続聖夜の贈り物_2章02

ギルベルトの朝は早い。
自宅にいる時は畑仕事で始まるが、こうして自宅を離れている時はゆっくりしている時もあり、鍛錬のためにいったんは起きることもある。だいたい半々くらいだろうか。


今日は後者だ。

アーサーが隣で無防備に眠っている時点で選択の余地はない。
朝の男は色々大変なのだ。

宿の周りをランニングしながら、朝市を冷やかしつつ話を聞いたり、普通にそのあたりを行きかう人々の噂話に耳を傾けて情報を集める。

ギルベルトにしてみたら単に一緒にいるのを反対するであろうカークランド当主から逃れてアーサーと一緒に生きていくために大陸まで逃げてきただけなのだが、フェリシアーノには別の目的がある。

元々は大陸行きはそのフェリシアーノの目的にアーサーが乗るという形の約束だったらしいし、アーサーの救出の際にはフェリシアーノにも世話になったので、ギルベルトとしてもそのあたりは無視もできない。

というか…可愛い恋人アーサーの親友であり、可愛い弟ルートの想い人である時点で、世間知らずの王宮暮らししかしたことのないフェリシアーノと同じく腕はたっても何もない田舎で育った世間知らずのルートヴィヒを二人で放り出すという選択はありえないわけなのだが…

こうしてギルベルトは趣味と実益を兼ねて聞きこみにいそしんでいる。
“可愛い恋人と引き離されそうになって東の島から駆け落ちしてきた”と言うギルベルトの言葉を信じた人情に厚い市場のおばちゃん達は、随分打ち解けて色々話してくれた。

とりあえず…カトル・ヴィジュー・サクレについてはこちらでも伝説とかおとぎ話とかそういう感じに扱われているらしい。

ただ伝承というものが往々にしてそうであるように、それが語られる元になった出来事と言うのは存在する。


自分といるために実家を遠く離れる事を余儀なくされた、まだ年若い恋人のなぐさめにおとぎ話を語ってやりたいのだというと、おばちゃん達は喜んで、こぞって色々な話を教えてくれた。

そして役に立つ情報もたわいもないおとぎ話もニコニコと聞き、最後に礼を言って市場を離れる頃には、手ぶらだったはずのギルベルトの手にはたくさんの果物が、服のポケットには何故か飴が大量に入っている。

「おばちゃんて、どこのおばちゃんでも飴ちゃんくれんのはなんでなんだろうな?」
と首をかしげつつ、さすがにそれを抱えてこれ以上ランニングするのもなんだしと、アーサーがそろそろ起きる時間だろうということもあって、ギルベルトはいったん宿に戻る事にした。


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