自分の部屋だ。当然ノックなどせずに遠慮なく開ける。
しかしそんなギルベルトを出迎えたのは
「急に入ってくんな、ばかぁ!!」
という涙まじりの罵声だった。
「急にって言われても、ここ俺様の部屋なんだから仕方なくね?」
何か様子がおかしいなと思いつつも、ギルベルトは眉尻を下げてそう言うと、中に入って鍵をかける。
そのまま小テーブルにもらった果物を置いて、飴でも口にいれてやろうと、寝台で頭からシーツを被ってみの虫のようになっているアーサーの方へと足を向けた。
「来んな!ばかぁ!!」
と再度の罵声と共に、アーサーが投げてきた枕が顔を直撃。
「何すんだよっ」
所詮枕なわけだから全く痛くはないわけだが、さすがに抗議の声を上げると、
「やだっ…来んなよぉ…」
とアーサーがシーツの中でしゃくりをあげた。
クシクシとこぶしで涙をこする様子がおさなげで、その可愛さにきゅん!とする。
「アルトは何すねてんだよ?しゃあねえなぁ…。起きた時いなかったからか?」
無防備な姿をさらけだして眠っているアーサーの横で起きるまで過ごせと言われれば、それはそれで困るわけだが、ルートは割合と厳しく育てたのもあって聞き分けの良い子どもでわかりやすく甘えてくることがあまりなかったこともあって、自分がいないとすねられるとか少し嬉しい。
「こすったら赤くなるぞ。それでなくてもアルト色白いんだし」
と、まだ目元をこすっているアーサーの手を取ってそのまま抱き寄せて拭いてやろうとしたら、
「やだっっ!!」
と、それはもう思い切り拒まれた。
よもやそこでそう来るとは思わず、ぽか~んと固まるギルベルト。
「なんだよ?俺様がいない間に何かあったのか?!」
そこでさすがに様子がおかしい事にきづく。
ひっくひっく泣き続けるアーサーをとりあえずシーツの中から引っ張り出そうとするが、頑なに抵抗されて、非常に嫌な想像が頭をよぎった。
「誰かに…なんかされたのか?!」
ドクンドクンと心臓が爆発しそうなくらい激しく脈打つ。
もし自分の想像通りなら、相手は楽には死なせない…。
沸々と湧き上がる怒りをギルベルトはとりあえず押し込めた。
それはかなりの忍耐を要する作業ではあったが、その怒りは今ここで爆発させるべきものではない…。
「な、大丈夫だから…出てこいよ」
おそらく傷つくなどと言う言葉では言い尽くせないほど傷ついているであろうアーサーをこれ以上傷つけないように、怒りを押しこめて出来る限り優しく声をかける。
「…やだ……」
と、シーツから目だけ出すその様子が可愛くて愛おしくて泣きそうだ。
「…出てきてくれよ。大丈夫。俺様がアルトにとって一番良いようにしてやるから、な?」
さらに声をかけると、大きな瞳からウルっとまた涙があふれ出した。
「…やだ…俺の事嫌いになる…」
「ならねえよ。なるわけないだろ。
アルトが俺様の事嫌いだって言っても逆はねえ」
庇護欲が人一倍強いギルベルトにとってはアーサーがそんな事に怯えているのも愛おしく可愛く思える
アーサーは無言で…その無言を了承と取ったギルベルトはソッとその身を包むシーツをはがしていった。
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