続聖夜の贈り物_8章4

「フェリ…何かあったのか…」
ギルベルトに腕を掴まれて強引に座らされたアーサーのつぶやきに、ロヴィーノは
「どうせあいつの事だ、珍しい店みつけてひっかかってんだと思うぞ」
と、ある意味正しい事を言う。


こうして待つ事数十分。

「あのぉ…ギルベルトさん、皆さんに言うてフロントにお客様きてはるんですけどどないします?」
と、ベルが顔をのぞかせた。

「お客さん?誰だ?」
「え~っと名前は名乗りはらへんのやけど、宝玉について知っている者やと言うてはります」

「宝玉について?」
ギルベルトが少し顔を険しくした。

「露骨に怪しいな」
とロヴィーノも眉をひそめる。

「ああ、危ないから俺だけで会ってくるわ。
ロヴィとアーサーとマシューはここに待っといてくれ。
あ、フラン、お前は護衛頼むわ。何かあったら…わかってるよな?」
「はいはい、わかってるから武器チラつかせるのはやめて」
とフランシスは慌てて顔の前で両手を振る。

「じゃ、そういうことで。行ってくるわ」
ギルベルトは言い置いて席を立った。



ギルベルトがフロントに行くと、一人の男が立ちあがった。

真っ白な長衣をまとったそのギルベルトよりさらに濃い褐色の肌の男をみとめると、ギルベルトは少し眉を寄せて確認するように言う。

「南の…人間だな?」
「ご想像にお任せします」
にこりと口元にだけ浮かべる笑みにギルベルトは食えないモノを感じて、少し不快そうに顔をしかめた。

「で?なんだ?なんの用できたんだ?」
今度は不快さを隠さない声音で言うギルベルトの様子に構わず、男は淡々と述べた。

「人質交渉に…」
「フェリちゃんか…」

ギルベルトはくしゃっと自分の前髪をつかみ、小さく息を吐き出す。
うかつだった…と思う。
自分達と違ってこれといって宝玉に直接かかわりがないからと安心しすぎてた。
“選ばれし者”であるアーサーと親密である時点で、十分こうなる可能性はあったはずなのに…。

「何が目的でどうしたいんだ?」
相手の真意を探るしかないとギルベルトが聞くと、男は
「詳しい事は我が主から。
ここはあなた方のテリトリーゆえ、できれば御同行願いたい。
街の別の食堂にてお待ちなので」
とちらりと外をうながす。

「しかたねえな」
確かに相手側からしたらいつ加勢が入るかもしれない場所でトップが出てきての交渉はできまい。

「ベル、ちょっと俺、出てくるから、心配しないように伝えておいてくれ」
と、フロントに控えていたベルに言い置くと、ギルベルトは促されるまま外に出た。



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