とりあえずこれ以上見当違いの遠慮から暴走されないように、少しでも近い存在にならねば…と、ギルベルトは脳内で苦渋の決断の末、アーサーの手を取って立ち上がらせた。
一方アーサーは相変わらず急展開に付いていけないでいる。
「シャワー?どうして?」
きょとんと見上げるその目は、もちろん今自分が置かれている状況などわかってない事を意味しているのは一目瞭然だ。
「昨日ずっとアルトを探しまわってて汗かいたしな」
サラっと核心に触れないギルベルト。
「なんで一緒に?」
「当たり前だろ。言ったろう?半径1mから離さねえって」
「…でも一緒になんて……」
赤くなって俯き加減にごにょごにょ続けるアーサーにギルベルトは良い笑顔で言った。
「俺様に脱がされて抱えて連れてかれんのと、自分で脱いで歩いて行くのとどっちがいいんだよ?」
譲る気のないギルベルトを相手に、実は流されやすいアーサーが勝てるはずもなかった。
「ほい、目ぇつぶれ~」
額のあたりを大きな手で押さえて極力目に湯が当たらないように気をつけながら、ギルベルトはザ~っとシャワーで頭を流す。
小さい頃はルートの頭を洗ってやってたため、このあたりはお手の物だ。
「洗う時はな、上から洗ってくんだ。
先に体洗うと頭洗う時に頭洗った汚れがまたついてまうだろ?」
こだわりなく適当に流そうとしていたアーサーにそう言って、半ば強引に洗い役を引き受けたギルベルトは、手で細かくなるまで泡立てたシャンプーでアーサーの髪を丁寧にあらう。
(ああ…いい手触りだよなぁ)
乾くとピョンピョンと跳ねる髪は今はサラサラふわふわと泡になじんで、手に心地いい。
少し硬めの自分の髪とは随分違う。
最初にアーサーを拾って触れた時にそのポワポワっとした柔らかな感触に感動して以来、この髪に触れるのがお気に入りだ。
いや、髪だけではない。
戦場で武器を振り回してきたギルベルトと比べると、アーサーはどこも柔らかい。
女性のように肉付きがいいわけでは当然ないが、触れると皮膚に固さがないのだ。
体格もまだ大人になりきれてない華奢な感じで、だき締めればすっぽりと腕の中におさまってしまう。
肌の白さはまだ汚れを知らない雪のようで、実際に何も知らない子どもに手を出すのかと思うと、罪悪感がひしひしと脳裏をかけめぐる。。
髪を洗い終わりこちらを向かせると、水滴が髪や白い顔に滴り、きらきらと輝いて見える。
本当に真っ白な肌。
金糸から滴り落ちた水滴が白い華奢な首筋を伝って薄い肩を伝う。
全体的にまるで砂糖菓子のようにも見えて、口にすると甘いのではないだろうか、となどとありえない想像が頭をよぎった。
(ああ、ちょいやばいか…)
いきなり動きを止めたギルベルトをぽか~んと不思議そうに小首を傾げて見ていたアーサー。
それにギルベルトは
「とりあえずここだと体つらくなるから、さっと洗ってベッド行くぞ」
と、ざ~っと石鹸を洗い流して腕を取り、浴室を出る。
色々…倫理観がぐるぐると回る一方で、アーサーを拾ってからすっかり夜の方はご無沙汰なので、枯れるような歳でもないのもあって欲はある。
そんなこんなでもうすっかり余裕がなくなりつつ、ギルベルトは力の抜け切ったアーサーをバスタオルでくるんで抱えあげた。
そして動作だけはソッとバスタオルごとアーサーをベッドにおろす。
「悪い。本当はここで確認とるべきなんだろうけど…もうやめてやれねえ。
そのかわり大事にするから…ずっとめちゃくちゃ大事にするからな」
と、自身は体も拭く余裕もないまま、そう言ってアーサーに覆いかぶさり、深く深く口づけた。
そうして数時間後……
すべてを手に入れたあと、腕の中で眠る愛し子に視線を向けてギルベルトは思う。
やっと手にいれた…。
満たされた感が体中を包み込んだ。
もう二度と放さないで抱え込める相手をようやく手に入れたのだ。
「俺様のもんだ…絶対に誰にも渡さねえ。どんな厄介なやつがきても絶対に…」
こうして静寂が訪れた部屋の中、ギルベルトは眠っているアーサーの体をぎゅぅっと抱き枕のように抱え込んでそう言うと、ようやく二日ぶりに疲れた体を休めたのだった。
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