずとも劣らないくらいには…。

自分はアーサーをマスターの生まれ変わりだと思って接しているのだが、アルはどうなんだろう?
もしアルもそう思ったら?……怖い想像になった。

うん…なんていうか…アルに会う前に宝玉の欠片が集まって、みんな東の島へ帰る事になるといいな。
マシューは遠い眼をしてそんな事を思う。

研究補佐型の自分と違って戦闘型マジックドールのアルと人間だけど炎の石の攻撃力を持つギルベルト…そんな二人の戦いはご免こうむりたい。

マシューの望みは飽くまで、たまにで良いからマスターと一緒にあの苦酸っぱくて美味しいとは言えないスコーン付きでも良いから美味しい紅茶を飲みながらおしゃべりをする、そんな穏やかな時を過ごしたい、それだけなのである。


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