宿に戻って、宿の庭で腕立て伏せをしているルートヴィヒをみかけたギルベルトが声をかけると、その腕立て伏せをするルートの背中に座っているフェリシアーノが
「ちゃお~。良いモノ持ってるね、ギルベルト兄ちゃん。そんなにたくさんどうしたの?」
と、ギルベルトの腕に目をやって手を振る。
「あ~、これな。ランニングしてる途中で話し込んでたおばちゃん達がくれだんだ。
フェリちゃん半分要らね?」
「わ~い♪ありがとう♪」
ギルベルトが差し出す果物とキャンディを受け取ると、フェリシアーノはその中のキャンディを一つ口に放り込んだ。
その間も黙々とフェリシアーノの下で腕立て伏せを続けるルート。
触らぬ神に祟りなしと黙っていたわけだが…あれだけ昨日険悪だった雰囲気はどこに行ったのだろうか…と内心思う。
いや…機嫌が直ったら直ったでいいのだが…。
どうもたまにこのギルベルトの熱しやすく冷めやすい感情の起伏についていけない苦労性なルートだった。
「ルッツもそんな難しい顔ばかりしてたら早くハゲるぜ?」
と、ギルベルトはご丁寧にも飴の包みを一つむくと、ルートの口にも強引に放り込んで去っていく。
「…お前もそういうところがあるのだが…
あれだけ昨日揉めて不機嫌だったのが、今朝いきなりケロっとしているのがわからん…。心底わからん」
ガリっと飴を噛み砕いてつぶやくルート。
「え~?そう?普通だよ?
どんなに嫌な事があってもね、探せば笑顔になれる程度のささやかな幸せってみつかるものなんだよ?」
眩しいほどの天使の笑顔。
普通にキャンディが食べたいわけではなく、コロコロとフェリシアーノのその頬で転がされているそのキャンディが欲しいと思う自分は、やっぱり変人なのだろうか…。
それでもそれはとても美味しそうにみえた。
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