続聖夜の贈り物_5章1

拝啓兄ちゃん、お元気ですか?俺は元気です。
俺いまとっても幸せです♪



「………」

「おはようさん、、ローデ、ロヴィ、どないしたん?怖い顔して…」
西の国の皇太子の執務室。
北の国経由でそこに届けられた手紙を前に、皇太子代理であるアントーニョが朝足を踏み入れると、側近のローデリヒとロヴィーノは眉間のしわを深くしていて、その横でエリザが苦笑している。


ギルベルトが東の国の少年を拾ったと聞いて様子を見に行ったのが一ヶ月ほど前。
色々あってルートとロヴィーノの弟のフェリシアーノがしばらくその場に残る事になったので、エリザだけ先に城へ帰って来た。

しかしさらにそこから色々あったらしい。
ギルベルトと少年、アーサーだけではなく、フェリシアーノとルートまでそのまま帰らぬ人となった。

いやまあ、別に死んだわけじゃないんだが…それでも仮にも皇太子が国を出ていってしまったというのはおおごとだ。

最後まで関わって戻ってきたエリザによると、ギルベルトが拾った少年と言うのは実は、島でも最強の魔術師軍団の宗家カークランドの末っ子で…実家に返す返さないで揉めたあげく、最終的にギルベルトは彼を連れてカークランドの影響の及ばない島の外へ逃げたらしい。
なぜかそれに嬉々として付いて行ったという弟組。

ありえない…。
フェリシアーノだけならとにかくとして、皇太子を連れていくというのは本当にありえない。
王家の側としては、自分が行くにしても皇太子は止めろ!身体を張ってでも止めろ!というのが本音で、止めるどころか嬉々として連れて行ったフェリシアーノの実兄であるロヴィーノからするととても肩身が狭い思いをしていた。

ところが半月以上もたって届いた手紙を見る限り、修学旅行か?駆け落ちか?新婚旅行か?なに?楽しそうじゃねえか、ふざけてんじゃねえっ!」こんちくしょうめ!と思えるような、のろけなんだか楽しい旅日記なんだかわからない内容が長々と綴られている。

もういっそお前本書けば?くらいの勢いで綴られている便箋の束のうち、読んだ分をロヴィーノは黙ってアントーニョに渡した。

「なん?親分にも読め?」
それをひょいっと取り上げたアントーニョは黙ってその分厚い束に目を通して、そしてぷはっと吹き出した。

「笑い事じゃねえっ!いまにあの馬鹿弟にムキムキ皇太子食われるぞ。」
と、ロヴィーノは行儀悪く机に座りながら、全員に入れたカフェラテを口に含む。

「お~ええなぁ。親分、代わって欲しいわ、それ。」
と、こちらもカフェラテ片手にさらに便箋に目を通し中だ。

「…んだよ。お前も野郎のがいいのかよ?」
「ん~、相手にもよるけどなぁ…フェリちゃんなら全然いけるわ」
「まじかよっ。俺は断然ベッラ派だ」
「そりゃあ残念やね」
「ざ、残念てっ?!!!」

バっと立ち上がって避難するロヴィーノ。
思い切り引いた様子で壁にはりつくロヴィーノを見て、アントーニョはクックックと笑って手をひらひら降った。

「冗談やって、冗談!親分、嫌な相手に手ぇ出すほど飢えてへんし」
「て、てめえ!ほんっとにムカつくなっ!」
からかわれた事にぽこぽこ怒りながら机に戻るロヴィーノ。
時には逆にロヴィーノの方がからかう事もあるのだが、こんなやりとりも、もうしょっちゅう行われる日常の一コマだ。


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