続聖夜の贈り物_7章6

「エリザ~、おまえ何してんだ?
一応まだ戦時中だってのにこんなとこまで来て、将軍家って実は暇なのか?」
いきなりノックもなくドアが開く。
そこには見慣れた男の姿。


「暇なわけじゃないわよ!張り倒すわよっ!
あんたが馬鹿な事してるって聞いてわざわざ海越えて来たってのに…」
「馬鹿な事なんてしてねえぜ?俺様ちゃんと宝玉の欠片まで手にいれたんだぜ?」
「そっちじゃないわよっ!アーサーの事よっ!」
「アーサーの事?」
エリザからその名前が出たとたん、ギルベルトは真っ赤に頬を染めて硬直した。

「黙って赤くなってんじゃないわよ~~!!!!」
いつのまにかエリザの手に握られたフライパンが、ドカ~ンと景気の良い音を立ててギルベルトの後頭部を張り倒した。

「お~、アーサー、元気そうだな?」
そんなエリザをよそに、フライパンの音に驚いて走ってきたアーサーに、ロヴィーノは片手をあげて挨拶をする。
普通に心身ともにどこも調子が悪そうでもなく歩いているところを見ると、とりあえずこっちは大丈夫そうだな、と、内心思ったのは秘密だ。

「ロヴィーノ、もしかしてフェリに会いにきたのか?」
と、笑みを浮かべて言うアーサーにロヴィーノは
「ああ、それもあるけど…お前を含めて全員の様子を見にな」
と、頭をポンポン軽くなでる。

「とりあえず入れよ。
俺らも1年ほどこっち滞在する事になったから、少し話したい事がある」
と、アーサーを部屋の中にうながし、ついでに後頭部をさすりながらも復活しているギルベルトも部屋に招き入れる。
最後にエリザが入ってドアを閉めた。

二人が部屋に入ると、エリザは飲物を用意しに別室に行き、ロヴィーノはちんまりと椅子に座って今の騒動をまん丸の目をさらにまん丸く見開いて凝視していたマシューに声をかけた。

「マシュー、さっき話してたギルベルトとアーサーだ」
ロヴィーノがそういう言葉がまるで耳に入っていないかのように、マシューは目を見開いたまま硬直している。

「マシュー?」
不思議に思ってロヴィーノがかけた声も全く耳に入っていないかのように、マシューはストンと椅子から飛び降りると、タタタっとアーサーに駆け寄った。

「マスター!アルテュール!僕ですっ!マシューです!」
そのまま抱きついてポロポロ泣きだす子供を前にアーサーは茫然としてロヴィーノに視線を送る。

「ちょ、待った。マシュー人違いだと…」
ロヴィーノが割って入ろうとするが、マシューはしっかりしがみついて離れない。

「あれからずっとずっとず~~っと家で待ってたんです!
でもアルが出てっちゃって…僕…僕…」
切々と訴えられてもアーサーは意味もわからずオロオロするばかりで、ロヴィーノもどうしていいのかわからない。

そこで動いたのはギルベルトだった。
「お前、ちょっと落ちつこうな。
いきなり言われてアーサーも混乱してるからな。
俺様達はどこにも行かねえし隣に座らせてやるから、いったん座ろう?な?」
しゃがみこんでマシューに視線を合わせて頭をなでると、アーサーに椅子に座るように目くばせする。

アーサーが椅子に座るために動いて少しマシューのしがみつく手の力が緩んだところで、ギルベルトはソッとその手をアーサーの足から放させてマシューを抱き上げると、自分もアーサーの隣の椅子に座って自分の膝にまたがせるようにマシューを座らせた。


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