続聖夜の贈り物_3章10

薄暗い廊下を通り、一番奥の付きあたりの部屋。

「耀、連れてきたッす。」
香がノックをすると、
「入るある。香は行っていいあるよ」
と、中から思いのほか若い声がした。


「らじゃ。じゃ、俺は行くんでごゆっくり」
香はそのまま踵を返す。

「お邪魔しま~す…」
開いたドアからフェリシアーノはおそるおそる薄暗い室内に足を踏み入れた。
もちろんあとの二人もそれに続く。

「我は王耀。カトル・ビジュー・サクレの4つの欠片の一つ、炎の石の守人ある」
暗闇の中から姿を現した年齢不詳の青年はそう名乗った。

「カトル・ビジュー・サクレ…の……」
王の意外な言葉にぽか~んと呆けるフェリシアーノ。

「そんなこたぁどうでもいい。アルトを返してくれ」
とギルベルトはフェリシアーノを押しのけるように歩を進めて言う。
ルートはとりあえず状況がわからずそのままあたりの警戒を始めた。

「先に話を聞くね。そのアーサーに関しての事ある。」
そう言って王は3人に椅子をすすめた。

素直に、あるいは渋々、あるいはやはりあたりを警戒しながらと、それぞれの態度で座る3人。

全員が座ると、王はアーサーに説明したのと同じように、4つの欠片の事、選ばれし者の事を説明し、最後に
「まあここまで言えば想像はつくかもしれねえあるが、アーサーがその、今の“選ばれし者”あるよ」
と締めくくった。

「ゆえに今後カトル・ビジュー・サクレが揃うまではあの子はその力を欲する者に追われ続けるし、あの子といれば必然的にそれに巻き込まれる事になるね」
そう続ける王に、ギルベルトは
「そんなんかまわねえっ!
どんな奴がどんだけ来ようと全力で守ったるだけだ!あいつを返してくれ!」
とがたっと椅子から立ち上がった。

王はそんなギルベルトを見上げた後、静かに視線を下にそらした。

「あの子はそう思わなかったね。お前達を巻き込む事を嫌ったある」

「巻き込まれなんて上等だぜっ!
むしろ俺が全部背負ってやる!とにかくあいつに会わせてくれっ!」
さらに言うギルベルトをちらりとまた王は見上げた。

「会いたい…あるか?」
「当たり前だろっ!そのためにここまで来たんだっ!」
「じゃ、会わせてやるね」
スッと王は椅子から立ち上がり、奥へと歩を進める。

そして続き部屋の扉に手をかけ、後ろを振り向いて言った。

「あの子からの伝言あるよ。『ありがとう。俺はもう十分幸せにしてもらったからもう安心して俺を忘れて自由になってくれ。今度はお前が幸せになれる事を祈ってる』ということね」

「…え?」
一瞬固まるギルベルト。

しかし、それに構わず王がガチャリと奥の部屋の扉を開けると、弾かれたように奥の部屋へと走って行った。
フェリシアーノとルートもそれを追うが、ドアの所で王が足を伸ばしてそれを制する。

「お前らはここまであるよ」
静かだが有無を言わせぬその声に、二人は仕方なくその場にとどまった。


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