続聖夜の贈り物_3章12

「それだけの覚悟があれば…大丈夫あるな」
王はクスリと笑みを浮かべて、どこからか掌大の赤い宝石を出した。

「運命を共にする覚悟があるなら、それを身の内に受け入れるよろし」
と、ギルベルトにそれを投げてよこす。


「なんなんだ?」
反射的にそれを受け取ったギルベルトが不思議そうな視線を向けると、王はふと笑みを消し、真剣な顔で告げる。

「炎の石。カトル・ビジュー・サクレの欠片の一つにして活力を司る石あるよ。
それを一度身の内に取り入れれば4つの石がそろうか100年の年月が過ぎるかどちらかの条件の元、自分の意志で取りだすまでは他者は手出しができない。
ようは…死ぬか4つの宝玉が集まるまでは自分でも取り出せなくなるある。
結果…選ばれし者と同様に力を欲する者に追われる身になるね」

「ふ~ん…」
ギルベルトは手の中の石をしげしげと眺め、興味なさげに鼻をならした。
「俺様にはそんなんどうでもいいんだけど。どうせすぐアーサーのとこ行ってやるんだし」

そういうギルベルトに王はもう一つ小さな小瓶を投げてよこす。

「我が乞われて与えた仮死状態になる薬の解毒剤あるよ。
それを与えれば目を覚ますあるが…このままだとまた同じ事が起きるあるね。
でもお前自身がアーサー同様追われる身になれば、アーサーが命を絶つ意味もなくなる。…それでも興味ないあるか?」

にやりと笑みを浮かべる王に、一瞬状況を理解しきれなくてぽか~んとするギルベルト。

「…生き返る…の…か?」
「そう言ってるね」
「本当に?!」
「試してみればわかるね。
ただし生き返らせるなら先に炎の石を身に受け入れた方がいいあるよ。止められる前に」

「わかったっ!どうやるんだ?」
「ただ両手で持って強く念じるだけある」
「わかった!!」

少しの迷いもなくギルベルトは石を両手で持って念じてみる。
すると石は赤い光を放ち、ギルベルトの中に吸収されて行った。

「じゃ、あとはアーサー起こすだけだなっ!」
ギルベルトは勢いこんで瓶の中身を口に含み、アーサーの口に流し込む。
薬がス~ッとアーサーの中に流れ込んでいくと、冷たかった体に少し熱がもどった。
真っ白だった頬もいつもの淡い薄桃色に戻る。

そしてゆっくりと開かれる瞼。
やがて何よりも恋い焦がれた新緑色の大きな瞳がギルベルトをとらえた。

「何やってんだっ!ばかぁ!!」
第一声は罵り声。
それさえもアーサーが生きている証かと思うと嬉しくて頬が自然に緩む。

「あんなもん受け入れやがってっ!もう取り返しつかないんだぞ!どうすんだっ!!」
ぽろぽろと泣きながらいうところをみると、さきほどまでのやりとりは全部聞こえていたらしい。

「え~?べつにいいだろっ。
なんかあれだなっ。二人をつなぐ証っていうか…結婚指輪みたいじゃね?」

へらへらと笑うギルベルトに、アーサーは一瞬言葉をなくして口だけパクパク開け閉めしている。

「これでアーサーと一緒の運命歩けるかと思ったら、めっちゃくちゃ嬉しいぜ」
本気で嬉しそうに言うギルベルトに、うつむくアーサー。

「知らねえぞ…後悔しても」
「一緒にいられる事に後悔なんてするわけねえだろ?
むしろさっきまでの方がよっぽど後悔したぜ。
ていうか…もうお前は俺様の半径1mから出るの禁止な。
戦闘中だけ大負けに負けて武器があたらねえように3mだ」
「なんだよ、それ」
「当たり前だろうがっ。あんな馬鹿な事二度とできねえように決まりだ!」
「馬鹿な事じゃねえっ!」
「馬鹿以外の何者でもねえっ!俺様がこれだけ伝えてんのにいい加減信じろっ!」


「ねえ、王さん。あとの3つもやっぱり同じように取り込めるの?」
言い争うギルベルトとアーサーはとりあえず放置して、フェリシアーノは王に声をかけた。

「あ~、みつかればそうあるな。ただし一人が取り込めるのは一つまであるよ」
「そっか…俺も覚悟決めないとね」
「別に普通に持ち歩いても構わないあるが…というか、取り込めるのは石自身に選ばれた者か選ばれし者が無意識に選んでいる者だけだから、望んだからと言って取り込めるわけでもないあるよ」

「そのあたりは大丈夫♪俺達親友だもん♪」

自信満々に微笑むフェリシアーノに、王は
「選ばれし者が悲観的な分、周りが呆れるほど楽観的あるな」
と苦笑した。


そんな会話を交わしている間に、二人の間もなんのかんの言って落ち着いたらしい。
奥の部屋から歩いてくるアーサーの手はしっかりとギルベルトにつかまれていた。


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