聖夜の贈り物 -幕間-俺だけのだもん1

「坊ちゃん、おいし?」
大陸へ向かう船の中。出航した翌朝の事である。


何故かいる髭男。
確か…北の国の貴族だったか…。

それがさらに不思議な事にギルベルト達の食事は調理人に作らせているのに、アーサーの食事だけ自分で用意していた。

「ん。不味くはない」
と、言いつつ料理を頬張っているアーサーの顔はほわわっと幸せそうだ。
それがあまり面白くないギルベルトがいる。

「なあ、なんでお前がいるんだ?」
本当は何故アーサーの食事だけそいつが作っているのかを小一時間問い詰めたい気分なわけだが、それはさすがに余裕がなさすぎな気がする。

「え~?これお兄さんの船だもん。お兄さんいても良くない?」
フェリシアーノやルートヴィヒが引くくらいわかりやすく機嫌の悪いギルベルトに気付かないわけはない。
なのにヘラっと笑って男、フランシスは答えた。

「お前貴族だろ?
それだったら、こんなとこいる場合じゃなくね?
そもそもなんで食事なんて作ってんだよ?」
もう帰れ!今すぐ帰れ!泳いで帰れ!という念を込めて言うが、フランシスはこれもスルー。

「えっとね、暇だったから?一緒に行っちゃおうかな~なんて。
食事に関してはお兄さん趣味なのよ」
「じゃ、なんでわざわざアルトの分だけ作るんだよ?」
「え?ギルちゃんもお兄さんの料理食べたかった?」
「呼び方が馴れ馴れしい!」
イライライライラ…

「ギル…ほら、食えよ」
そこでアーサーが自分が食べていたポトフのスプーンをギルベルトの口に運んだ。

別に料理が食べたかったわけではないのだが……

「美味いか?」
と心配そうに聞いてくるアーサーに思わず顔がほころんだ。

「もっと食わせてくれ」
あ~んと口を開けると、またひと匙。

「ギルちゃん?食べたいならいれてくるよ?」
たぶんイライラしている理由はわかっているだろうに、わざわざ聞いてくるフランシスにさらにイラっとくる。

「いらねえよっ!」
と吐き捨てるように言うギルベルトに匙を運びかけてビクっと硬直するアーサー。

「やっぱり…何か俺したのか?」
と泣きそうになるのがめちゃ可愛いと、ギルベルトは思う。

守るべき相手を自分が不安にさせるなど、騎士として失格だ。
と、アーサーを抱きしめた。

「アルトはなんにも悪い事してねえよ。
悪いなんてクソ髭が言ったら、俺様がどついてやるからな」
と不穏当な発言つきで…。

「ちょ、なんでお兄さん?!
西の国の人間は愛が足りないよっ!もっとお兄さんを愛してよっ!」
と、わざとらしく泣き真似をするフランシスに、
「ヒゲ男が泣き真似したって気持ち悪い」
と、とどめをさす。

そこで
「ダメだよ、ギルベルト兄ちゃん」
と口を開いたのはフェリシアーノだった。

「フェリちゃん」
と、そこでフランシスが期待の目を向けるも、天使の笑みと共に続く言葉は…
「一応船の持ち主なんだし、陸地に着くまでは我慢しなきゃ。
今はまだ抹殺しちゃだめだよ?アーサーに変なちょっかいかけたら、俺も考えるけどさっ」
「いやぁぁ~~」
ギルベルトより黒い天使の発言に、フランシスは頭を抱えた。



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