続聖夜の贈り物_1章01

「お待たせ~♪」
待ち合わせ場所の街外れの広場で、フェリシアーノは一足先に待っていたアーサーに抱きついた。


「装備…揃えたか?」
アーサーを実家から救出したその足で大陸に渡ったため、その時に武装していたギルベルトとルートはとにかくとして、ほぼ丸腰だったフェリシアーノはそのままではまずかろうと、大陸の街についてすぐ、ルートと装備を買いに行ったのだ。

しかしアーサーの問いに
「うん♪」
と元気よく答えた割には、フェリシアーノは特に武器も防具も装備している様子はない。

「フェリ…俺には何も装備してないように見えるんだけど、気のせいか?」
と、アーサーが首をかしげると、フェリシアーノは
「重いからさ、ルートが持ってるよ」
と、後ろから従者よろしくフェリシアーノの荷物をかかえてついてくるルートを指さす。

そのムキムキの両手には軽そうなランスと腕につけて使うタイプの白い盾、バックラー。
訂正…ムキムキの腕に抱えられていると軽そう…なのかもしれない。


事実
「あれってルッツが持ってても意味ないだろ。
武器防具はちゃんと装備してねえと意味ないんだぜ?」

と、RPGで最初の街に出てくる説明役のNPCのごとくギルベルトが極々当たり前の指摘をするのを、フェリシアーノは

「だって…重いんだもん」
と、一言で片づける。

「装備買った意味ねぇ…」
と、普段はボケ役であるはずのアーサーですらつっこまずにはいられない。



「俺が付いて行ってやった方が良かったか…。
装備できねえ武器防具買ってもしゃあないし…」

ギルベルトのもっともな意見に、ルートは

「これでも店で一番軽量な物をと選んでもらったんだが…」
と困ったように眉を寄せた。


「いや、そもそもこれランスって前衛装備じゃねえか。
なんで後衛装備にしねえんだよ?
それだったらもうちょぃ軽いもんあったんじゃね?」

さすがに現場生活が長いギルベルトは普段はこだわらないようでいても、そのあたりの突っ込みは適切だ。

それはルートにもわかっているらしく
「そうなんだが……な」
と、珍しく歯切れの悪い言い方をする。

そこで……
「だって俺だって誰か守ってみたいんだもん♪」
言いあぐねていたルートに変わって、フェリシアーノが笑顔で宣言した。

「あちゃあ……」
天真爛漫に要望を通そうとするフェリシアーノに、それでなくても彼に弱い生真面目なルートがかなうわけはない。
武器屋で行われたであろう、ほぼ一方的な攻防が想像できすぎて、ギルベルトは額に手を当てて天を仰いだ。

ルートがダメだとすると…これはもう自分が説得するしかないんだろうなと、ギルベルトは腹を決める。

「あのな、フェリちゃん」
「ん?」
「武器防具なにも装備できない状態だと、他人どころか自分の身も守れないんじゃね?」
「大丈夫っ!戦闘の時になったら頑張って装備するよっ♪」

「いやいやいやいや…城の午前試合と違うからな?
戦闘っていきなり始まるんだぜ?
始まってから装備じゃ間に合わねえから。
ルッツだって即戦闘態勢に入らないとだから、フェリちゃんに装備渡してる余裕ないぜ?」

最悪…フェリシアーノが戦力外になるのは目をつぶるとしよう。
しかし、このメンバーで自分以外では唯一戦力になりそうなルートまで道連れにされるのはさすがに厳しい。

「…じゃ…盾だけは自分で持つよ。
ランスは戦闘になったら放り出しておいてもらえれば…」
少しトーンの落ちるフェリシアーノに、あともうひと押し、と、ギルベルトは続ける。

「盾だけで何するんだ?
敵が来てる時に地面に落ちたモン拾うのは危ないぜ?隙できすぎだ。
上級者だったら盾だけとかランスだけとかで攻防まかなえたりする事あるけど、フェリちゃんにはそんな真似できねえし、片方だけや意味ないぜ?」

「…だって……」
「…だってじゃねえよ。何度も言うけど、試合やないんだ。
実戦で負けるっていうのは即命落とすってことだからな。
悪い事言わないから後衛装備にかえてこようぜ?」

たたみかけるギルベルトにフェリシアーノは無言になるが、それでもあくまで“うん”とは言わない。
流されやすそうに見えて、意外に頑固だ。


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