「アウトですねっ!」
と、それにはアントーニョではなく、ローデリヒがメガネをクイッと持ち上げながら言い放った。
「ギルベルトの場合は大人なわけだしな、別に相手が野郎だろうとなんだろうと俺的には構わねえんだが…これはさすがにまずいっつ~か…。親戚が性犯罪者はマジ勘弁」
あまりにロヴィーノがガックリ肩を落とすので、アントーニョは慌ててフォローに入る。
「せやけど、ほら、ここ、“でもやっぱり気になっちゃったから、俺ギルベルト兄ちゃんの方にコソッと『無理やりとかじゃないよね?』って聞いたら、『そんなわけないだろ。ちゃんと合意だぜ?まあ…ちょっと強引にだったかもしれねえけど、無理やりとかではない』って。”ってあるから…」
「強引にしたけど無理やりじゃねえってなんだ?」
便箋をひらひらさせるアントーニョにどんよりと答えるロヴィーノ。
「あはは…なんやろうな?」
アントーニョは困ったようにポリポリと頬をかく。
「あ~、ちくしょ~!俺も付いてくべきだったぜ!」
上を向いて叫ぶロヴィーノに苦笑するアントーニョ。
「お前…笑ってっけどな、これ未来の王様だって明日は我が身だぞ?」
「はぁ?」
「うちの馬鹿弟、“強引にしても最後合意なら無理やりじゃなくなるんだ~。良い事聞いちゃった♪”とか書いてやがるぞ!」
と、バン!とアントーニョの前に便箋をつきつけた。
「…い、いや、それあかんやろ、普通に。無理やりは絶対あかんっ。
…って、まあ…フェリちゃんにやったら強引に迫られてもルートも本望かもしれへんけど…」
と、ボソボソつぶやくアントーニョの襟首を今度はローデがつかむ。
そしてアントーニョに向かって
「何を言っているんですか、このお馬鹿さん!」
と、言い放ったあと、
「エリザと一緒に早急に止めにお行きなさい!!」
と、ロヴィーノに命じる。
「へ?」
「あなたの弟なんですから、ロヴィーノ、あなたが止めるのが当然です!」
「そうですよねっ!ローデさん!!」
と、その言葉に何故か目をキラキラさせて同意するエリザ。
「あ~ええなぁ。なんやったら親分が代わったろうか?」
と、宮廷生活に飽き飽きしているアントーニョがさらにそれに口を挟むが、そちらは
「あなたは皇太子代理でしょうっ!自覚をお持ちなさい、このお馬鹿っ!!」
と、ピシっと却下された。
「…エリザちゃん…行かせてもうたら、加速一直線な気ぃするんやけど…
それくらいやったら親分の方が……」
というアントーニョの言葉は、そこで飲み込まれることになった。
キラリと銀色に輝くフライパンを目にしたことによって……
こうしてそれから数日後、ロヴィーノとエリザが秘かに大陸へと旅立つことになったのである。
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