続聖夜の贈り物_7章7

。大丈夫だからな」
まだひっくひっくしゃくりを上げるマシューの頭をなでながら視線を合わせて微笑みかけると、ギルベルトは視線はマシューに合わせたまま、ロヴィーノに言う。
「こいつどこの子なんだ?事情あるみたいだけど」


さすがに子育ての場数が違う…と、改めて感心しながら、ロヴィーノはホッとしてマシューに関しての事情を話す。

「なるほどなぁ…そのマスターにアルトが似てるって事か」
ロヴィーノの説明が終わるとギルベルトはうなづいた。

「なあ、いまさらなんだけど、そのマスターって東の島から来た魔法使いってことは…カークランド一族なんじゃない?」
お茶を淹れて戻ってきたエリザがそこで口をはさむ。

「あ~、そうなんだろうなぁ」
ギルベルトはマシュー用に入れてきた紅茶に当たり前にミルクと砂糖をたっぷり入れた上で冷ましてやると、
「とりあえずこれ飲んで落ち着けよ」
と、マシューに渡してやる。

「ありがとうございます…」
マシューは少し落ち着いたのかいつものように礼儀正しくペコリとお辞儀をすると、両手でカップを受け取り、コクコクとその中身を飲み干す。
飲んでいる間もチラチラとアーサーを伺っているが、アーサーの方は元々人づきあいが得意ではない事もあって、少し戸惑い気味だ。

「ご馳走様でした」
と、カップをギルベルトに戻してテーブルにおいてもらうと、マシューはつぶらな瞳をギルベルトに向けた。

「あの…あの人はマスターじゃないんですか?」
今にも泣きそうな瞳で言われて、はたで見ているロヴィーノやエリザの方が居た堪れない気分になる。

「どうだろうなぁ…」
意外な事にギルベルトは肯定も否定もしなかった。

「どっちも絶対とは言えねえよな。
さすがの俺様も生まれ変わった記憶も生まれ変わらなかった記憶もないからな。
経験してないことは肯定はできねえが、同時に否定だってできやしねえよ」
そう言って静かにマシューの頭をなでる。

「でもなぁ…おんなじ人とは言えねえけど、アルトも刺繍や紅茶好きなんだぜ?
だからもしかしたら生まれかわりってこともあるかもしれないよな」

「じゃあ、いつか僕の事思い出してくれますか?」
きゅっとギルベルトのシャツを握って身を乗り出すマシューにギルベルトは
「あ~それは無理かもしれないけど…」
と苦笑する。

「それは…違う人だから?」
ぽよぽよした眉を寄せて悲しげに言うマシューに視線を合わせてギルベルトは言った。

「えっとな…これだけ世の中に人がいて、だれも前世の記憶持ってないってことはな、たぶん一度死んだ時点で記憶が消えてしまう可能性が高いんじゃないかと思う」


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