しかし外に出て行くのがこの子のためだと言われれば、幼い頃から否応なしにカークランドを背負わざるを得なかったスコットは納得できる気がした。
こうして、日中…当たり前に傷を付け、夜、アーサーが寝いった頃にソッと部屋をおとずれることが日課になった。
頬に涙の跡を残したままぎゅっとぬいぐるみを抱きしめて眠るその姿を毎日見ながら、魔法で傷をいやし、うなされていると思えば添い寝をしてやり、夜が明けてアーサーが目を覚ます前にソッと出て行く。
起きないように眠りを深くする魔法をかけているのに、無意識なのか、添い寝をしてやるといつも懐に潜り込んできてぎゅぅっとスコットの寝間着を掴んで眠るその姿が愛おしかった。
いつか手放さなければいけない。
わかっていても柔らかなその髪を撫でてやれば眠ったままふにゃりと笑う可愛い弟を諦める事ができない。
アーサーが自分以外にそんな風に笑いかける日がくるかと思うと気が狂いそうだった。
このままずっと子供のままいればいい…と、何度思ったかしれやしない。
実際…実力行使として、第二次性徴を止める魔法をかけていたのは、まあ自分的には仕方ない事だったと思っている。
とにかくアーサーが生まれてから今までずっと大事に大事に守り育ててきたのだ。
もちろん朝になれば冷酷な兄の顔に戻るため、アーサーはそんな事を知る由もないが…。
「それを……」
スコットは考えまいとしていたのをすっかり忘れてギリっと歯ぎしりをする。
「手放して2カ月もしないうちに手を出しただと~!!」
あまりの怒気に愛馬ランスロットが怯えて飛び上がった。
「ああ、すまん。お前に怒っているわけではない」
慌ててなだめ、また走らせる。
いかん、いかん。今考えるのはやめよう…。
スコットはまたそう決意して、考えないようにする。
ああ…でもあのクソ髭っ、こういう間違いが起きないようにちゃんと見張ってなかったのかっ!
…北の国はとりあえず見せしめにつぶすか…。
また黒いオーラを立ち上らせ、馬を怯えさせ、またなだめる。
そんな事を繰り返しながらもなんとか海岸へ辿り着くと、スコットは魔法で一気に自国へと帰りついた。
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