続聖夜の贈り物_8章3

「フェリ遅いな~」
「遅いですね~」
スプーンと皿と練乳を前に待ち構える二人、アーサーとマシュー。
フェリシアーノがでがけに買ってきてくれると約束した苺を楽しみに待っている。


「お前ら、可愛いな、おい。」
ケセセっとそれを見て笑いながら思わずつぶやいたギルベルトは次の瞬間、冷やりとした空気を感じて口をつぐんだ。

「ギル、あんたが間違ってもうちのマシューには手を出さないでね?」
笑顔…あくまで笑顔。
ただしその前に怖いがつく。
もちろんそう言うエリザの手には毎度おなじみフライパン。

「お前なぁ…宿の食堂でそんなでかいもん振り回すなよ。
いくら日中人が少ないって言っても迷惑だ。」
と呆れ顔のロヴィーノに、

「何?他への迷惑だけかよ?俺様の身の安全は?!」
と涙目のギルベルト。
フランシスはそれを遠い眼で見ながら合掌する。

「ね、単純な好奇心なんだけどさ…」
一応情報は収集して身の安全は計るべきだ…と、フランシスは一番安全に情報を得られそうなロヴィーノに声をかけた。

「ああ?なんだよ」
「坊ちゃんとギルってさ思い切り出来てたりする?」
とのフランシスの質問に、ロヴィーノはハ~ッと息を吐き出して下を向いた。

「見てわかんねえ?」

「うん、でもほら、お兄さんの船で大陸渡った時はまだ微妙にできてない感があったからさ、いつのまに~ってさ」
まだはっきり肯定はされてないものの、見てわからないか?というのはそういう意味なんだろう…でもそうじゃないといいな…と、一縷の望みをかけて遠まわしに聞いてみたが、ロヴィーノの口からもたらされた現実は非情だった。

「こっちしてしばらくして炎の石手に入れたあたりで手出したらしいぞ」

うわぁ…とフランシスは頭を抱えたくなった。

これ、下手すれば北の国滅亡決定?
なんとかスコットに知らせない手はないものだろうか…でも自分が隠していたのがバレたらさらにやばい。ていうか、聞かない方が利口だったのか……
グルグル頭の中で考えたが、いや、と考え直した。

もし自分が知らなかったとしても、その事実が明らかになったら絶対に責任を追及してくる。うん、カークランドだもん…お兄さん知ってるもん。

ハ~っとため息しか出ない。

大きなため息が聞こえた。あれ?お兄さんじゃないよ?
と、不思議に思ってフランシスが顔を上げると、目の前でムキムキが頭を抱えてため息をついていた。

あれはえ~っと
「ルート…だっけ?どうしたの?」
そこは自称世界のお兄さん。自分の悩みはさておいて、悩める若者に声をかけてみた。

その声に反応して若者、ルートヴィヒは顔を上げるが、フランシスを華麗にスルーして
「エリザ、兄さん、フェリシアーノ遅くないか?」
と見知った二人の方に声をかける。

か、悲しくなんかないよ?お兄さん悲しくなんかないもんっ!

と、ハンカチをかみしめるフランシスをこちらも華麗にスルーして、ギルベルトは食堂にかけてある鳩時計に目をやった。

「あ~、そうだなぁ。いつもならもう帰ってもいい頃だよな」
と言うギルベルトの言葉に、アーサーがずっと握っていた先割れスプーンを置いて立ち上がった。

「見に行ってくるっ」
待ちくたびれたらしくそう言って歩を進めかけるアーサーを
「何言ってんだ、お前だけはだめだろっ!」
と、ギルベルトが慌てて止めた。

「なんでとめんだよ?」
「アルト…お前自分が何者だったのか、忘れてんだろ。
おもいっきり狙われてる可能性が高いってわかってるか?」

「あ~、一人で危ないなら僕もついていきます。」
もう一人それを見て先割れスプーン組が立ちあがる。

「や~め~ろ!意味ネエ!マジ二人して誘拐される!!」
と、今度はロヴィーノが慌ててマシューを止めた。

「ん、まあ諸々なくても可愛すぎる男の子二人フラフラしてたら危ないわよね。
てか、あたしが行くわ。ルート、手分けして探すわよ」
とそのやりとりにエリザは立ちあがってルートと共に食堂を出て行った。


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