続聖夜の贈り物_7章8

「じゃあ…僕は二度とマスターに会えないんですか?」
またマシューのまるい眼からぽろぽろ涙がこぼれてくる。
それを指先でぬぐってやると、ギルベルトはマシューに微笑みかけた。


「そんなことないぜ~。
おんなじ魂持った人なら、また一から関係作ればいいだろ。
例えばな、それまでお前さんを金色の髪に蒼い目ぇの可愛い子って思ってた奴がいたとするやろ?
もしそいつの目が見えなくなったら、今まで見えてたお前の見かけはわからなくなるよな?
でも本当に大切な相手だったら関係はそこで終わらねえ。
お前がお前ってわかるようにいっぱい話しかけてやったら、今度はお前のこと、見かけの可愛い子じゃなくて、可愛い声の子だって思えるようになる。
もし耳も聞こえなくなったら、いっぱい触っってやったらいい。
そうしたら柔らかい手をした子だって見分けられるようになる。
諦めなかったら前に当たり前に見分けられてた時には気づかなかった新しい見分け方が何かみつかるはずだ。
記憶も同じだ。
本当にお互い好きで大事だったら、記憶っていう一つの識別方法がなくなったくらいで関係は切れねえよ。
好きだったって事完全に忘れちまったら、またずっと一緒にいていっぱい好きになってもらったらいい。
本当に大事な相手だったらそれまでの記憶に頼らないでも、また絶対に好きになってもらえるはずだ」
「…はい。僕がんばります」
「ん。頑張れよ」

「ルートも、ああやって育てられて来たのね」
ギルベルトとマシューを遠目に見て、エリザはため息をつく。
「だな。あれが優秀な未来の王って言われてるあいつの原点なんだな」
と、ロヴィーノはそのエリザの言葉に、王宮を長く離れていたくせに誰よりもしっかりしていて王にふさわしいと言われるギルベルトの育て子の顔をしみじみと思い浮かべた。

「なあ、エリザ。なんだったらこの子俺らが引き取ってもいいぜ?」
マシューをなでながらギルベルトが言うが、エリザは首を横に振る。

「300年前の記憶がリセットで新しい関係築くなら、あたしだって築けるでしょ。
そうでなくともあんたは当分根無し草な暮らししそうだし、子どもを育てるならちゃんと落ち着いた環境じゃなきゃ。
あたしとロヴィーノも1年はこっちにいて行動共にするつもりだから、それは1年後、俺が国に帰る時になったらマシューの選択に任せるってことで」

「ケセセ。そうだな。じゃ、競争だな」
「のぞむところよっ」
と、笑いながらも軽く火花を散らすライバル2人。

「え…っと…ごめんな。俺はお前の事覚えてないんだけど…これから宜しくな」
ギルベルトの膝の上からジ~と視線を送られている事に気づいて、アーサーもおずおずと手を差し出す。

「はい。でもやっぱりアーサーさんは見かけだけじゃなくて物腰とかマスターと酷似してるので…マスターなんだと思います。
だからまた僕の事好きになってもらえるように僕頑張ります」
マシューも小さな手でアーサーの手を握り返した。

その後、顔合わせを終えた5人はそれぞれの情報を照合する。

「とりあえず…西南北の情報集めが先決か。フランがこっちにいるんだったらあいつも使おうぜ」
こうしていつのまにかエリザにより、巻き込まれる事になるのが決定している事を当然のごとくフランシスは知らない。


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