そこでアーサーから南の王の香の香りが立ち込める忌々しい長衣をまずはぎ取って、自分の寝まきに着替えさせた
事に及べなかった…ということは、試すだけは試しやがったな、本当なら南もつぶすところだが、どこぞの馬鹿が手ぇ出しやがった事を教えた事でチャラにしてやろう。
だが、次アーサーにちょっかいかけやがったら、どんな手を使ってもつぶしてやる!
そう決意しながら、長衣を火をつけた暖炉に放り込み燃やす。
とりあえず…触れられたところは綺麗に清めないとだし、馬鹿なちょっかいかけてくる奴のつぶし方もいい加減教えないといけない、と、スコットはアーサーを起こす事にした。
「おい、起きろ!」
その必要がなくなってもつい習慣でいつもの乱暴な調子になってしまう自分に少し自己嫌悪するが、アーサーは起きる気配がない。
ただ眠っているはずの眼からス~ッと涙がこぼれおちた。
そしてかすかにやだ…いやだ…とうなされる声。
もう少し…敵を容赦なく撃退する術を教えて育てるべきだったのかもしれない…。
スコットはチっと舌打ちをして、アーサーを無理におこすのを諦めると、アーサーを抱きかかえて風呂場に向かった。
そして魔法で一気に適温の湯を張ると、ソッと全身を洗ってやる。
その間もぽろぽろ涙をこぼしているので起きているのかと思えばそうではないらしい。
考えて見れば…性的な事を何も教えていなかったわけだから、当然免疫もないわけで…それがこの一カ月ほどでこんな事に巻き込まれたら、さぞや怖いしショックだっただろう。
風呂から上げて丁寧に湯を拭きとって、また寝まきを着せて寝かしてやる。
じきに起きるだろうが…自分がいるともしかして怯えさせたりするのだろうか…。
ベッドで眠りについている可愛い弟はやっぱりうなされ続けていて、でも助けを求めて呼ぶのは、ここまで守り育てて、今も救い出してきた自分の名ではなく、ここ2カ月くらいに知り合ったポッと出の男の名だったりするのが切ない。
そう仕向けたのは自分だとはいっても、好きでそうしたわけでもなかったのだ。
あ~クソ~!西の国もつぶしてやるっ!
…実際そうしたらアーサーが悲しむから出来ないのはわかっているが、呟いてみる。
兄じゃなければ…いや、カークランドの当主じゃなければ、自分達の関係は少しは変わっていたのだろうか…。
助け出した自分のベッドで涙をぽろぽろ流しながら他の男の名を呼ぶ可愛い愛しい存在を前に、スコットは深い深いため息をこぼした。
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